バッドエンド
「私達の所為って・・・。」
「この島は私ら祓い士が監視していた一つだったんだ。その理由がこの島の呪いだ。」
「人魚の呪いの事ですか?」
「人魚か、それはこの島の住民に聞いたのか? それともネットのデマカセか? この島には人魚なんて存在はいない。あるのは蔓延し続ける呪いだけだ!」
徐々に声色を強めながら詰め寄ってくるルーさん。普段の温厚な彼女の変わりように、私は怖気づいていた。
「呪いの解除方法を模索していたのに・・・君達が勝手に動いた所為で呪いが発生して、人から人へと呪いが広がり始めている。もう何十人、何百人もの人達が自害で命を落とす事件が多発しているんだ。」
「・・・私達の所為で?」
「そうだ! あ、いや・・・すまない、言い過ぎたよ。君達は知らなかったんだろう? この島の呪いの事を。」
「知らなかった・・・でも、知らなかったじゃ済まされないよ・・・。」
信じたくなかった・・・何も調べずに私達がこの島に来た所為で、大勢の人の命を奪ってしまっただなんて・・・。こんな事になってしまうのが分かっていれば、こんな島なんて来なかったのに・・・あれ? でもおかしい。
私達が呪いを知らなかったのは分かる。でも、この島に最初からいたはずのアサまで知らなかったの? アサが話してくれた呪いの話は人魚が由来の物。でもルーさんの言う通りなら、アサが言っていた事が間違いだという事になる。
最初から私達を騙す為に嘘を・・・いや、それはあり得ない。別人だとしても、アサはアキと同一人物と思える程分かり易い人だ。アサが人魚の呪いと祝福の話をしていた時、嘘をついていた様子はなかった。
「・・・アサも知らなかった?」
「アサ? アサって、誰?」
「アキに凄く似た島の住民です。その人からこの島の呪いについて教えてもらったんですけど、呪いには人魚が存在していると言ってたんです。」
「・・・もう一度言うけど、この島には人魚はいない。そのアサって子が嘘をついた可能性は?」
「ありません。性格もアキにそっくりだったので、嘘をついているかどうかは私には分かります。」
「・・・何かおかしい。そもそも、ここの島には誰もいないんだ。住人だった島の人達は老人を除いてみんな死んでいる。確認もされている事だ。だから、アキちゃんと同じくらいの若い人の生き残りがいる事すらあり得ないんだ。」
ルーさんは腕を組みながら俯き、何か考え事をし始めた。私としては早くアキを探しに行きたいのだが、ルーさんが導き出す何かが必要だとも思っていた。
その時、私の体が氷漬けにされたかのような寒気に襲われた。さっきまで感じていた夏の暑さなど忘れ果てる程、まるで突然冬に季節が変わったかのように。
この寒気の原因はすぐに分かった。それは私が後ろの島の方に振り返った時に判明した。
「・・・何、あれ・・・。」
島全体を覆っていたバリアをすり抜け、黄金の粒子を纏った風が外に出てきていた。
「バリアが効いていない!? いや・・・そうか、そういう事か! くそっ! 利用された!」
酷く焦った様子でルーさんは島を覆っていたバリアを解除し、私を抱き寄せた。
「一旦ここを離れる!深く息を吸ってそのままでいて!」
「でもアキが―――」
「いいから!!!・・・吸ったね!?それじゃあ行くよ!結界術!」
ルーさんがそう唱えると、私達の足元に円形の魔法陣が現れ、そこから発した眩い光が私達を飲み込んだ。
真っ白、目には白以外の色が存在していない。目を開けても閉じても、それは変わる事はなかった。
やがて目が慣れたのか、徐々に目の前にいるルーさんの姿が見え始め、大量の汗を流して蒼白になったルーさんが、私を心配そうに見つめていた。
「サヤカちゃん・・・私が、見える・・・?」
「・・・はい。」
「良かった・・・久しぶりに使っても、案外腕は、落ちて―――」
言い終える前に、ルーさんは私に倒れ掛かってきた。そのまま押し倒されそうになるのを必死に堪え、ゆっくりと横にさせる。ルーさんの左胸に耳を当て、微かに聴こえる鼓動にホッとし、私は改めて周囲の様子を見てみた。
「・・・何も、無い。」
私達がいるこの場所には、色も風景も無い。どこを見ても白しかない為か、この場所が広いのか狭いのか、下に地面があるのか無いのか、何も把握出来なかった。
「・・・アキ。」
今いる場所も、何が起きたのかも分からない中、後悔と喪失感だけが私の中を埋め尽くしていた。
自分が何も知らなかった所為で、またアキを危険に晒してしまい、そして今度こそアキを失ってしまった。
もう立っている事も、座る気力すら無く、私の体は力無く倒れ込んでいく。出来る事があるとすれば呼吸を続ける事だけ。他の事は出来ない・・・やろうとも思えなかった。
「・・・もう・・・どうでもいいや・・・アキがいないなら・・・もう・・・。」




