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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
最終章 忘れられない夏休み
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運命を覆す

アキ視点になります。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」


「きゃっ!? ど、どうしたのよ!?」


「はぁ、はぁ、はぁ・・・サヤカ?」


「ほんとに大丈夫? まぁ、無理もないわね。水の中に落ちたと思ったら地上にいるなんて・・・ほんと、訳分かんないわ。」


「落ちた・・・って事は、さっきのは夢・・・なのか?」


夢と言うにはあまりにも現実感がある。これから起こる惨状を体験したかのような・・・信じ難いけど、もうこれで三度目。

私はこれから起こる惨状を予知する夢を見れるんだ。


「となれば、すぐにあの人魚が来る・・・!」


「人魚?」


「サヤカ! 逃げるぞ!」


「きゃっ!」


サヤカを肩に担ぎ、走り出した。ここには身を隠せるような木も岩も無いし、元の世界に戻ろうにも空まで飛び上がる術が無い。今出来る事と言えば、これから現れる人魚から出来るだけ距離を離す事くらいだ。


「アキ! 一体どうしたの!?」


「サヤカ! 今から空にデカい人魚が現れる! そいつは無数の光の弾で襲い、こっちの攻撃は全部防がれる! まともに戦ったら私が見た夢のように二人共殺される!」


「仮にあんたが見た夢が現実に起こるとして、これからどうするのよ!?」


「私はこのまま走り続ける! その間にサヤカは人魚を祓う方法を考えてくれ!」 


その時、私の背骨を沿うように悪寒が走った。


「来る・・・!」


スピードを落とさず走り続けながら、顔を後ろに振り返って空を見た。するとそこには、夢の中で見た巨大な人魚が空を悠々と泳ぎ回っていた。


「あれがアキが見た人魚!?」


「そうだよ! あれを祓う方法思いついた!?」


「余計に分からなくなったわ!」


「そうか! その調子で考えといてくれ!」


とは言うものの、このままじゃ光弾の雨でやられる。事前に走っていたお陰である程度の距離は稼げたけど、あの巨体と優雅に空を泳ぎ回る軽やかさですぐに頭上に来られる。

となれば頼るのは左腕の呪いの力だ。でもただ攻撃するだけでは人魚に防がれる。おまけに夢で見た私は怒りに飲まれて力を使い過ぎ、身を滅ぼした。

この呪いの力を使うには怒りや悲しみといった負の感情が必要みたいだけど、呪いの力は私を簡単に飲み込んで、正気を失わせる。だから使う時は正気を失う事無く、冷静に感情を爆発させなければならない。

それから使い道も考えないと。夢で使っていたビームは強力だけど、あの人魚相手には無力だ。だからアサが使っていたような別空間に逃げ込める力を発動したい・・・でも、どうやったらあの力を使えるんだ?


「アキ! 撃ってきたよ!」


「チッ!? 考える暇もくれねぇな!」


いちいち後ろを振り返って光弾を確認する余裕は無い。その為、予感と身体能力を頼りに避けていく。

呪詛が左腕に浮き出た時から感じていたけど、格段と体の動きが上がっている。それだけじゃなく、嗅覚や視覚といった五感が研ぎ澄まされている。だからか、予想よりも攻撃を避ける事は難しくなかった。 

しかし、いつまでも避け続ける事は出来そうにも無い。勘が外れたり、判断ミスをしようものなら一発でアウト。おまけに人一人を担いでいるから、気を抜けばバランスを崩して転んでしまう。


「サヤカ! しっかりしがみついていてね!」


「言われなくても!・・・ねぇ! アキの攻撃は本当に全部防がれるの!? 」


「ああ! 夢の中だけど、全力で放ったビームがバリアで防がれてた! だから他の方法を考えないと!」


「それって地上から撃ってたの?」


「羽が生えてないからな!」


「それじゃあゼロ距離からは? バリアが張れない程、近くから撃ったら勝てる?」


「・・・分からない・・・でも良い案だ! 問題はどうやってあいつの近くに行くかだ! 私もサヤカも転移術を自由に使えないだろ!」


「でもアキは一度使ってみせたじゃない! あの時の感覚を思い出してみて!」


「思い出すって言ったって、あの時は私も・・・分かった、やってみるよ!」


そうだ、出来ないと決めつけていたら何も変わらない。それにいつだったかルーさんが言っていた。祓い士の術を使うには想像力が必要だと。私の呪いの力も祓い士と似たようなものだから、多分応用出来るはず。


「想像・・・あの人魚の近く・・・背に・・・!」


人魚の背中に立つ自分・そこから見える景色を想像しながら、左手を前に伸ばす。


「また光弾が来る! アキ!!!」


「・・・・・・見えた!」


すると、目の前に黒い靄が出現し、私は迷いなくその靄の中へ飛び入った。靄を通り過ぎると、いつの間にか私は想像していた通り、人魚の背に乗っていた。


「転移出来た! サヤカ、ちょっとだけ空で待ってて!」 


「えっ!? きゃあぁぁぁぁぁ!!!」


サヤカを空に投げ飛ばし、人魚の背中に左手を当てて、今まで抑えていた怒りの感情を解放した。


「防げるものなら防いでみろ!!!」


左腕の呪詛が蠢き、私の怒りをエネルギーとして左手からビームが放たれた。ビームは人魚の体を貫き、悲痛な断末魔を上げながら人魚は地上へと落下し始める。

私は空中に放り投げたサヤカを回収する為に、人魚の頭を踏み台にして空へ飛び上がった。


「サヤカは!?」


地上に背を向けて落下しながらサヤカの行方を探す。すると、丁度私の真上の位置に青い光が見え、それがサヤカの指輪の光だと瞬時に理解した。


「サヤカー! 飛び込んで来ーい!」


「それよりあんたがこっちに来なさいよ!!!」


サヤカの指輪から伸びてきた光の縄が私の体に巻き付き、私の体は上空にいるサヤカの方へと引き寄せられた。

急接近してきたサヤカを抱きしめ、今度は黄金の大樹の入り口前を想像して、私達が落下する先に靄を出現させる。

靄を抜けると私の背中は地面に激突したが、想像通り黄金の大樹の入り口部分である穴の前に転移した。


「痛たた・・・上手くいったみたいだね。サヤカ、大丈―――あべぇ!?」


いきなり頬を殴られた。しかもサヤカはまだ私を殴ろうとしている様子だ。


「待った待った! ごめんって! 私の攻撃で巻き込まない為だったんだって!」


「分かってるわよ。私の為でしょ?」


「そうそう!」


「でもそれはそれ。これは、これよ!!!」


「うぼぁ!? い、痛うぼぉ!? タイムタぐぅあ!? 謝るからぁぁぁぁぁ!!!」


サヤカの言葉のお陰で、夢で見た惨状を覆す事が出来た。勝ったらサヤカからご褒美のキスでも貰えるのかと期待してたけど、実際サヤカがくれたのは怒りが籠った拳だった。

でもまぁ・・・サヤカが生きているからいいか!

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