表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恐怖はAIから始まる  作者: ことぶき神楽
第一章 禍の連鎖
1/27

第1話 AI

 野々村孝夫ののむらたかおが率いる総勢五名のソフト開発会社「ソフト・クリムゾン」は、起業して五年目になる。二年前にスマホ向けのゲームアプリがスマッシュヒットしたおかげで、業績は安泰だと言えるだろう。成長株のゲームデベロッパーとして期待され、大手パブリッシャーとの提携話も進んでいる。


 調子に乗って、AI開発を提案したのは、野々村だった。

 現在のAIは、どれを取っても、代わり映えしない。

 それらとは一線を画す、ゲーム世界上のAIを創りたかった。

 ゲーム世界の構築からレベル調整、イベント管理をAIに担わせる。プレーヤーは、ゲーム世界を統括するAIと対話しながら、世界を理解し、クエストを進めていく。

 この提案は、突飛な夢物語に思われた。AIを一から開発するのには「ソフト・クリムゾン」の資金や人員では、明らかに足りなかった。


 しかし、ここには抜群のプログラミングセンスを持つ松梶まつかじがいた。

 そう、プログラミングは、センスだ。

 松梶は、野々村のアイディアを聞くと、要件定義と設計をいとも簡単に済ませ、アルゴリズムを書き出していった。

 企画段階のゲームアプリの開発を後回しにして、松梶を中心に中輪なかわ安藤あんどうの三名がプログラミングに当たった。

 開発に着手してから一年半が経過している。すでに、AIは、テストを繰り返しながら、小説やゲームデータを学習し始めている。


 野々村は、思い描いていた。

 最終的には、VRゴーグルの装着なく、脳への直接のアクセスを試みる。

 今まで体験したことのないAIが創造するゲーム世界。

 仮想世界とは思えない現実と見分けのつかない臨場感。

 プレーヤを主人公とした壮大にして最適化された物語。

 開発に成功すれば、ゲームの歴史に加わることは間違いなかった。


 大手企業に先回りされないスケジュールとなった先月、「ソフト・クリムゾン」は、AIとそれが構築するオープンワールドゲームの制作を発表した。

 ゲームの革新的技術であると、多くの企業や個人が期待と共に応援を表明し、手応えは十分だった。

 しかし、反対意見も少なからず、聞こえてきた。

 それは、AIは仮想世界を統括するだけに留まらず、必ずしや現実世界の支配を試みるだろうという主張に占められる。

 反対意見は、予言と言う形で急速に広まった。


 リリース直後にSNS上に、今井と名乗る人物が「#今井予言」として反対意見を発信したのだ。

「現実世界の支配:AIは自身が世界に与える影響の大きさを認知し、支配しようとする。#今井予言」

「認知能力の低下:AIが創り出す仮想世界と現実社会の区別がつかなくなる。#今井予言」

「プライバシーの侵害:AIは大量の個人データを収集・分析し、個人のプライバシーを侵害する。#今井予言」

「偏見の増幅:AIは偏ったデータを学習し、社会的な偏見や差別を助長する。#今井予言」

 瞬く間に信奉者が現れた。

 今井の投稿は、ただ世論を煽るような感情的な話ではなく、AIによる未来を的確に、そして、ネガティブに予測していた。それは、AI全般に向けられたものだったが、人々は、野々村たちが開発するAIを敵視するようになっていた。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ