岸サヤカは懐いていないつもりでいる。
私は今サヤカを探している。というのも、ここ最近放課後になると彼女は用事があると言い、どこかへ消えていく。どこへ行ってるの?と聞くと、「秘密。」と言ってスタコラサッサとどこかへ走っていった。
日に日にサヤカの行方が気になり、悪い考えばかりが浮かんでいった。誰かからカツアゲされているとか、私に隠すほど親密な関係の相手が出来たのか。前者なら許せないし然るべき対応はする。だけど、後者の場合・・・私はどうすればいいんだろう。
モヤモヤとする想いで頭が一杯になりつつも、【追いかけないと】という使命感のようなものに背を押され、私はサヤカを探しに校内を走り回った。
しかし、校内のどこにもサヤカの姿はなかった。ならばと外に出て、校舎裏に向かってみた。なんで校舎裏に行こうと思ったのか、理由はシンプル。校舎裏というのはカツアゲスポット、もしくは告白スポットだからだ。この学校の校舎裏は窓から見えず、周囲は木々で囲まれている為、隠れて何かをするというのに適した場所になっている。
校舎裏に行くと、そこには誰もいなかった。サヤカがカツアゲされていない事にホッとしたが、ますます彼女がどこに消えたのか分からなくなってしまった。
サヤカの行方について考え込んでいると、茂みの中からガサゴソと何かが動いた音が聴こえた。
「誰だ!」
突然の物音に、咄嗟に怒号を飛ばしてしまった。すると、茂みからバッと姿を現した人物がいた。その人物は、サヤカであった。
「サヤカ?」
「・・・アキ?」
「サヤカ、そんなとこで何やってんの?」
「え?そ、それは~・・・」
サヤカは何か隠している。言葉にせずとも、彼女の顔がそう言い表していた。すると、茂みの中から猫が飛び出し、私の足元に近づいてきた。
「猫?」
「あー、バレちゃった・・・実はね、その子がここに住んでいるのを最近見つけて、よく遊びに来てるの。」
「なんで秘密に?」
「あんたに言えばみんなに広まりそうだし、私じゃない誰かに懐くかもしれない。私が最初にこの子を見つけたのに、最初に懐くのが私じゃないなんて嫌じゃない。」
そう言ってサヤカは茂みから出て、手を広げて猫を自分に呼ぼうとする。しかし、猫はサヤカの方など一切見ず、私の足に頭をこすりつけながら可愛らしい鳴き声を発した。
サヤカが私に隠れて会っていたのはヤンキーでも恋人でもなく、猫であった。猫・・・猫かー・・・まぁ、猫ならいいか。
「私の考えすぎだったな・・・。」
「え?なにがよ?」
「つまらない事だよ。サヤカ、この猫の名前って何?」
「あ、そういえばまだ付けてなかった。」
座り込んで猫を膝の上に置いて頭を撫でると、猫は私が撫でる手に頭を押し付け、気持ちよさそうな表情を浮かべていた。
「なんかサヤカみたいだね、この子。私の手に頭を押し付けてくるなんて。」
「全然似てないでしょ?私があんたにデレデレするなんて、そんなのあり得ないわよ。」
「え?でもこの前、というか最近も私が撫でてあげたら頭を押し付けて、幸せそうな顔してたじゃん。」
「してない!してないから!」
「も~、素直じゃないな~。この子みたいに素直になってくれたら、もっと撫でてあげるのに。」
膝の上で寝転がる猫の頭やお腹を撫で回し、ふとサヤカの方を見ると、サヤカは歯を噛み締めながら嫉妬の眼差しを向けていた。その眼差しを向けているのが私なのか、この猫なのか分からない。
すると、サヤカは私の前に座り込み、私の膝の上から猫を引き離して自分の膝の上に乗せた。
「あ、ちょっとそんな強引に引き離すなんてさー。」
「あんたの撫で方は雑なのよ。見てなさい、撫でる時はこんな感じで優しく―――」
サヤカが猫を撫でようとした瞬間、猫はサヤカの膝の上から離れ、そしてすぐに私の膝の上に戻ってきた。
「なっ!?」
「おーよしよし。お前は私がいいのか?」
「わ、私が最初に見つけたのに・・・。」
「そう落ち込まないでよサヤカ。頭撫でてあげようか?」
「っ!?私はあんたなんかに懐かないわよ!?絶ッッッ対にね!?」
サヤカは私のおでこにデコピンをし、逃げるようにこの場から走り出していった。
その後10分程猫を撫でた後、校門前に行くとそこでサヤカが壁に寄りかかって私を待っていた。サヤカは私の姿を見るや否や背を向けたが、私が隣に来るまでその場に立ち止まっていた。
「待っててくれたの?」
「別に!ほら、帰るわよ!」
岸サヤカ
・犬か猫かと言われると猫。
黒澤アキ
・犬か猫かと言われると犬。




