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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
最終章 忘れられない夏休み
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岸サヤカはツンデレだ。

「その檻は中に閉じ込めた者の本来の姿を暴く。彼女が異形に成り果てるのも時間の問題だ。さぁ、早く彼女の呪いを鎮めてみるんだ。」


「鎮めるって・・・やり方は!」


風間に尋ねてみたが、風間は何も言わずに私達の事を見下ろすだけだった。鎮めてみろと言われても、私が指輪の力を使えるのは光の縄ぐらいで、後は何も知らない。何が出来て何が出来ないのか、使う為に代償とする物が何なのか。そんな初歩的な事も知らないままなんだ。


「ガァァァァああァァァ!!!」


「アキ!?」


檻の中に閉じ込められたアキが苦しそうに自分の体に指を喰い込ませて自我を保とうとしている。でもこのままじゃ、アキはアキじゃなくなる。


「アキ・・・ぐく・・・もうっ! なんで何も出来ないのよ!」


【アキを助けたい】その想いを指輪に念じても、指輪は反応しなかった。想いに指輪が反応してくれるんじゃなかったの? それとも、私の想いじゃ指輪の力を引き出すには足りないの?

分からない・・・こうしている間にも、アキは自分の中にある呪いに必死になって抵抗しているのに、私は何も出来ない。


「ぐグァァぁ・・・サ、サヤカ!」


「っ!?」


「大丈夫!・・・大、ジョうブ・・・だかラ・・・! こんナ呪い私だけで、ねじ伏せてミセるから!!!」


「アキ!!!」


アキは気付いているのだろうか? 左腕に浮かんでいた呪詛が、今では顔にまで浮かんできている事に。

明らかに抑え込めていない。でも、それを私がどうこう出来る訳がない。


「・・・お願い、します・・・!」


「ん?」


「サヤカ・・・!」


抑え込めない力を持つアキ、力の使い方も分からない私。このままでは、アキは呪いに飲み込まれて、最終的に私の知っているアキがいなくなってしまう。

なら、力の使い方を熟知している風間 晶に教えを乞うしかない。今更プライドも恥ずかしさも関係ない。膝をつき、おでこが地面にめり込む程の深い土下座をした。


「お願いします・・・私に・・・アキを救う方法を教えてください・・・!」


「ヤメろサヤカ! ワタシはダイじょうブダカラ!」


「・・・そこまでして、その女を救いたいか?」


「はい・・・アキは、私の・・・私だけの大切な人なんです・・・!」


「そうか。なら忘れろ。」


「・・・え?」


予想していなかった回答に、思わず顔を上げて風間 薫を見上げた。風間 薫は顔色一つ変える事無く、私を見下している。

 

「お前は黒澤アキにとって枷でしかない。進む事も戻る事も許さず、ただ自分の傍に置きたいだけにすぎない。そんなお前が黒澤アキを救う方法は、黒澤アキの事を忘れ、枷から解放してやる事だ。」


「・・・どうやって。」


「そこから落ちろ。安心しろ、痛みは無い。二度と戻ってくる事が無い暗闇に落ちるだけだ。」


「・・・そうすればアキは、助かるの?」


「自由になる。」


「・・・そう・・・分かった。」


立ち上がり、足場の端にまで歩いていく。


「待てサヤカ! マッテクレ!!!」


後ろから必死に懇願するアキの声が聞こえてくる。さっきまで呪いに苦しんでいた声とは別の、悲痛な叫びだった。


「タノム!!! イカナイデ!!!」


もう、人が発する声じゃなくなってる。恐らく、姿も・・・。振り返りたくない。振り返れば、私の知っているアキじゃないアキを見てしまう。それが怖くて・・・悲しくて・・・許せなくて。


「・・・あーあ。あんたの所為で、私の人生ここまでか。こんな事になるなら、あんたなんか好きになるんじゃ・・・ううん、出会わない方が良かったかもね!」


だから私は嘘をつく。自分が傷つきたくないから。これ以上アキを苦しませたくないから。だから嘘をついて、何もかもリセットしたかった。

私の存在・私に対するアキの気持ち・二人の思い出。全部が消えちゃえば、きっとアキも楽になる。


「だから、アキ!」


だから、アキ。


「あんたの事、大っ嫌いになった!」


アキが好き・・・。


「・・・さよなら、アキ。」


さようなら・・・アキ。


そうして、私は闇の中に身を投げた。後悔と悲しみを抱いたまま、闇の奥底に・・・。

次で最終話です。

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