臆病な死神
どうやら魔女の世界にも夏期休暇があるらしく、一週間ぐらいみんなが家でダラダラ過ごすようだ。
家事が大変になりそうな予感がする反面、どこか楽しい予感もする。
期待半分、不安半分でスーパーへ買い物に行くと、死神の山田さんとバッタリ出会った。かなりオドオドと鬱な様子。
どうやら主の夏期休暇を恐れているようで、普段からアレコレ言われているんだけど、ソレが二四時間の一週間も続くのが想像するだけでツラいんだと。
山田さんの魔女はどれだけ口うるさいのやら。でも亀夜と仲がよかったはず。イメージが全然浮かばないわ。
でも魔女も毎日仕事をがんばってるんだし、たまの長期休暇くらい受け入れてあげたらいいのに。
偏見かも知れないけど、山田さんは死神のクセして気が弱いというかなんというか……
気持ちが沈みきった山田さんをどうにか立ち直らせようと、直近の問題について聞いてみる。今日の晩ご飯は? と。
もっと空気が暗くなってしまった。
何も考えが浮かばないままとりあえずスーパーに来たんだとか。
……まぁ、毎日の献立を考えるのは相当悩むからな。
こういう時は今まで出した献立を順に並べて、使っていない食材を探し出せばマンネリは避けられるだろう。
早速三日前からの献立を聞いてみたら、昨日のしか思い出せないと返ってきた。
じゃあ昨日は何だったのか。
Tボーンステーキ、と。
何かお祝い事でもあったのだろうか。さすがに普段から食べているわけじゃないだろ。きっと、うん……
とりあえず考えないようにして、パっと鮎の塩焼きを提案。
妙に神妙に考えた後、覚悟を決めて買い物へ向かっていった。
……心労多そうな死神だな。
鮎は売り切れていて山田さんは再び落ち込んでいた。




