紅葉狩りとキノコ料理
少しずつ暑さも落ち着き、夕暮がやや早まってきたこの頃。
亀夜・燕子・死神の山田さんと一緒に、まだ早いかなと思っていた紅葉狩りへ出かけた。
まだまだ色めき始めたばかりとはいえ、少し遠くの山へ向かえば充分に景色を楽しめる。
なんだか今年は山に行く頻度が多いな。
真っ赤な絨毯……とまではいかないけれど、黄色く染まった山道を歩くのもオツだ。
燕子が風魔法でイチョウを軽く舞い上がらせる景色が幻想的で、まさに魔法って感じだった。
そして木枯らしのように舞うイチョウは、迷わず山田さんの方へ向かっていった。ボロ布が葉っぱ塗れに。
相変わらずつつくといい反応するな。へこんでる姿はかわいそうでもあったけども。
亀夜がもう少し自身の奴隷を労ってはどうだと気にかけると、燕子は逆に奴隷だからこそ好きなように扱わなきゃと返した。
そうなんだよな。燕子と山田さんのやりとりに隔たりなんか感じない。ある意味で距離感が適切に感じられる。
対して俺はどうだろう。
千羽……はともかく、亀夜とも氷竜とも子虎とも妙な距離感を感じてしまっている。
だから鈴に殺されかけた。
そして亀夜も心当たりがあるようで押し黙ってしまう。
結局互いに気を遣いすぎだって、燕子からありがたい助言を頂くことに。
主張を押し付け合わなきゃ、わかるとっかかりすら掴めないぞと。
主張か。
俺は充分すぎるほど、生と幸せをもらっちまってるんだよな。だから、望みがパっと浮かんでこない。
一年前みたいに、俺のキャパとか気にかけずにアレコレお願いしてくれた方が気が楽で嬉しいのに。
亀夜の横顔を窺ってみると、眉根を寄せた難しい表情をしていた。
「いいから、わからないなら会話のキャッチボールでもドッジボールでもやってみなさいっての。二人して受けに回ってたら何にも起こらないんだからね」
気持ちいいほどスパッとした燕子の回答。目から鱗な気分にさせられた。亀夜もポカンと口を開いていて、黒色の瞳と視線が合うと少し微笑んだ。
「とりあえず美味しい物を、楽しく食べてい……気分だ」
途端にやる気が出た。現地調達でお昼ご飯を作って食べる事に。
少し奥まった場所に入ると、たくさんキノコが生えていた。みんなで好き勝手引っこ抜いて、全部調理してしまう。
毒とか大丈夫だろうか? とても心配だ。
亀夜と燕子の知識を持って、俺には安全で美味しいキノコを取り分けてもらう。身体の弱さを全面的に配慮された。ヘタに死なれても困るとの事。
じゃあ他の三人は? さながらロシアンキノコ。
山田さんが必死に制止していたけれど聞く耳持たず。というか、毒が混じっていることは確定しているっぽい。
食後3時間ほど愉快なことになっていたけど、無事に毒が抜けて帰宅できた。
山は楽しいけれど、危険でいっぱいだな。




