表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Missing Never End  作者: 白田侑季
第6部 脚光
83/125

ZIPANDA - シンデレラヒーロー




「何かを得たいなら覚悟を決めなきゃイケナイ。でもだからこそ、アタクシ達の覚悟を奪うようなマネは止めてちょうだイ」

「あんたらの、覚悟……?」


 私を見上げてつぶやくK汰ちゃんに、精一杯の不敵な笑みを返す。


「そうヨ。キミのその自己犠牲は、本来なら周りのコが受け持つべき責任も後悔も覚悟も、全部奪ってるってコトなの。何の為にアタクシ達がココにいると思ってるのカシラ?」


 その時、タイミング良くスマホがピコン、と鳴った。音数は3つ。私以外の、K汰ちゃんとノアちゃんの分も。


 振り返ると、ノアちゃんが自分のスマホを振りながら微笑んでいた。


「ふふ。ごめんねぇ、途中で遮っちゃうのは良くないかなって思って」


 「アラヤダ」私の方も慌てて謝る。「ゴメンナサイ、話し込んじゃって……。今の通知はノアちゃんが?」

「うん。"グループ"を作っておこうと思って」

「グループ? 何の?」


 ノアちゃんは不思議そうに小首を傾げる。「K汰君の作戦を共有するための、だよ。みんなでシェアしておいた方が話が早いでしょ?」


 ノアちゃんの言葉で、すぐに自分のスマホを確認した。画面には通知が1件。




 〈「Novody@楽園P」さんがグループ「K汰君の作戦を共有するグループ」を作成しました〉




「……そのまんまじゃねえか」

「……そのまんまねェ」

「あれ。わたし名前の付け方変だったかな?」


 あどけない顔でキョトン、としているノアちゃんに、K汰ちゃんが苦い顔をする。


「変っつーか。捻りが無さすぎて拍子抜け、つーか……」

「まぁグループ名を捻らなきゃイケナイ、ってワケでも無いのダケド……。意外な愛着点(チャーミングポイント)ってところカシラ……」


 それより、と改めてメンバーを確認する。ここにいる私達3人の他に『ヒロアキ(ヒロちゃん)』、『にくたまうどん(たまちゃん)』、『HighCheese!!』の『ぷらす(イツキちゃん)』と『獅子宮(ミヤトちゃん)』。更には『マキシマム遥(街ロマちゃん)』の名前まである。


 錚々たるメンバーに、心強さもひとしおだ。


「……グループ作成、ありがと。助かるワ」

「ううん」私の言葉に笑顔で首を振るノアちゃん。「わたしももう1回、あの五重奏(クインテット)の人たちとお話ししたいから。メグちゃんのこと、ちゃんと分かって欲しいもん」


 決まりネ、と今度はK汰ちゃんの顔を見下ろす。


「ソレで? 我らがリーダーのご意見はいかがかしらァ?」

「…………誰がリーダーだ。勝手に人の名前使いやがって」


 ぼそっと悪態をつくK汰ちゃん。けれどその目からは、もう冷たい光は消えていた。短くなった前髪をかき上げて、K汰ちゃんが溜め息を吐く。


「もしかしねえでも、こっから先はタダじゃ済まねえぞ。五重奏(あいつら)が本気で来る以上、もうこれはただの喧嘩じゃねえ。れっきとした()()だ。……それでも、あんたらは」


 重い口調のK汰ちゃんに、両手を挙げて「やれやれ」といった仕草で返す。


「ンもう、なんでアタクシ達のリーダーはそう深刻なコトバばっかり使うのかしらァ。ソンなんじゃフロアは湧かないわヨ?」

「そうだよK汰君。リーダーさんなんだから自信を持って。それにわたし達はもうお友達なんだから、わざわざ言わなくたって平気だよ」


「……ったく」呆れ気味に立ち上がるK汰ちゃん。「緊張感のねえ奴らだな」

「ンフフ。それぐらいでイイのよォ。何せコレからするのはイジワルな逆恨みじゃない──正統な反撃、デショ?」


 私の言葉にK汰ちゃんは何も言わずに、少しばかり口角を上げた。


「それでK汰君、計画はどうするの?」


 後ろ手を組みながらノアちゃんが尋ねる。「いくつか案は考えてくれてたけど。どれで行くのかな」


 そうだな、と顎に手をやりながら考えるK汰ちゃん。


「相手は確実に俺らを仕留めるために、先々動いているはずだ。相手のペースに入られた時点で詰むだろうし、"誘い出し"や"真っ向勝負"もおそらく通用しねえ。ベストなのは、相手の居所を掴んでの奇襲だが、()()がいねえ以上その手も難しい。……ここまでは前に話したのと変わんねえ」


 自分で考えを整理するようにぶつぶつと唱えるK汰ちゃん。やっぱり追い詰められた(こういう)時の彼は頭の回転が早い。


「そうねェ。情報戦に長けてるのはアタクシ達の中じゃ、たまちゃんぐらいだもノ」

「それ、わたしも考えたんだけど」とノアちゃん。「P名は分かってるんだし、あの人たちの交友関係(おともだち)から聞くのはどうかな?」


 ノアちゃんの提案をK汰ちゃんが引き取る。「それも無理だろうな。俺も考えなかったわけじゃねえが、その方法だと相手側に俺たちの行動が筒抜けだ。向こうもそれを見越して、知り合いに話を通してる可能性も十分にある。探りを入れるだけにしちゃあリスクがデカ過ぎんだよ」

「でも、それじゃあ」


 ノアちゃんが尋ねたその時、K汰ちゃんがニヤリ、と笑った。余裕を含んだ、あの狂犬のような笑顔。


「────()()()()()()()()()()()()

「……"全部"? どういうこと?」


 首を傾げるノアちゃんの横で思わずンフフ、と笑みが溢れる。「ワルい顔(イイ笑顔)。何か思いついたみたいネ?」


「まあな。だが仕掛けるにしろ衝突するにしろ、どのみち『街ロマ』の協力が必須だ。あいつが居ると居ないとで、勝てる確率が桁違いに変わる。あいつには事前に話通しておかねえと」

「アラ、街ロマちゃん? 彼1人でそんなに変わるカシラ……?」


 意外だった。街ロマちゃんと面と向かって出会ったのは、あの襲撃事件の時だけ。仮に彼も異能持ちだとすれば、あの時異様に舞っていた花弁の渦がそれに当たるのだろうけど。


 正直、トリとカルの異能を目にした後で見劣りしてしまうのは否めない。(見た限りではあるけれど)片や「未来予知にも近い先読みの異能」、片や「変幻自在に身体を作り変える異能」。戦闘向きなのは、と聞かれればまず間違いなく五重奏の2人に軍配が上がる気がする。


 けれどK汰ちゃんは、さして気にした素振りもなく頷いた。


「ああ。予想が正しけりゃ、街ロマ1人で()()()()()()()()()()。問題はカルの方だが」


 K汰ちゃんが投げた視線を、今度は私とノアちゃんがしっかり受け取る。


「任せてチョウダイ! アタクシのマーヴェラス・シャイニーな声で、あいつに天国(ヘヴン)を見せてあげるワァ!!」

「うーん、わたしは暴力とかはあんまり好きじゃないんだけど。出来ることをやってみるよ」


「それじゃあ早速みんなに伝えるね」とノアちゃんがスマホを起動させる。と、そのとき再び全員の通知が鳴った。しかも数回。3人分合わせるとちょっとした合奏みたいだ。


 ちょうど画面を開いていたノアちゃんが反応する。


「あ、ミヤトくんだ。ふふ、いっぱいスタンプ送ってくれてる」

「あいつまたスタ爆してやがんのか……。慣れねえな……」

「気になるノだったら通知切ってもイイんじゃないカシラ?」

「俺の名前が入ったグループに俺が反応しねえのも、なんかモヤモヤすんだよ……」

「変なトコで律儀ねェ……」


 するとノアちゃんがまた「あ!」と声を上げた。


「んだよ、今度はどうした。大量の絵文字でも送ってきてんのか、あいつ?」

「ううん、そうじゃなくて。でもすっごく楽しそう!!」




「イツキちゃんが作った新曲を、ミヤト君がメグちゃんと一緒に歌うことにしたんだって!」




「────────────は?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ