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奴隷日記  作者: 幽霊配達員
青の書
65/72

中途半端だからじめっぽい

 梅雨真っただ中で洗濯物が乾きにくい今日この頃。

 刹那家の晴れない空気をより陰鬱にさせるじめっぽさが嫌になる。

 雨が続いているだけでもストレスが溜まりやすいというのに、肌に纏わり湿気と肺を重くさせる生ぬるい空気が不機嫌さに拍車をかけてくれる。

 ただ怒る気力さえも湿気らせてくれるからかケンカにまでは発展していない。幸運なのかどうかは、知らないけども。

 ただ普段と違う空気感とは関係なく、千羽が感情を爆発させた。よくわからないベクトルに。

「いい加減ジトジト雨がウザったいわ! というわけで優太、一緒に飛ぶわよ!」

 ……は? だ。

 言っている事がわからない俺をおいて準備を始める千羽。装飾のないシンプルなワンピースにつばの広い赤キャップで装う。

 俺にもシンプルなシャツとズボンにキャップを投げ渡してきた。

 奴隷の俺に抑止はできても、行動を拒否する権限はない。

 渋々着替えて玄関を開けると、弱い雨が降り続いていた。

 恐怖は感じないけれど、延々と終わらない不安を表しているように感じられる。太陽を遮る曇天が薄暗さを醸し出しているのもよくない。

 雨が降っているからお出かけは止めた方がいいし、第一どこへ向かうのかも聞いていない。

「目的地? そんなのないわ。とにかくただ飛びたいから付き合いなさい。優太の世界で言う、ドライブってやつよ」

 なんとも憎い笑顔で言いのけてくれる。奇行に付き合うしかない。

 千羽の運転するホウキに乗って、気の済むままに雨天ドライブへ。

 雨を防ぐのは被っているキャップのつばだけ。意外にも視界は良好。目に雨が入らないから、その点に至って不快さはなかった。

 空を切る風が火照った肌を冷やしてくれる。肌に纏わり付くじめっぽい空気も、びしょ濡れになってしまえば気にならない。

 何より、高速で移りゆく景色が爽快だ。

 不快を吹き飛ばして飛ぶ千羽の横顔は、イキイキしていていけない気持ちにさせられる。

 雨に濡れて重くなった赤髪が、今日は妙に気になった。

 こういう爽快さには、勝てないな。

 雨に濡れるのも受け入れてしまえば悪いものじゃないかもしれない……洗濯物のことを考えなければ。

 ついでにびしょ濡れだから、ちょっとお店によってお茶とかもできない。もしやったら迷惑この上ない。

 けど鬱陶しい気分は吹き飛ばせた。もしかしたら雨の日ならではの楽しみ方かもしれないな……普通はしないけど。

 まぁ夕方、仕事から帰ってきたみんなにこの事を伝えたら思いっきり怒ったけどな。

 風邪を引いて拗らせでもしたらどうする、って。

 嫌そうな顔をしつつ、知らんぷりでいられる千羽の豪胆さが心地よい梅雨日だった。

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