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10皿目 試練の塔とクッキー型の秘密(1)

 ついにこの日がやってきた。

 リリアナのガーデン貢献ポイントが1億ポイントに達したのだ。


 テオがパーティーに加入してからは、マンドラゴラの成長促進の検証に協力したり、潜入調査に赴いたり、新種の魔物を発見したりと大量のボーナスポイントをもらえる機会に恵まれた。

 キャリーお坊ちゃまのネリスほどではないが、冒険を始めて3年半で1億ポイント到達は異例の早さだ。


 朝、開業時間ぴったりに管理ギルドに行ったリリアナは、緊張した面持ちでポイント交換窓口に冒険者カードを差し出した。

「『レオナルドの招待状』と交換をお願いします」

「かしこまりました」

 そのやり取りが聞こえたのか、背後からどよめきが上がる。

 本当は注目を集めずにこっそり試練の塔に挑戦したかったが、受付フロアには朝から冒険者たちがたくさんいる。


 受付で封筒を受け取った。

「リリアナちゃん、頑張れよ!」

「大食いでレオナルドをビビらせてやれ!」

 顔見知りの冒険者たちの激励に「ハハハ」と乾いた笑いで答えながらギルドを後にした。


「どうしよう、テオ。緊張で吐きそう!」

 外で待っていたテオに思わず泣きつくほど、すでに余裕のないリリアナだ。

「大丈夫だろ。どんなに食ったって吐いたことなんてねえんだから」

「それとこれとは別なのよ!もう、テオの馬鹿っ!」

 

 ハリスに抱かれていたコハクがリリアナにピョンと飛びついてくる。

「コハク~! コハクと一緒に行けたら心強いのに」

 リリアナはコハクに頬ずりしまくった。


 試練の塔にはひとりで臨まなければならない。

 どんな試練が待ち受けているか、事前に知ることはできない。

 だから、あらゆる準備と覚悟をもって立ち向かわないといけないのだ。


 この後リリアナは、その下準備のためにガーデンのあちこちのエリアに行き、ハリスが手早く作ったガーデン料理を食べてバフをつけまくった。


「じゃ、行ってくるわね」

 封筒の中に入っていたのは、注意事項の書かれた紙と鍵だ。

「頑張れよ、待ってるから」

 テオがいつもの生意気な態度を引っ込めて、心配そうにリリアナを見つめている。

「無理はするな。途中でダメだと思ったら潔く諦めればいい」

 これまでたくさんのアドバイスをくれたハリスの最後の教えは「無理は禁物」だった。


 リリアナは吹っ切れた様子で拳を握る。

「待っててね! 今夜は祝賀会よっ!」

 リリアナが鍵を虚空にさして回すと門が出現した。

 もう一度振り返って、心配そうにこちらを見つめるハリス、テオ、コハクに手を振ると、リリアナは門の中に入って行った。



 リリアナの目の前には、横に枝葉を茂らせた大樹と、高く聳える石造りの塔がある。

「よしっ」

 リリアナは気合を入れ直し、塔へ向かってゆっくり足を進める。

 上空からカラスのような黒羽の鳥が舞い降りてきて、塔の扉の横にある止まり木にとまった。

 

「レオナルドの塔へようこそ!」

 レオナルドの使い魔と思われる鳥は、黒いくちばしを開いてしわがれた声でしゃべりはじめた。

「レオナルド様は塔の最上階でおもてなしの準備をしてお待ちです。本日の日没までにおいでください。どのような方法で登ってもかまいませんが、塔の外側は我々が飛んでおりますので、中から進むことをおすすめします」

 リリアナが見上げると、他にも黒羽の鳥たちが塔の周りを旋回しているのが見える。


 実は事前に、塔の外側を飛んでいけば試練など関係なく最上階まで行けるんじゃないかとハリスに相談したことがある。

 リリアナはまだ飛行魔法を自在に操ることはできないが、重力軽減魔法と上昇気流を起こす風魔法を駆使すれば実現可能だと思っている。

 しかし試練の塔経験者のハリスは首を横に振った。塔の外側にはレオナルドの使い魔たちがいて、外壁から行こうとすると邪魔をしてくるだろうから得策ではない、と。

 たしかにその通りのようだ。


 しかし作戦はそれだけではない。

 この挑戦で成功するために、とっておきの秘策も用意している。


「では、お気をつけて! いってらっしゃいませ」

「いってきます」

 使い魔に告げて扉の取っ手を引いた。

 

 ギイッと音を立てて開いた扉の向こうに螺旋階段が見える。

 どうやらネリスの挑戦の時のように、イバラがぎっしり生えていて中に入ることすらできないわけではないらしい。

 頭の中に足を踏み入れると、背後で扉がバタンと閉まった。ここからはギブアップ宣言をするまで、あるいは日没までは塔の外に出られない。


 リリアナは螺旋階段を見上げた。

 塔の壁に沿うように上へと続き、中央は吹き抜けになっている。所々に魔物が待ち構えているもの見えるが、全ての魔物とまともに戦う気はさらさらない。

 この構造だと、外側でやろうとしていた作戦がそのまま使える。


 リリアナは自分に重力軽減魔法をかけると、足元に風魔法で上昇気流を起こす。

 ブーツのつま先でタンッと石の床を蹴り、高く飛び上がった。


 

※いつも拙作を読んでくださりありがとうございます!

 申し訳ありません。体調不良のため数日更新をお休みするかもしれません!

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