前世が封印した妖狐が俺の嫁になると言い出した【中編】
前世が封印した妖狐・天月の封印を解いた誠司。それから少しの時間が経過し、現代の生活に慣れてきた天月と天月のいる生活に慣れてきた誠司や久遠家の人々。
誠司と天月の心の距離が近づく中、少しずつ久遠家の内情が明らかになりはじめる──。
強い力というのは必ずしも良い事ばかりではない。人知れず苦労することも多々あるだろう。その力を頼られ、気が休めることもないのかもしれないり
故に、自身を守るために仮面を被ることも大切なのである──。
(あら、木枯らしが吹いているわね)
誠司が天月の封印を解いてから少しばかりの月日が経ったある日のこと。久遠家の外で掃き掃除をしていた天月は肌に当たる風で冬が近付いているのを感じた。
天月も現代の生活に適応し慣れつつある今日この頃、清十郎の面影を残す誠司や清次郎によく似た誠也とその祖父母や両親に助けられながらも自分が封じられた時代から随分と経過している色々と発展したこの世界で見るもの聞くもの全てが初めてであった。
しかし、季節の変わり目を知らせる風は変わっていないことを天月は実感する。
(そういえば、琴乃様が大きな土鍋を蔵から出していたような……)
琴乃が微笑みながら天月に「寒い時にはみんなで鍋を囲んで食べるのが一番美味しいのよ〜」と言っていたことを思い出す。鍋の中の具材を聞いただけで天月はごくりと生唾を飲み込んだほどである。そしてまた思い出しながら締まりのない顔をしている彼女はかつて天狐だったとは思えぬ程に厳格さが欠如しているではないか。
「はっ! いけないいけない、私ったら、だらしのない顔をしていたわ。でも……。現代は美味しい食べ物がうんと増えていて毎日お腹が幸せなのよね……」
「あはは、お腹が幸せだなんて天月様は面白いことを言うね?」
突然の声の主にビクゥッと飛び上がる天月。振り返るとそこには誠也が帰宅したようで片手を振って立っていたのだ。
「お、おかえりなさい、誠也様。随分とお早いご帰宅ですね?」
「今日は課題を出してきただけだからね。講義もひとつだけだったからさっさと帰ってきたんだ。それに、今日は来客もあるし」
「来客ですか? 一体どのような方が……?」
天月は掃き掃除をする手を止め耳をパタパタさせながら誠也に問う。すると誠也は横開きのドアを開いて天月の方へ顔を向けながら口角を上げてこう言った。
「俺の許嫁」
「いッッ、いいなず、け……?!」
「お初にお目にかかります。私、誠也様の許嫁の神山葉月と申します。お会いできて光栄ですわ、天月様」
誠也の言っていた通りに久遠家に一人の女性が訪れてきた。艶やかな黒い髪は背中ほどまであり、天月を見つめる瞳はタレ目がち、楚々とした振る舞いはとても美しい。天月はどことなく清次郎の妻であった女性を脳裏で思い出しながら「雰囲気が似ているわ」と心の中で呟くだけに留めた。
「初めまして、私は天月と申します。此度、誠司様のお力で封印から解かれました。まだこの時代のことには疎いので何かありましたら教えていただけると……」
「わ、私でよろしければお力になれるよう努力します!」
「もしかしたら天月様が義妹になるかもしれないから優しくしてねぇ、葉月」
義妹、と聞いた葉月は誠也と天月を交互に見たあと口許を手で覆いながら「まあまあまあ!」と頬を紅潮させながらなにやら嬉しそうにしている。
「つまりそれは、天月様が誠司さんのお嫁さんになるということなの?」
「ん〜まあ、誠司くん次第じゃない?」
「誠也、あなたなんでそう、のらりくらりしているのよ。誠司さんはなんて言っているのか聞いてない? あなた、自他ともに認めるブラコンでしょう?!」
「ちょ、天月様には隠してたのに!」
天月は目の前で繰り広げられている許嫁同士のやり取りにはて、と首を傾げていた。「ブラコンとはなんぞや」という表情をしていたのだろう、それに気がついた葉月は天月に説明をする。
「ブラザーコンプレックスともいうのですが男兄弟に対して強い愛着やら執着をしていることを指す言葉で誠也は昔から誠司さんに対してとにかくもう、こう……ッ、愛でるを越えているんです!」
「そんな姿、見たことがないのですが……」
「本人が言っていたように天月様には隠していたようですね。私は幼馴染なので早々に本性を露わにして──」
「ブラコンは本性じゃないですぅ、俺の個性でーす」
天月は初めて会った時からの誠也と今、目の前にいる誠也とで態度が違うことに気が付く。どうやら誠也は葉月といる時はいつもよりもずっと子供っぽいように感じた。そして天月はその態度の変化については、なんとなく察しはつく。
(誠也様はこの久遠家を継ぐ方。相応のものを背負われるのだから仮面を被っていてもおかしくはない……。清十郎様だってそうだ、と、清次郎様が仰っていたわ。私といる時だけは、素の自分を出せるのだと──あっ)
そうして天月は理解する。誠也にとって葉月は自分の素を出していい存在なのだと。それほどまでに、彼女のことを大切に想い心の支えにしているのだということだ。
「……葉月様は誠也様の心拠り所なんですね」
「え? やだもう、天月様ったら。そんなこと……」
「あるんだけどなぁ、俺は」
「せ、誠也まで急に……。そ、そんなことよりも天月様と誠司さんはどうなんですか、実際!」
照れなのか葉月は話題を無理やり誠司と天月の間柄に切り替える。天月は話を振られてビクッとしたがその表情はなんとも言えないものとなっていた。
「どう、と言いますか……。誠司様は特別なにか私に対して思っていることはなさそうで」
「そうなんですか? こんなに綺麗な人とひとつ屋根の下で暮らしているのに?」
「まあ、誠司くんと天月様の関係って割とややこしいからね。それに誠司くんは恋愛ごとには鈍感だから難しいと思うよ」
ああ、例の……。と、葉月が呟く。
天月はなんの事かと2人を見つめていると誠也の表情が少しばかり影った。
「誠司くんにまとわりついてくるや……子がいてさ。向こうの一目惚れっぽいんだけど誠司くんは全く気が付かないんだよね」
(誠也、口が悪くなりそうなのを堪えたわね……)
「ど、どんな人なんですか!?」
天月が身を乗り出して問い詰めてくる様子に誠司も葉月も目を丸くした。先程までの彼女からは全く想像がつかない態度に誠也は意外だなと心の中で呟くとその人物のことを口にするのも嫌なのか、忌々しそうに口を開く。
「この辺じゃいい所のお嬢様だよ。天月様も知ってるはずだ。うちと一緒であの時代から姓が変わってない一族──『最上』の娘」
「──ッ!」
ドクン、と天月の心臓が嫌な音を立てる。同時にざわっと毛が逆立ち冷や汗を浮かべ、その表情は段々と悪くなっていく。
そんな様子の天月に葉月が慌てて傍に行くとそっと手を握った。
「天月様、顔色が……っ」
「ご、ごめんなさい。最上ときいたら、急に……」
「無理もないさ。あの一族はうちにとっても、あなたにとっても害でしかないからね」
頬杖をつく誠也は溜息をつくと飄々とした態度が消え失せる。葉月はそんな誠也を見て「私、聞かない方がいい?」と問い掛けると誠也は首を左右に振って見せた。
「葉月にもいずれわかる話だからそのまま居て」
「う、うん……」
「最上はうちと一緒で平安の時代から続いている武家の一族なんだけど、清十郎が生きていた時にそこの娘が清十郎に求婚してたんだ。でも、久遠家は家柄から霊力が高い者を迎え入れてたんで最上の娘は論外だったんだよね」
呪術師の家系である久遠家はその力を引き継ぐため、霊力の強い娘を妻として迎え入れていたことから霊力のない娘を受け入れることは出来なかったのだ。
どんなに良い家の娘だとしても久遠家の求めるものと一致しなければ無理な話、だがこの最上家はとても執念深く娘の嫁入りを推してきたという。
「最上は……、自分たちの立場を利用してまで清十郎様との婚姻を求めていたと聞いてますが……」
「でもうちは最上の血なんて流れてないよ。天月様が心配しているようなことはなかった。結果、いい方へとはいかなかったけど」
誠也はそう言いながら視線が落ちていく。天月も葉月もその様子にどうしたのだろうか、と誠也を見つめている。
「それで結局、最上家は引き下がったの?」
「……いや、そんなことなかったよ。だから、清十郎を追い詰めて、それで……」
視線が天月に向けられ、悟ってしまう。
(ああ、清十郎様は……。それで家族を人質に取られて、私を封じるしかなかったのね)
天月はそのことを告げた時の清十郎の表情を今でも鮮明に思い出せる。それほど印象に残っていたのだ。
どれほど悩んだことか、今となっては解らないが清十郎にとっては悔しくて堪らなかっただろう。
「まあ、そんなことがあったし、今の最上があの時と同じとは言えないけど、俺はあの最上の娘を誠司に近付けさせたくないんだよな」
「経緯はなんとなくわかったけど、なんで誠也がそこまでして誠司さんの周りのことを気にするわけ?」
葉月は最もな疑問を誠也にぶつけた。すると誠也は誠司と同じ蒼い瞳をキッとさせて葉月に噛み付くように口を開く。
「当然だろ! 俺は誠司に今度こそ幸せになって……!」
「今度こそ……?」
「ッ、な、なんでもない。……ごめん、ちょっと席外す」
そう言って誠也は立ち上がって出て行く。その背中を天月と葉月は見送り少し間を空けてから葉月が小さく溜息をつきながら「またかぁ」と呟いた。
「誠也って、誠司さんのことになると急に感情的になる時があるんだよね」
「そうなのですか?」
「うん。普段は飄々としてるんだけど、急に真面目になって黙り込んだり、ああして感情的なったりして……。ただ、そういう時ってまるで誠也じゃない人に見えるっていうか……」
誠也であるはずが誠也ではない別の誰かに見えると言う葉月に天月は初めて会った時の誠也を思い出す。清十郎の実弟であった清次郎とよく似ている、生まれ変わりだと思えば納得したが誠司にはない違和感が誠也にあったことだけは確かであった。
(誠也様、もしかして清次郎様としての記憶があるのかしら……?)
いやいやまさか、と天月は首を振った。けれど一度疑問に感じればそれを無視することは出来なくなる。しかし、誠也の発した言葉に否定をすることも出来ないのは事実だと天月は思った。
するとそこへ今の戸が開いて一誠が姿を現したのだ。
「おや、葉月ちゃん。来ていたのか」
「あ、おじい様。お邪魔しています」
「ああ、ゆっくりしていくといい。誠也はどうしたんだ?」
「それが……」
葉月は先程の話を一誠にすると一誠もまた、やれやれと溜息をこぼす。
「誠也は小さい時に一度だけ『昔の記憶があるんだ』と言っていたことがあってな。ちょうど、誠司が生まれた時くらいだったか」
「誠司様が生まれた頃に、ですか?」
「ああ、性別がわからないくらいに『絶対弟だよ』と言っていたこともあったんだ。実際それで誠司が生まれたわけだし、霊力の強い子にはよくある話みたいだが昔の記憶……つまり前世の記憶というのは信じ難いのでな」
それは誰だってそうだろう。しかし誠也はそれきり前世の記憶については口にしなかったという。子供ながらに信じてもらえる話ではない、と判断したのだろうがそれが今のようになるものかと天月は思った。
「誠也は久遠家を継ぐ者だが誠司もまた久遠家の者であることは代わりない。が、誠也は私や母親に対して誠司には絶対呪術師としての戦い方は教えるなと言ってきてんだ」
「……つまりそれは、誠也様が誠司様を戦わせたくない、と」
「そういうことだろうな。だが、我々が思っている以上に誠司の力は強いのもまた事実。こちらが教えなくとも、誠司自身が気付かぬうちにその力を発揮するのも遠い話ではあるまい」
一誠がそう言うと天月はもしこのまま自身が完全に妖狐となってしまったら、と考える。昔も今も、天月は人間が大好きだ。どれだけ酷い目にあおうとも人間たちを恨まずにいれたのは清十郎兄弟たちのおかげともいえる。
「一誠様」
「ん?」
「私、例えこの身が穢れきって元に戻れなくなり、妖狐に堕ちたとしても人間を襲いたくはありません」
「……天月様」
「ですから、その時は」
天月は金色の瞳を真っ直ぐ一誠へと向けた。今日まで一度も見せたことがない、彼女の真剣な眼差し。
「他の誰でもない、誠司様のお力で妖狐となった私を祓ってほしいのです。それが、私の希望なのです」
強い願いであり強り決意と覚悟を宿した瞳。それを全身で受けた一誠は目を丸くさせ、一瞬だけ息を忘れた。少し間を置いて口を開きかけた時だ。
「そんなことにならように俺がするって言っただろ」
学校から帰宅したであろう誠司が立っていた。天月は誠司を視界に入れるとでも、と言うが誠司が近付いて来て片膝を折りながら視線を天月と合わせると天月の片手を取った。
「あんたを元の天狐にするって約束した。今は完全に祓うことが出来ないけど、少なくとも俺はずっと天月が封じられていた碧玉の穢れを浄化してきたんだ。俺だって、他の誰でもない、俺自身があんたを元に戻したいんだよ」
「誠司様……」
「約束……じゃ、なんか信じてもらえなさそうだから敢えてこう言わせてもらう」
手を握られて天月は思わずビクリとした。視線は握られた手から誠司へと移動する。
「──誓う」
「ッ!!」
「俺は天月を必ず元の天狐にする。絶対に妖狐になんて堕ちさせたりなんかしない。それまで俺の傍らを離れるな」
誠司の蒼い瞳が天月の金の瞳を貫くように向けて告げられた言葉。『穢れを浄化し、元の天狐に戻す』という誠司の言葉を疑ったことは一度もなかった天月は『約束』ではなく『誓う』と言われたことでどうしようもない感情に襲われていた。
「ち、誓うって……。誠司様、それが何を意味しているのかご理解していているのですか?」
「解ってるよ。俺をなんだと思ってるんだ」
「普通の誓いではないんですよ? 私に誓うと言ったということはそれはもう『言霊』で決して破ることは出来ないもので……っ」
天月は自身に誓ってしまったら生涯取り消すことの出来ないものだと慌てて言うも誠司は知っている、解ってると返すだけだ。人ならざる者である自分に対して呪術師の血族である誠司が誓うということは生を縛るも同然であることを本当に理解しているのは天月は心配なのだ。
「あんたがこの家に来た時も言っただろ。俺がそうしたいって、だから……天月が信じてくれないと困るんだけど」
「……わ、たくしは、疑ったことは一度も、ないです」
「なら、今言ったことも信じてほしい」
「よろしいのですか、私、誠司様になんと言われようとお傍を離れませんよ? 例え貴方が他の方と家庭を持とうともその誓いを果たして頂くまで地の果てまでもついていきますがそれでも?」
天月がそう言うと誠司は小さく笑った。
「俺は別に構わない」
その言葉が嘘でないことは天月が一番理解できた。嬉しくて堪らなくなって忙しなくしっぽが床の上で左右に動いてしまう。それを天月の隣で聞いていた葉月が気付いて口許を覆いながら2人を覗き込んだ。
「誠司さん、それは最早プロポーズに近いのではありません?」
「……え」
「だってそれまで俺の傍らを離れるな、だなんて普通言いませんし。これはもう『久遠家の男たるもの』責任を取るべきでは?」
ニヤリ、と笑う葉月に天月は途端に赤面してしまった。誠司は最初こそきょとんとしていたが段々と意味を理解及び自身の発言を思い出していたのかこちらもまた徐々に赤みを増している。
「お、俺はそんなつもりで言ったわけじゃ……っ。義姉さん、人が悪くないか!」
「私は思ったことを言っただけですよ〜。ねぇ、おじい様?」
「ううむ、誠司は少し自分の発言がどれ程影響するのか理解が必要だな。それも相手は天狐となると久遠家の者として色々と……」
「その辺のことは今知らんでいい、て教えてくれなかったくせに今更かよ!?」
ここで誠也からの『教えるな』が響いてくるとは、と心中で呟く一誠。すると、席を外していた誠也がやっと戻ってきた。
「誠司くんおかえり〜……て、どうしたのこの雰囲気」
「誠也、あのねっ、誠司さんがねっ」
「は、葉月様、落ち着いてください……!」
興奮気味な葉月を抑えようとした天月だがもう遅い。葉月は誠也がいない間のことを誠也に話すと誠也はぽかんとした後ですぐに笑いだした。
「あっはははは! 誠司くん、無意識になにやってんの?」
「笑うな!」
「いやいや、笑わずにはいられないって。あ〜でも、そうかあ。ふぅん、誓ったかぁ〜……」
後半の言葉でガラリと誠也の雰囲気が変わる。それにはさすがの誠司もぞくりとしてしまった。勿論、天月もだ。
「誠司、あとで俺の部屋に来な」
「……うん」
「葉月、遅くなるとご両親が心配するから家まで送るよ。支度できたらおいで」
「はーい。天月様、またお話しましょうね」
誠也はそう言うと玄関へと向かう。葉月もお邪魔しました、と言って誠也の後を追って帰って行った。
「……誠也様、時々怖いですよね」
「結構大真面目な話の時はああなる。そういう時、兄貴はいつもよりもずっと怖い」
誠司は誠也の読めない男、という雰囲気にはさすがに慣れているが時折見せる大真面目な兄の姿は慣れないようで少しだけ冷や汗を浮かべている。一誠は苦笑しているが。
「まあ、あれは資質だからな。普段は飄々としているが締める時は締める、誠也なりの切り替えなんだろう」
「そういうもの?」
「ああ、お前は呪術師としての力の使い方は知らないだろう。清蘭だって、ああ見えて切り替えが激しいぞ」
誠也と誠司の母の清蘭は祖母の琴乃と似て穏やかそうに見えるのに、と天月は思った。しかし清蘭はれっきとした久遠家の娘だ。つまり、霊力もあり呪術師としての力もきちんと持っている。
「はあ……、とにかく、そろそろお前にも呪術師としての力の使い方をきちんと教えなければならないのかもな」
「今更だな」
「色々と事情があるんだ。まずは清蘭と誠也に話をしてから──」
一誠はぶつぶつと1人でなにやら考え込み始めてしまった。それを天月は見つめた後に考える。
(誠也様が誠司様に呪術師としての戦い方を教えるなと言ったのはきっと……。誠司様に呪術師としての立場を与えたくないからなのでしょうね。誠司様には普通の人間として暮らして欲しい、と。でも……)
それはきっと、誠司本人はともかく誠司の力そのものは御せることは不可能だろう。と、天月は思った。何より、力というのは本来押さえつけることは難しい。それが元からあるものであるなら尚のことだ。生まれ持って宿している力は簡単に人の手でどうにかなるものではない。出来るとしたらそれは人ではない力が必要となる。
(おそらく誠司様の力は簡単に抑えることは不可能だわ。だって、触れただけで私の中の穢れが浄化するのだもの。けれど、これを悪用する者がいずれ現れる可能性が高い。その時、私はきっと……)
誠司様に恐れられることになっても、私が自らの手でお守りしなくては。
天月は静かにそう、決意するのだった。
【前世が封印した妖狐が嫁になると言い出した・中編】
今回は誠也について触れてみました。
誠司の方が力が強いけど誠也の方が器用なので当主としては有能だったり。ただ完璧な人間ではなくブラコンっていうちょっと残念なイケメン要素があります。(短編なのでガチなブラコンの姿は出してませんが)
次には一旦完結させたいですね……。