抜け殻に想いを詰めて
「さて、それじゃあサヤカ・・・あれ何?」
そう言ってアキが指差したのは黄金の大樹。いやまぁ、そりゃそうか。
「私も詳しくは分かんないけど、あれの所為でここの島の木々や海、それに生き物まで枯れ果てちゃったの。」
「つまりヤバい樹って事か。」
「一言で言うならそうね・・・って、サヤカ! あんた大丈夫なの!?」
「うぇ!? 急に何だよ!」
「だって! あの樹から降り注いでいる粒子に触れると例外なく枯れるみたいだし!」
「え? でも、私は何てことないよ?」
言われてみると、アキの体に異常があるようには見えない。私の場合はルーさんから譲ってもらった指輪が守ってくれているけど、アキには身を守ってくれる指輪は無い。じゃあどうしてアキの体には何の異変もないんだろう?
そう考えていると、指輪が青く光り出し、その光はアキの体を照らし出した。
「うぉ眩し!?」
「な、何よ急に光り出して!?」
「使い方が分からないのに着けてるの!?」
「うるっさいわね! 半ば強引だったから仕方ない・・・じゃない・・・っ!?」
「なんだよ・・・はぁ?」
私はおろか、アキ自身も驚いた。指輪の青い光はただアキを照らしただけではなかった。多分だけど、この光は隠れた物を可視化する力があったんだと思う。
その証拠に、さっきまで異常が無かったアキの左腕に、呪詛のような文字が羅列されていた。書かれていた文字は日本語に酷似しているけど、何一つとして読む事も理解出来る文字も無かった。
「何よ、それ・・・!」
「・・・あー、そうか。そういう事か。」
困惑する私とは裏腹に、アキは何かを悟ったように空を見上げた。
「この左腕に羅列した呪詛、これは人魚の呪いだよ。」
「人魚の呪いって・・・あのね、アキ! ルーさんが言ってたけど、この島には人魚は存在しないの。だから、それはまた別の何かなのよ!」
「いや、自分の身に起こってから分かったよ・・・サヤカ、どうやら私は死んだみたい。」
「・・・は?」
何を突拍子の無い事を・・・アキが、死んだ? でも、実際に私の前にアキはいる。こうして生きている。それなのに死んでるって・・・。
「アサが体から魂が抜けても生きていたように、私もサヤカに対する想いがこの体を動かしているんだ。」
「痛みとかは感じないの・・・?」
「全然。むしろ、余計な物が無くなっていい気分って感じだ。」
「そう?」
「ああ。それに私にとっては二度目の死なんだし、今更慌てるような事じゃないでしょ?」
「いや、慌てる事よ。普通一回だけなのよ。」
「まあまあ! あんまり気にしないで! こうして私はサヤカに触れられるし、何の問題無し!」
アキはVサインをしながら満面の笑みを見せてきた。正直問題はありまくるんだけど、まぁ今のところは問題無さそうだし、本人が気にしてないなら私も気にする事は無いか。
「それで、これからどうする? 海の水が無くなったから、歩いて帰ろうと思えば帰れるけど。」
「ルーさんはアキに会った後、あの黄金の大樹を祓えって言ってたけど。」
「え、あの馬鹿デカい樹を?」
「そう。あの馬鹿デカい樹をね。」
「祓えって言ったって、私もサヤカも指輪の力を扱いきれないのに、あんなのを祓えるのかな?」
「分かんない・・・でも、ルーさんが最期に私達に託してくれた。それに報いないと。」
「そっか・・・よし! 為せば成る! 当たって砕けろの精神だ! 行こう、サヤカ!」
「砕けちゃ駄目でしょ? 全く。」
ルーさんが私達を信じて託してくれた事に報いたいとは思っている。でもあの大樹を私達で祓える自信が無い。指輪の力を扱いきれてないし、そもそも祓うにはどうすればいいかも分からない。
でも、どうにかなる気がする。そう思わせてくれる存在が、私の前に立って、私に手を差し伸べてくれてるんだから!




