流れる時の感覚
氷竜がみんなに睨みを利かせ、子虎の挙動がおかしくなってから早一週間。
依然として解決策なんて見いだせていかった。
なんか悪い空気が立ち込めていることだけがわかる日々の中で、何もできずに家事をこなす。
ただ今日は買い物帰りに、オレンジ色の少女が歩いてくるのを発見した。
ちぃちゃんだ。また1年ぶりの再会になる。
初めて出会ってから2年も経っているのに身体の成長がまるで見られないのは、魔女の時の流れのせいだろう。
成長も人間の100倍ゆるやかだ。
手には買い物帰りなのか、ちょこんと買い物袋をぶら下げていた。中は辛口のおかし。俺が一年前に買ってあげたのと同じ物。また買ってるなんて、気に入ってくれたのかな。
気軽に声をかけて、子供相手に話し相手になってもらう。
大人げないかもしれないけれど、色々と吐き出したくなってしまった。
そしたらおずおずと不安そうに「優太さんは、長く生きたいって思わないの?」って聞かれてしまった。
答えの出ている回答なんだけど、やっぱり魔女からすると俺の寿命は短すぎるんだろうな。
短い俺の生よりも、明るい未来へ繋ぐ子供の生がほしい。だから婚礼生誕の儀に俺は、喜んで心身を捧げられる。
けどその前に、歪みかけている刹那家をどうにか元の状態……いやそれ以上に仲睦まじい環境へと正さないといけない。
だってそうしないと、俺の……俺たちの子供が安心して過ごせなくなってしまうから。
「なんだか、眩しいや」
そう言ってぎこちなく微笑むちぃちゃん。どうも俺が温かく感じたらしい。
自分ではそんなつもりはないんだけどな。
弱気になっている俺の背中を叩きながら元気づけてくれた。たったそれだけでやれるような気がしてきた。
家に着いたらお茶でもごちそうしよう。そう思ってたんだけど時間が来たようで、また足下から魔方陣が浮かび上がってはどこかへと飛ばされる。
「あっ、まただ。またね、優太さん」
ちぃちゃんも慣れたもので、消え去り際に笑顔で手を振ってくれた。
眩しくて、温かい……か。
ぽかぽかの太陽みたいな表現だ。よっぽどちぃちゃんの方が似合ってそうなのがちょっと笑えた。
うん。繋ごう、未来へ。
俺の寿命が風前の灯火だったとしても、次の命へ移すことぐらいできるから。
「……3回目。本当にこのちぃちゃんって誰なんだろ」
お父さんの悩みに答えられてないのに、気安に背中を叩いてるなんて。
魔女の力で貧弱なお父さんの背骨がダメになったらどうしてくれたんだろ。
なんとなく、右手を天井へ伸ばして広げてみる。
「叩いてみたい背中があるのに、イメージすら湧かないな」
ちょっと……いや、かなり悔しい。




