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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
最終章 忘れられない夏休み
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呪いの力

アキと再会し、私達は改めて黄金の大樹へ向かった・・・向かったのだけれど・・・。


「はぁはぁ・・・! 全ッ然辿り着けねぇぇぇぇ!!!」


「やっぱりあそこに辿り着けないわ・・・一体どうなってるのよ・・・。」


後ろを振り向くと、地面に残った私達の足跡が目に見えない程遠くまで続いている。景色が変わらない所為でどれくらいの時間が流れたのか分からないけど、1時間は絶対超えてるわね。


「なぁサヤカ、他にルーさんから何か聞いてないのか?」


「無いわよ。この指輪であの大樹を祓えってしか言われてない。」


「相変わらず説明が足りない人だ・・・そうだサヤカ! その指輪で何か出来ないか?」


「何か出来ないかって・・・。」


この馬鹿は無理難題を言う。そう思いつつも、とりあえず大樹の方へ右手を向けてみた。しかし指輪の宝玉は光らず、何も起きない。


「駄目ね、やっぱり何も起きないわ。」


「よし、貸してみ! ここは先に指輪を使った事がある先輩の私がお手本をだね!」


そう言って、アキは私の中指から指輪を外し、自身の中指に着けた。なんだか結婚式の指輪交換みたいで嬉しかった。


「見てろよサヤカー! 転移!」





「あれ?」


「はぁ・・・あんたはルーさんに手術してもらって指輪が使えなくなったでしょ?」


「あ、そっか。それじゃあ、はい。」


「・・・結局私がやるんじゃない。」


返してもらった指輪を再び中指に着け、もう一度大樹の方へ向けてみた。今度は大樹の近くに転移出来るように、雑念を捨てて大樹にだけ集中する。


「・・・。」


「おー、結構集中出来てるね。頑張れー!」


「うるさい・・・。」


「ごめん・・・ん?・・・んん!?」


「・・・。」


「サ、サヤカ! ねぇサヤカ!」


「・・・っ!」


「ねぇねぇねぇ! 一旦こっち見てよ!」


「だぁぁぁ!!! うるっさいわね! こっちは今集中して―――」


集中力を削いでくるアキに怒号を放とうと視線を向けると、そこには額から汗を流しながら困惑しているアキ・・・そして、アキの目の前に突如として現れた黒い靄。

よく見ると、呪詛が浮かんでいるアキの左腕は紫に妖しく光っており、呪詛の文字が生きた虫のように蠢いているように見えた。


「どうやったのよ・・・。」


「分かんない。なんとなく左手を前に出したら・・・。」


「えぇ・・・あんたの左腕、おかしな力が宿ってるのね。」


「呪いの力か・・・これ、どうなってるんだろう?」


アキは足元にあった小石を拾い、出現した黒い靄に放り投げた。すると、投げられた小石は黒い靄の中に入っていき、反対側に出る事は無かった。


「どこかに繋がってる?」


「転移術みたいなものか。なぁ、入ってみないか?」


「はぁ? どこに繋がってるか分からないし、中がどうなってるのかすら分からないのよ?」


「ここで立ち止まってるよりは、可能性がある方に進んだ方がいいだろ。私は行くよ。」


確かに、ここで立ち止まっていても、また歩き出しても大樹の下には辿り着かないだろう。でもだからといって、何も分からない場所に足を踏み入れるのもリスクがある。

どうしよう・・・一応こっちにはある程度の事が出来る指輪があるし、アキもいる。藍丹山で見た化け物が現れない限りは、何とかなるかも?


「・・・分かった、行きましょう。ただ、危険な存在がいたらすぐにこっちに戻るわよ。いい?」


「オッケ―。それじゃあ、行こうか!」


満面の笑みを浮かべたアキの手を掴み、私達は黒い靄の中へと飛び込んだ。飛び込んだ先で着地しようとしたけど、地面に着地した感覚は無く、宇宙空間のような無重力に放り出されたような感覚に陥った。


「うぉ!? なんだなんだ!? 落ちてるのか!? 浮かんでるのか!?」


「アキ! 手を放さないで!」


「言われなくてもガッチリ掴んでる!」


「このままじゃどうにも・・・アキ! 左手を伸ばして!」


「伸ばしてどうする!」


「さっきまで見てた黄金の大樹を思い浮かべるのよ! 私の考えが当たってれば、大樹の近くに転移出来るはずよ!」


「分かった、やってみる・・・!」


しばらく無音の時が流れた。すると、私達の先で眩い光が見え、そこから黄金の粒子がこの空間に流れ込んできた。


「当たった! 指輪!」


私は眩く光るあの場所へと進めるように指輪に想いを込めた。指輪は私の想いに応え、宝玉から青い光の線が伸びていき、私達は眩く光る場所へと引っ張られていった。

黒い靄の中から出るや否や、私達は地面に転がり落ちていき、石の壁のような硬い物が背中にぶつかった。


「痛っ・・・大丈夫か、サヤカ?」


「痛いぃぃ・・・二度とあそこには入らないわよ。絶対に!」


「ごめんって・・・でも、辿り着いたよ。」


「え?・・・うわぁ・・・。」


背中から感じる痛みを抑えながら振り向くと、そこには黄金に輝く木目の壁があり、それは遥か頭上にまで伸びていた。


「ようやくだ。ようやく来れた。」


「ええ・・・黄金の大樹。」


自身の体と似た金色の粒子を周囲に振り撒き、その強大な存在感で小さな体の私達を見下ろす。災いの根源、黄金の大樹が私達の視界を埋め尽くしていた。

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