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恐怖はAIから始まる  作者: ことぶき神楽
第二章 断片の収集

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第24話 静寂

「怪我はありませんか」

 後部席に座る常磐道が、運転していた陽人に声を掛けた。

「大丈夫ですが……これは、罠でしょうか」

 シートベルトを外しながら、陽人は後ろを振り返り尋ねる。

「偶然にしては、タイミングが良過ぎますね。悪霊が仕組んだ罠なのでしょう」

 常磐道は、落ち着いていた。


 深夜に車のボンネットが鋼鉄の扉で押しつぶされ、凄まじい音を発した直後にしては、静けさだけが漂っている。

 三人は、車内で耳を澄ますが、救急車両はおろか、野次馬さえも集まる気配はなかった。

 常磐道は、量子通信機に救援メッセージを打ち込んでいる。


「どうしましょう?」

 有江が口を開いた。

「外に出るのは危険です。今のところ、ヤードの機械が動いている様子はありませんから、車内にいた方が安全です。助けが来るのを待ちましょう」

 常磐道は、量子通信機の送信ボタンを押し、後部座席に深く腰掛け直した。


「調世会のシステムに侵入されたのでしょうか」

 ここまで悪霊に誘導されたのであれば、シールドで守られているナビを本部から操作したとしか考えられない。侵入されていれば、退治するどころか、悪霊の拠点にされかねない。

「ファイアーウォールが突破されたとは考え難いですね。悪霊であろうと、AIであろうと、システムに侵入されれば検知できるよう設計されています」

 常磐道は、ベール越しに眉間に指を当てる。

「おそらくは、GPSを操作されたのでしょう」

 位置情報自体を改ざんするとは盲点でしたと感心している。


 夜が長い。


「なぜ、ぼくたちを潰さなかったのですか」

 陽人が尋ねる。

「私たちに死なれては、悪霊は困るのですよ」

 常磐道は、目を瞑ったまま答える。

「わたしたちは、邪魔者ではないのですか。いない方が悪霊には都合がよいように思います」

 有江は、疑問を口にした。

「そう、私たちは邪魔者です。しかし、私たちが死んだら、冥界で悪霊と対峙することになります。こちらは三人、同じ土俵で戦いたくはないのでしょう」

 悪霊の気持ちを汲むように常磐道は説明した。


「なぜ、悪霊は未だ現世に留まっているか、わかりますか」

 続けて、まるで悪霊自身であるかのように常磐道は質問する。

「現世を支配しようとしている?」

 陽人が答える。

「悪霊といえども、野々村さんが亡くなった姿です。お会いした現在の野々村さんが、そんな大それた野望を持っているとは思えません」

 陽人の答えは、外れたようだ。

「冥界にいられない理由があるのでは。追放されたとか……」

 有江の番だ。

「それも考え難いですね。姉乃さんを攫い、連れ去った先は冥界でしょうから、行き来できないことには話になりません」

 有江も外れた。


「悪霊は、歴史を変えてしまったことに気付いたのだと思います。歴史が変われば、現在の野々村さんは事故で亡くなったりしません。それでは困るのです」

「自分が亡くならないことに、困るのですか」

 陽人は異議を唱えるが、有江は気が付く。

「現在の野々村さんが亡くならずに、過去の姉乃さんを攫うことをしなければ、過去の姉乃さんは、何かしらの理由で亡くなってしまうのですね」

「そうです。悪霊にとって、野々村さんは二日後に亡くなる運命であらねばならないのです」


「野々村さんは、未来の亡くなった自分に狙われている……」

 有江は、すっきりしない何かを感じている。


 ようやく東の空が明るんできた。

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