秋涼アラモード
冬の訪れも近く感じてきた11月の中旬。
俺は亀夜と子虎の三人で喫茶店へとお出かけした。
ちなみに氷竜と千羽はそれぞれの友達と遊びに出かけている。
数日前に亀夜に誘われて、子虎も一緒にって流れになったんだけれど、子虎は遠慮がちに断ろうとしていたんだよな。
いつからだっけ、心の壁ができちゃったのって。こんなだから鈴が怒っちゃうんだよな。
モヤモヤは残り続けているものの、今回は亀夜が説得してくれて同行する運びとなった。
食べ放題のお店じゃなければ亀夜も出禁にはならないし、プロの作るスイーツに刺激されてお菓子作りの参考になるから俺も嬉しい……あんまり頻繁だとお財布事情が気になってしまうけれども。
外食ってどうしても高くつくからな。
小洒落たシックな喫茶店に入り、コーヒーと旬のフルーツをふんだんに使ったアラモードを注文する。
フルーツの美味しい季節。味がケンカしないようにまとめ上げた贅沢な一品。複数人で注文できる仕様から、量のバランスも整えられているに違いない。
推奨人数は4人だけれど、まぁ亀夜がいれば問題ないだろう……2人前で足りるだろうか?
俺はコーヒーを優雅にブラックで、子虎は砂糖を一杯だけ入れてかき混ぜる。
亀夜は……コーヒーって何だっけって代物に生まれ変わらせていた。とりあえず甘ったるい事だけは理解できる。
お店の人に怒られないか心配だ。絶対コーヒーにも力を入れてそうなお店だし。
他愛ない会話をしながらお茶を楽しむんだけど、どうにも子虎だけ一歩引いた感じだ。
痺れを切らした亀夜が「優太と一緒にいても、楽しくない……か?」と切り出した。
首を振って否定をする子虎。ただ俺に無理をさせたくない、負担をさせたくないってテーブルに視線を落としながら言葉をこぼす。
そして逆に、亀夜に俺の負担になる事が怖くないのか聞き返した。
俺、この話の間に入っていてもいいのだろうか。普通、いない所で話さないか?
疑問には感じたものの、そこは奴隷という扱いらしい。ありがたい……のか?
脱線したな。亀夜は怖い、けれど楽しさもあるって答えた。そして本当に嫌なことは俺だって断ることができる。
「そして、優太と楽しいを共有……したい。子虎は、したくない……のか?」
子虎の心は揺れ動いたみたいだけれど、やっぱり怖い方が勝ってしまっている。
この食べているアラモードみたいに、楽しいことがいっぱい詰まっているはずなのに。踏み込んでくれないのがどうにも、秋のような寂しさを感じさせてしまう。
最後に亀夜は、俺に遠慮をしないと宣言した。今を楽しめなければ勿体ないぞ、と。
少し寒さを感じるのは、冬の訪れが近いからかもしれない。そう思い込むことにした。




