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奴隷日記  作者: 幽霊配達員
青の書
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走りきった先へ

 太陽の熱と涼しい風が共存する過ごしやすい秋。

 特に今日はスポーツの秋を体現すべく、年に1度のトライアスロン大会が開かれた。

 今年の刹那家は険悪なムードに包まれていたから参加しないかもと思っていたけれど、毎年恒例な事をやめたくないって矛を収め合ったようだ。

 一安心はしたんだけれども、どうにもギクシャク感が否めない。ポテンシャルをフルに発揮できるのか疑問に尽きてしまう。

 1年目は存在に気付かず亀夜とお茶をしていたし、2年目は応援に行ったものの結果は芳しくなかった。

 みんなががんばっている姿をこの目で収めたいだけなんだけれど、どうにも空回りしそうな予感がして堪らない。

 あ勿論亀夜は俺と一緒に観戦だ。軽めの大会なら参加賞目当てで楽しんでもいいんだけれど、このトライアスロン大会は広く開かれているわりに結構ガチな感じだ。

 加えて3人1組で氷竜がスイム、千羽が飛行、子虎がランと得意分野に分れている。亀夜に入り込む隙間がない。

 ただ亀夜が余っているおかげで、俺も応援をする事ができる。特に千羽の飛行なんかは人間には声援の送りようがないからな。

 亀夜がホウキに乗せてくれることで声を届けられる。千羽からは余計なことをって、そっぽを向かれてしまったけどな。

 最初は氷竜のスイムだけれど、どうにも調子が出ていない感じがする。遅さに焦って動きが鈍いのかな。

 俺もガンバレーって遠くから声援を送ったんだけれど、届いているかも怪しかった。遠かったし、必死でソレどころじゃなかったんだろうなって。

 トップからだいぶ離されて千羽の飛行とタッチする。

 最初こそ少しでも差を縮めようとして表情が険しかったけれど、飛んでいる内に楽しくなってきたのか表情が柔らかくなってきていた。

 亀夜に連れられて応援のために先回り。コースが右往左往しているから後から陣取りする事は充分に可能だ。

 次々に飛び去っていく選手を見るに、声をかけられるのは一瞬。タイミングを合わせてガンバレを届けようって思っていた。

 けどいざ近付いてくる千羽の挑むような目付きと歯を食いしばった笑みを見て思わず「かっ飛ばせー!」って叫んでしまった。

 笑みが深まった気がした。赤い流星が青空を切り裂いてゆく。

 悔しいくらい、魅入られてしまった。亀夜に何度か声をかけられたみたいだ。ハっと気付いたとき、子虎の応援のために移動していた。

 最後のランは長丁場だ。俺でも走りきれるかなって思ってたら、是非ともやめてくれって亀夜に釘を刺されてしまった。

 声に漏れていたようだ。

 肝心の子虎なんだけれど、どうにも苦しそうだ。噴き出る汗に重い足取り。体感もフラついている。何より、表情が曇っているのがらしくない。

 多分子虎も違う。かける声はガンバレじゃない。けど言葉を探し出せない。

 わからない。わからないから手を伸ばした。できるだけ楽しそうな笑顔で、子虎って名前を呼びかけた。

 曇った顔のまま、すれ違いざまにハイタッチをして駆け抜けていく。不思議と、モヤモヤしたオーラが少しずつ晴れていった気がした。

 ペースは上がったけれど順位はあまり芳しくなかった。

 過去最低とはいかないものの、ソレに近かったらしい。

 氷竜は納得いってない感じだけれど、千羽は次に津ながら悔しさを爆発させている感じだった。

 走り終わって息をあげていた子虎は、楽しんだ余韻に浸っている感じだった。俺が声をかけるとまたチグハグになってしまったけれど、楽しかったことには間違いなさそうだ。

 もう俺にその感情を向けなくてもいいから、せめて楽しかったことは素直に受け止めれるようになってほしい。

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