嫉妬大作戦
木の葉が紅く見頃な11月。すっかり肌寒くなってきて長袖が丁度よい季節。
俺は鈴とスライムのリリー・Jさんと一緒に乗り気じゃない子虎を連れて紅葉狩りへ行ってきた。
済んだ心地よい山の空気とは裏腹に、子虎から醸し出される雰囲気は今もなお重く曇っている。
鈴から詰められる回数と、協力してくれている回数がいい加減増えてきている。
今回の紅葉狩りもその一環で、今回は荒治療に踏み切る事に。
「今までの楽しいから一緒に遊ぼう作戦じゃ埒があかない。今回は嫉妬させて感情を爆発させよう作戦をする」
もう……聞いたときから不安しかなかった。リリー・Jさんも後方で、うわーって顔してたし。
奴隷に拒否権なんてないので、やるしかないわけだけど。
で具体的に何をするのかというと、子虎の前で俺と鈴が親密にしているところを間近で見せつける。内心イヤイヤなのが鈴の全身から湧き出ているわけだけれども。
早速鈴が遠くを見たいからって俺に肩車をねだったんだけど。秒で子虎に止められてしまった。
まさかこんなにも早く嫉妬作戦の効果が出たのかと驚いたんだけれど、俺が潰れて死んじゃうから絶対やめてと叫ばれてしまった。凄い形相で。
子虎の脳内で俺どんだけ力がないことになってるんだ?
で代わりに子虎が鈴の肩車をしたんだけど、かなり満更でもなさそうなところが微笑ましいんだよな。鈴の顔真っ赤に茹で上がってトロトロだったし。紅葉より紅いや。
調子が狂ったのかなんなのか知らないけれど、暫くは平和に紅葉狩りを楽しむことに。俺もリリー・Jさんと平和にお喋りできて楽しかった。
お昼ご飯のお弁当を食べてる途中で鈴が正気に戻ったようで、座りながらちょこちょこと俺の隣に移動してきてはあーんしてと言ってきた。眉間にシワを寄せながら。
指ごと噛まれないか不安になりつつも鈴にあーんをしていると、子虎から仲良しさんだねってニコニコされてしまう。
思惑が外れたんだけれど、俺のせいじゃないから刺し殺す視線で睨まないでくれ鈴。
子虎はとても嬉しそうにしていたんだけれど、時折不思議そうに首を傾げていた。
結局終始空回りな紅葉狩りの挙げ句、最後にはみんな寂しげな空気感を纏うことになってしまった。
浮かべた理想がすり抜けていく。秋風が物寂しい。もうすぐ冬が訪れる。
これからも、温かい料理をたくさん作らなくっちゃな。




