K汰 - 涙を裂いて
「ったく。本当そっくりだな、あんたら」
「圭」
ふいに、圭が話に入ってきた。ミヤトとの話に集中している間に、いつのまにか近くへ寄ってきていたみたいだ。その傍にはイツキもいる。
「圭は、もう大丈夫? 怪我は」
「何ともねえよ。いちいち気にしてんじゃねえ」
ぼくの心配をよそに、圭はぼくの頭をわしわし撫でた。もう片方の手でイツキを指して、「こいつにきっちり治してもらったしな」
「そっか……。イツキ、ありがとう。圭を治してくれて」
そうイツキに声を掛けたけど、掛けられたイツキは気まずそうに、「私は、別に」とそっと目を逸らしただけだった。その様子を見た圭が、再びわざとらしい溜め息を漏らす。
「ったく、面倒くせえ。やった側の人間が傷付いたツラしてんじゃねえよ」
「け、圭。もういいって」
思わず仲裁したけれど、圭は全く意に介さない。今度はミヤトの方に矛先を向けた。
「あんたもあんただ、ミヤト。自分の意志で決めてんだったら、最初っから独り善がり以外の何物でもねえだろ。まあ、家族だから何でも分かり合える、ってのが間違いだって気付けたんなら、それはそれで上等だろうがな。それ以上卑屈になってんのは、はっきり言ってダセェぞ」
「…………だったらっ!」
ミヤトが立ち上がる。語気も荒く、真正面から圭と目を合わせる。
「おれはどうすれば良かったって? イツキを、母さんを、──家族を傷付けたまま、自己中に生きろっての? 分かろうともしねーで、元気づけようともしねーで、そのままのうのうと生きれるほど、おれは薄情じゃねーよっ!」
思いの丈をぶつけるミヤトに、けれど圭はわざとらしく片耳を塞いで見せた。
「傷付けた傷付けた、って馬鹿の一つ覚えかよ……ってクソッ、あいつの口の悪さがうつっちまったか……」
一瞬苦々しい表情で後頭部をぽりぽり掻いて、圭はミヤトを睨む。
「大体、傷が何だってんだ。あんたが間違いだって気付けたのも、その傷があったおかげなんじゃねえのか」
「傷の、おかげ……?」
信じられない、とでも言いたげなミヤト。そんなミヤトを横目に、圭はイツキにも視線を向ける。
「イツキ、あんたもだ」
「わ、私……?」
「あんたが一度傷付いたからこそ、あんたの作る曲は馬鹿みてえに明るい。誰かを想って曲作って、笑わせてえって想いで玩具箱みてえな明るい曲作って、実際あんだけの人間に届いてんだ。それだけでも、傷付けた、っつう反省は十分活かせてんだろ」
イツキが眼を見開く。「わ、私の曲、知って、」
「当たり前だろ」圭が呆れたようにぼやく。「ミヤトが自分で言ってたしな。あんたが『HighCheese!!』の『ぷらす』だろ。あんだけ再生数稼いどいて自分の知名度を聞き返すなんざ、新手の皮肉か? 違えならやめとけよ、その聞き方」
話を戻すが、と圭。
「傷を無理に受け入れろとは言わねえ。若いころの過ちは買ってでもしろ、なんて言葉はくそくらえだ。傷を乗り越えて強くなれるなんざ、できる奴に任せとけよ」
そこで圭は、ただし、と言葉を切った。蒸し暑い空気を洗い流すように、少し強い風が吹き抜けていく。圭の髪先が揺れ、その間から覗く瞳の光が木洩れ日みたいに揺れる。
「傷付いて、傷つけて、傷つけられて。そんな時に泣き叫ぶぐらいは誰にだってできるし、それくらいは誰にだって許されてしかるべきだろ。痛えのに泣かねえのは強さでもなんでもねえ、ただの自己欺瞞だ。なんならいっぺん、さっきみてえに本人相手に泣き叫んでみろよ。解決しねえけどスカッとはすんだろ」
「泣き、叫ぶ……」
噛み締めるようなミヤトの声。その隣で、ぼくも圭の言葉を頭の中で反芻していた。
傷付いても、傷付けられても。泣き叫んでいい。それは、誰にだって許される。
だからだったんだ。ふいに、そう思えた。ふいに理解した。圭がどうしてぼくの傍に居てくれるのか。時に離れても、圭がどうしてぼくの隣に戻ってきてくれるのか。
ヒトの多い場所が怖くて。心を強く持たないと圭の家から外に出られなくて。それでも必死に出ようとして、気持ちだけ焦って、何度も何度も玄関の前でうずくまっていた時。そんな時にも圭はずっと付き添ってくれた。
きっと圭は、ぼくが泣くのを待っていたくれたんだ。結局涙を流すことまでは無かったけれど、それでも圭は、ぼくがいつでも泣いて良いように、ずっと。ずっと傍に居てくれたんだ。いや、たぶんその前からも。ぼくと出会ってから今日までも、ずっと。
傷付いたぼくが、いつ泣き叫んでもいいように。
「…………泣き叫ぶ、かぁ」
イツキが呟く。辛いことを飲み込むように、それでも何とか笑顔を作るように。
でも、どこか吹っ切れたように。真っ青な夏空を木陰から見上げて。
「巧く、できるかな。生きるの下手くそなのに、私」
「それを言うならおれもだな。こんな間違ってばっかで、……ほんと巧く生きれる気がしねーよ」
かぶせるように独り言ちるミヤト。
そんな2人に、心底疲れ切ったように圭が吐き捨てる。ぶっきらぼうに、不愛想に、でもどこか温かさを含んだ声で。
「甘えこと言ってんなよ。現実はゲームみてえに巧くはいかねえ。生きてるだけで一苦労だ、リセットしたくなる気持ちも分からんでもねえ。だがな、現実はゲームみてえに、時々ありえねえほど巧く行く時がある。何もかも残酷なばっかが人生じゃねえんだよ」
「ねえ、圭」
圭に尋ねた。公園にはもうぼくと圭の2人しかいない。アサヒはリズと一緒に、イツキとミヤトを車に乗せて一旦家に帰った。ノアも、まだ友達を待たせているから、とショッピングモールに戻っていった。手元のスマホも静かだから、たぶんたまもいない。一気に静かになった公園で、ぼくは圭にもう少しだけ、とお願いして、2人でベンチに座っていた。
「"五重奏のヒト達に一発痛い目みせる"のは、もういいの?」
「……ああ、駐車場で言ってたやつか」
圭に頷いてみせる。駐車場にいた時、圭はイツキに向かってそう言っていた。
「てっきり圭は、もっとイツキとミヤトを怒るかと思ってた」
「俺が、しみったれた辛気臭え顔のガキ2人を怒鳴るような、器の小せえ奴に見えるかよ」
ったく、と疲れた顔で、圭はベンチの背もたれに背中を預けた。
「まあ、確かに最初は『痛い目みりゃいい』とは思ったがな。あんだけアサヒに平謝りされちまったら興醒めもいいとこだ。あの状況で、無理やり痛い目にでも合わせてみろ、逆にこっちが悪者になんだろ。あーやだやだ」
圭はそう大袈裟に手をひらひら振って見せる。でも、言い方には悪意がない。毒気がない。きっといつものイジワルだ。
「てか、お前の方こそいいのかよ」
「ぼく?」
「あんだけあいつらにされておいて、思うところはねえのかって話だ」
圭の言葉に一瞬きょとんとしてしまう。でも、改めて考えなおしても、ぼくの心は変わらなかった。
ぼくはそっと首を振ってみせる。
「ない」
「あんだけ理不尽に追い駆けられて? お前の苦手なヒト混みにも行くハメになったってのに?」
「それでも」
もう一度首を振る。確かに辛かった。辛かったし苦しかった。息も絶え絶えに走って、圭が傷付いて怖くて、ヒト混みは恐ろしくて、もう諦めたいと何度も思った。
でも。だって。
「だって、圭が傍にいてくれた。圭が助けてくれた。ぼくには、それだけで十分。イツキとミヤトはちょっと心配だけど」
どんな時も圭が居てくれた。圭と離れた時でさえ、K汰の曲がぼくを支えてくれた。どれだけ大変なことがあったとしても、それだけで。その存在だけで全部が許せてしまえるほど、ぼくにとって圭が大事なんだと。それに気付けただけで、今日の傷を許せてしまえた。
「本当に、何とも思ってないんだ」
「…………さいで」
「圭、疲れた? 顔がちょっと赤い、」
「んでそこだけ絶妙に聡いんだよ何でもねえってっ!!」
ぼくの心配を全速力で振り切ろうとする圭。「それよりお前、その言い方だと、イツキとミヤトとも『お友達』になりてえってか?」
驚いて、思わずびくっとする。
「そ、そうだけど。ダメ、かな」
「いや駄目じゃねえけど……。博愛主義にも程があんだろ。てか前も思ったが、ついさっきまで闘り合ってた奴らをすぐさま友達認定するの、止めた方が良いぞ?」
「だ、だって2人とも、アサヒの家族だし。それに多分、最初にぼくに服を貸してくれたのもあの2人だし。今日はこんなことになったけど、ぼく、あの2人は良いヒトだと思うんだ」
「だからってなあ……! いいか、"昨日の敵は今日の友"とか漫画の中だけだからな。そんな友達関係の緩い子に育てた覚えはありませんっ!」
「? ぼく、圭の子供じゃないよね?」
「急なマジレス止めてくれませんかね……、ハズいから……、俺が……」
いつもと変わらない、圭との他愛ない会話。夏の空気はまだ暑いし、蝉の声も鳴り止まないし、ベンチにさす木洩れ日は眩しいけれど。ぼくはこうして外にいる。圭と2人、それでも外でこうしていつもと変わらない時間を過ごせている。その感覚が、不思議と心地よかった。
そうだ、と口を開く。
「圭」
「なんだ」
「ぼく、分かったんだ。どうしてヒト混みが苦手なのか」
一瞬圭の動きが止まる。それから、ゆっくりと背筋を正した。無言だけれど、ぼくの答えを待ってくれているのが雰囲気で分かった。
思い出す。最初にスーパーで過呼吸になったこと。そして圭の家から出るまでの訓練の日々。ショッピングモールでの、頭の割れるような痛み。白い階段室で触れた記憶。
「────────ぼく、『唄川メグ』としてヒトに見られるのが怖い、んだと思う」
圭が、息を呑むのが分かった。
ヒト混みが極度に苦手な理由。それは、目が怖いから。
でも、それは誰の目でも怖いというわけじゃない。圭やみんなから見られても全く辛くない。それなのに目が怖いのは、全く知らない赤の他人から見られることが怖い、ってことだ。
問題はその結果。見られて何が怖いのか、だ。
それが今日、あの階段室で「唄川メグ」を思い出した時に、気付いた。
真っ白い階段室。真っ白い世界。ぼくがかつて居た場所と、似た景色。そこには「唄川メグ」がいて、真っ白い虚空に向かってずっと、ずっと言葉を投げかけていた。囁いてきた。その向こう側に、きっとあったんだ。
目が。数え切れないほどたくさんの、無数の、黒い星々のような視線が。
「どうして『唄川メグ』として見られるのが怖いのか。……それは、まだはっきり分からないけど。でも、そう見られるのが怖い、ということだけは分かった。『唄川メグ』として誰かの目に晒されるのが、怖いんだと思う」
怖さで、想像しただけで胃が竦む。膝の上でこぶしを握る。言い知れない、底のない、真っ暗な無重力の中に落とされるような感覚。
圭が、重々しく口を開く。
「さっき、ノアと別れ際に話していたのは、そのことか」
「……うん」
頷き返す。
みんなと別れる前、ぼくはノアに声を掛けた。
ノアは言った。どうしてぼくが過去を振り返ろうとするのか。やり直せないのに、振り返ったところで傷付くかもしれないのに、ぼくはぼくのままでいいのに。どうして過去を知ろうとするのか。その問いかけに、まだちゃんと答えていなかったから。
だから、答えた。
ぼくは傷付いても良いんだ、って。
案の定、ノアは困ったような笑みを浮かべた。
「どうして? 傷付くのって、とっても痛いことでしょ。メグちゃんだって、痛いことは嫌じゃないの?」
「……そう、痛い。とっても痛くて、辛くて、苦しい」
「なら、」
「でも。でもね、ノア」
ぼくはノアの言葉を遮る。そして、思い返した。圭がイツキとミヤトに掛けた言葉を。
「『傷付いたら泣けばいい』んだ」
「……え?」
必死に言葉を紡ぐ。必死に想いを手繰る。この、今の心の形を手放さないように。
「痛くて、怖くて、苦しいときは泣けばいいんだ。それは誰だって同じなんだ、って分かったんだ」
そっと胸の上に手を添える。あの真っ白い階段室で感じた痛みが、あの苦しさが、まだ身体の奥で疼いている気がする。あの時見えた『唄川メグ』が、まだ瞼の裏で笑っている気がする。
「ぼくは、ヒトがたくさんいる所が怖い。たくさんのヒトに見られるのが怖い。ぼくは『メグ』じゃないのに、どうしたってぼくは『メグ』だから。『唄川メグ』みたいになれないのに、なれる気がしないのに、それでも同じように見られてる。そんな気がしてたんだと思う」
でも、と添えた手をぎゅっと握る。
「もし怖いなら。もしぼくがそれで傷付いたなら。ぼくが『唄川メグ』を知って傷付いたなら、その時はちゃんと泣く。ぼくはぼくの想いの分だけちゃんと泣くことにする。だから大丈夫」
「あのね、メグちゃん……」
「それに」
諭そうとしてくれるノアを制して、続ける。
「それに、きっとノアが言ってくれたことは正しい。ぼくはぼくのままでいい。なら、『唄川メグ』は『唄川メグ』のままでいい。今のぼくも、過去のメグも、どっちもぼくで、それぞれがメグなんだ。……ノアもそう思っているから、ぼくをまだ『メグちゃん』って呼ぶんでしょ?」
ノアがハッと目を見開いた。涼しげな琥珀色の瞳が、一瞬陽炎みたいに揺らめく。
あの時、駐車場にふっと現れた時から、ノアはぼくのことを「メグちゃん」と呼ぶ。最初に公園で話したときは「メグちゃんって呼んだら失礼かな」って言っていたのに。それがずっと気になっていた。ぼくが「メグ」と呼ばれることがじゃない。どうしてそれでもノアはぼくをメグと呼ぶのか。
そして、ようやく気付いた。ようやく気付けた。
ぼくはぼくのままでいい。傷付いたぼくを蔑ろにしなくていい。それと同じように。
メグはメグのままで良いんだ。
「ぼくは、きっとどれだけ頑張っても、みんなの想う『唄川メグ』にはなれない。でも、それでいいんだって思えた。それを受け入れられた。だから今なら、きっと『唄川メグ』を受け入れられる。もしそれで傷付いたとしても、泣けばいい。やり直せない分、思いっきり泣けばいいんだ」
ノアは静かに聞いていた。いつもの柔らかな笑みの代わりに、痛いほど真っ直ぐな視線がぼくを見つめていた。
それからそっと引き結ばれた唇を開いた。蝉の声にかき消されそうなほど微かな囁きで、けれどその騒がしさを捩じ伏せるような、はっきりとした口調で。
「苦しくても受け入れて、傷付いても泣いて、それでメグちゃんは本当に救われるの?」
「……分からない」
素直に首を振った。「ごめんノア。ぼくにはまだ"救われる"の意味が上手く理解できてない。でも、少なくともぼくは先に進める、と思う」
「先に?」
「うん。ぼくは先に進みたい。メグじゃない"ぼく"として、『唄川メグ』の想い出と一緒に、たくさん傷付いたとしても、泣きながらでも進みたい。進みたい理由がある、って気付けたんだ。そのために、ぼくは過去を受け入れるんだ」
ざざあっ、と木々が揺れる。生ぬるい夏風が潮騒みたいに寄せては引いていった。
ノアはそっと溜め息を吐いた。それから「そっか」とこぼした。
「──君も」
「ノア?」
「ううん、何でもないよ」ノアはすぐに首を振って、ふわりと笑った。「わたし、やっぱり貴方のこと好きだなぁ。もっと仲良くなりたいって思っちゃった。でも、無理はしちゃだめだよ? 私にできることがあれば、いつだって力になるから」
「……うん、ありがとう。すごく嬉しい」
ノアはふふっ、と微笑んでから、それじゃまたね、と手を振った。そのままスカートの裾をふわっと翻して、ショッピングモールまでの道を爽やかに駆けて行った。
そんなノアとの会話を、どうやら圭は離れたところで黙って聞いていたらしい。
「お前は」と圭が言う。「お前はそれで良いんだな?」
何が、とは言わない圭。でも多分、圭が聞きたいことはひとつじゃない。きっと全部で、そしてそれはぼくの為だ。
ぼくは力強く頷く。過去を、現在を、全部を肯定するように。
「────うん、それで良い。それが良いんだ」
圭は何も言わなかった。その代わりに、ふっ、と小さく笑った。ぶっきらぼうで、でもどこか優しい、そんな笑みだった。
「ねえ、圭」
「んだよ」
「圭も、傷付いて泣きたかったことって、あるの?」
一瞬、圭の瞳の奥に何かがよぎったように見えた。でもそれはすぐに消えた。圭は視線をスッと逸らして、遠くの空を見つめた。傾き出した太陽に、白い入道雲が照らされている。真っ青な空に金色の雲がたなびいている。
「べそかくなんざしてねえよ。まあ、俺の記憶もそこそこ抜けてっからな。確かには憶えてねえけど」
「え?」圭の言葉に少し驚く。「……圭も、記憶が?」
けれど圭はからかうように、ぼくの頭をわしわし撫でた。
「だから、いちいちそんな深刻そうな顔すんなって。お前ほどじゃねえよ。ただ、傷付いたことなんざ憶えてねえくらい、数え切れねえほどあるだろう、って話だ。人並みにはな」
圭はそれっきり、この話題に触れる気は無いようだった。特段気にする様子もなく、ベンチから立ち上がり、額にうっすら滲む汗を拭った。
「それよりほら、早く帰んぞ」
「……! うんっ」
圭の言葉に胸が弾んだ。勢いをつけてベンチから腰を上げる。
帰る。その言葉にどうしようもなく嬉しくなるぼくは、やっぱり子供で。まだ傷のことも、救われるかどうかについても、本当はちゃんと分かっていないのかもしれないけど。
それでも。
「にしてもクソ長え1日だったな。暑っちい……。シャワー浴びてえ……」
「ぼく、お腹空いた。アイス食べたい」
「アイスで腹が膨れるわけねえだろ。アサヒかリズが何か作り置きして……って、うおっ、服泥だらけじゃねえか。クソっ、洗濯もしねえと……」
「アサヒに怒られる?」
「ご名答。とっとと帰って着替えんぞ。そんでお前も風呂入れ。どうせ汗だくだろ。身体冷えちまう前に湯船浸かっとけ」
「? 圭はシャワーで、ぼくは湯船なの?」
「……色々あんだよ」
「"色々"って?」
「色々は色々なんだよ全部言ったらアウトなんだよ察してくれっていいからさっさと帰んぞッ!!」




