自分との闘い
予約投稿日時を間違えてました。すみません。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・夕陽が沈んでいく海ってのも、綺麗なものだな。」
「・・・そうだな。」
「「・・・。」」
自分と同じ姿をした奴と並んで立って海を眺めている。不思議な感じだ、自分がもう一人いるなんて。
それにてっきりあの島の中にしかいられない精霊的なものかと思っていたけど、普通に外に出れるし。
「・・・それで、お前はなんでこの島に来たんだ。」
「私? まぁ、遊びにかな・・・。」
「遊びにこんな何も無い島に来るのか?」
「まぁ、暇だし・・・じゃあ、お前はどうなんだ? なんであんな暗い場所にいたんだ?」
「僕は・・・待ってたんだ。ずっと・・・。」
「待ってたって、何をだ?」
「・・・大切な人を。」
そう言ったコイツの目は、海のその先を見つめているようだった。謎の多い奴だ。
「一人でここに来たのか?」
「いや、もう一人いる。ほら、あの家に。」
「・・・勝手に島に家作るなよ。」
「お前は知らないかもしれないが、この島の所有権はあの家の中で眠っているお嬢さんの親が持ってる。だから、家を建てようが遊園地作ろうが、文句を言われる筋合いは無ぇ。」
ほんとにあの島の中から外に出てこなかったのか。ずっとあの島の中で一人で・・・そうだ、あの本の事を聞いてみるか。多分コイツなら何か知っているかもしれない。
「なぁ、この本について知ってるか?」
「ん?・・・あー、この島の伝承か。」
「これって何なんだ? ボロくて読めないし、唯一分かったのがあの果実だけだったんだ。」
「・・・部外者には、知る必要はない。」
「ケチ臭い奴だ。同じ姿をしてるっていうのにさ。」
「同じ姿でも名前でも、僕とお前は違う。」
同じ姿をしてるってのに、随分私の事を嫌ってるな。まぁ、私もコイツの事は気に入らない。言い方や態度もそうだが、何より私の顔で暗い表情を浮かべているのが嫌いだ。
「ちっ・・・それじゃあ、人魚についてはどうだ?」
「言う訳ないだろ。」
「ははーん。っていう事は、人魚はいるって事だな?」
「・・・。」
「簡単に引っかかって、お前案外馬鹿だな・・・うわ、なんか自分に言ってるようでなんか嫌だな。ごめん。」
「・・・人魚を見つけて、どうするんだ?」
お、あっちから興味を示してきたな。ここで上手く聞き出す事が出来れば、この島から早い内に
撤収する事が出来る。一刻も早くコイツから離れていたいしな。
「別に取って食う訳じゃない。ただこの島に人魚がいる事だけを確認したいんだ。」
「その後の事を言ってるんだ!」
「その後って言ったって・・・私らは―――」
「あいつを危険に晒すのは許さないぞ!!!」
「ぐぁっ!?」
コイツ・・・突き飛ばしやがった・・・!
「ぐっ・・・! お前、いきなり何しやがる!」
「知ってる事があるなら教えろ!誰がお前らをここに連れてきた!何が目的だ!答えろ!」
「がぁっ!?」
馬乗りになって何度も殴りかかってくるとか、コイツ、頭のネジが吹っ飛んでやがる・・・やばい、コイツ結構強いわ・・・。
「が・・・ぁ・・・!」
「強情か、それとも本当に知らないのか・・・まぁいい。お前が何も知らないなら、お前のお友達に聞くまでだ!」
そう言って、アイツは家に向かっていった。まずい、家の中にはまだ寝ているサヤカがいる。起きてたとしても、姿が私と同じだからサヤカは何の警戒もしない。私のように腕っぷしが強い訳ではないし、頑丈な訳でもないサヤカをアイツが襲ったら、最悪殺される・・・!
「行かせるかぁぁぁ!!!」
「なっ!?」
「くっ!・・・ぐぉ!?」
背後から殴りかかったってのに、アイツはそれを避けて、更に私の腹部に膝蹴りを喰らわせやがった。
マジで強い。しばらく喧嘩していなかった所為で私の判断も鈍ってる・・・勝てそうにない。
だがここでコイツを見逃せば、サヤカが危険に晒される。例え勝てなくても、コイツの身動きを封じるくらいの事は今の私でも出来るはずだ!
「ぐ、ぐぁぁぁ!!!」
タックルを仕掛けて押し倒す事が出来たが、すぐに体を密着させられて反転されてしまった。また上を取られ、素早く顔をガードしようと顔の前に両腕を構えたが、がら空きになってしまったボディに一発入れられ、ガードを緩めてしまった。
その隙を見逃す程甘くないコイツは、緩んだガードの隙間から私の顔面に肘を振り下ろしてきた。
「んぐぇっ・・・!?」
「お前は殺すつもりは無いらしいが、僕は躊躇いなんて無い!抵抗する意思があるなら、このまま殺す!」
ボヤけた視界に振り上げた拳を振り下ろそうとするアイツの姿が見えた。コイツの言葉が本当なら、コイツはこの一発に全身全霊を込める。つまり、これを避ければ隙が出る。
「死ねぇぇぇ!!!」
(ここだ!!!)
全身全霊で振り下ろされた拳を避け、コイツの首に腕を回して絞め上げた。
「ぐぅぅぅ・・・!?」
「ぐぁぁぁ!!!おちろぉぉぉ!!!」
左の拳で脇腹を殴って抵抗してくるが、この体勢ではろくに力を入れられないし、右腕も私の背に回しているから動かせない。
あとはこのまま絞め上げていけば、いずれコイツは意識を落す!
「は、離せ・・・!」
「うるせぇ!さっさとおちろぉぉぉ!!!」
「あんたら何やってんのよ!!!」
「「っ!?サヤカ!?」」
サヤカが私達の騒ぎを聞きつけて起きてきていた。サヤカの姿を見て一瞬気が緩んでしまい、コイツの首を絞める力も緩めてしまい離れてしまった。
(まずい、やられる!)
と思っていたが、何故かアイツはサヤカの姿を見たまま固まっていた。そういえばコイツ、さっきサヤカの姿を見て、サヤカの名前を叫んでいた気がする。
「え・・・なんで、アキが二人いるのよ・・・。」
「サヤカ、なのか?・・・サヤカ!」
「え?うひゃぁ!?」
アイツは私の上から飛び出して、サヤカに抱き着いた。
「・・・は?」
岸サヤカ
・アキに対して人を殴る事を禁止にしたが、自分は構わずアキの事を殴っている。
黒澤アキ
・中学に上がってからサヤカに喧嘩を禁止にされ、それ以来人を本気で殴る事が無かった。
アキ
・腕っぷしの強さは黒澤アキ以上。




