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プロローグ

「かかってこいよ」

 テオが口の端を上げ、不遜な笑みを浮かべる。

 対峙しているのは白い毛並みのライオンに似た魔物、レオリージャだ。

 

 愛用の両手斧を構えたテオは、茶褐色の目を真っすぐ向けてレオリージャと睨み合う。

「グルルルル」

 鼻にしわを寄せたレオリージャが体勢を低くした。


 草原に一陣の風が吹き抜け、無造作に束ねたテオのグレイッシュブルーの髪を揺らす。

 風が収まった瞬間、レオリージャが勢いよく飛び上がって前肢を振り下ろした。


「ぐっ……!」

 食いしばった歯の隙間から呻き声が漏れる。

 黒く尖った爪の衝撃は、テオの予想を遥かに上回っている。それでも、レオリージャの渾身の先制攻撃を真っ向から受け止めた斧が弾き飛ばされるのはどうにか免れた。

 両手でしっかり柄を握り直したテオが斧を薙ぎ払い、レオリージャを押し戻す。


 今度はテオから攻撃を仕掛けた。

 頭めがけて振り下ろした斧が空を切る。反撃に転じたレオリージャの大きな牙が肩に食い込む寸前、テオはどうにか飛び退いて回避した。

 あの鋭い牙をまともにくらえば、装備の肩当てなど意味をなさないだろう。


 両者が再び距離を置いて睨み合う。

 テオの息はすでに上がっている。焦りを落ち着かせるために、斧の柄に刻まれた文字を指でなぞった。

 フッと息を吐くと再び口元に笑みを浮かべて、レオリージャに向かって行った――。

 

 

 夢中で狩りをしているうちに拠点から随分離れた位置まで進んでいた。それに気づいたテオが戻ろうしたところで遭遇したのが、牙をむいてこちらを威嚇する中型のレオリージャだった。


 よし、こいつを倒して今日の狩りは終わりだな。

 そう思いながら斧を構えた時点では、苦戦することなど頭の片隅にもなかったテオだ。

 腕には自信があったし、もっと大きなレオリージャをひとりで倒した経験もある。だから余裕だと考えていたテオの誤算は、このレオリージャが子育て中だったことだ。

 子を守る母の執念は凄まじかった。


 どうにか死闘を制したものの、テオは負傷と疲労でフラフラだ。

「はぁ……はぁっ……」

 髪を束ねていた麻紐はちぎれ、血の滲む傷だらけの頬に髪が張り付いている。

 視線を足元に落とせば影が長く伸び、夕日が空だけでなく大地もオレンジ色に染め上げていた。

 まもなく夕闇が訪れる。

 夜行性の魔物たちが活動を始めれば、弱りきって抵抗できないテオは拠点へ戻る前に襲われてしまうだろう。早く拠点へ帰還しなければならない。

 

 もう少しだ。俺ならやれる!

 己を鼓舞して顔を上げ、一歩前に踏み出そうとした時だった。


 ボフッ!

 テオの視界に白い毛の塊が飛び込むやいなや、テオの体は後ろ向きに宙を舞う。

 後頭部を強かに打ち付けたテオは、白い塊の正体がなんなのかわからないまま意識を手放した――。


 ******


 ガーデンの成り立ちはいまから300年前の大陸全土を巻き込んだ戦争に由来している。

 大陸の中央付近にある山から極めて希少価値の高い鉱石が発見されたことがきっかけだった。

 山の立地が4つの国の国境地帯に跨っていたため、それぞれの国が鉱山開発の権利を主張した。

 限りある資源を巡って利権を争うのはどの世界でもよくある話だが、この大陸では数回の協議の決裂の果てに戦争へと発展してしまったのだ。


 この戦争を憂いた伝説の魔法使いレオナルド・ジュリアーニは、魔法で強力な結界を張りこの山を完全に封鎖した。

 結界を破って山に侵入しようと試みた国もあったが、どんな魔法や武器をもってしても結界が破られることはなかった。

 そのかわり彼は異空間に広大な大地を作った。そこにユグドラシルの樹を植えて魔物や資源を無限に生み出す仕組みを構築し、その異空間世界を「ガーデン」と名付けた。

 ガーデンの出現により様々な資源が豊富に手に入るようになったため、各国は戦争をやめてガーデンに冒険者を派遣するようになった。


 いまでもガーデンのどこかに枝葉を茂らせた大きなユグドラシルの樹があり、その傍らにそびえ立つ塔でレオナルド・ジュリアーニが暮らしていると言われている。

 ガーデンの入り口は(いさか)いの元となった山の麓にある。


 ガーデンの創設と同時に管理ギルドも設置され冒険者たちが集うようになると、さらにその周りに自然と街ができて発展していった。

 いまやこの大陸でガーデンの存在を知らない者はいない。

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