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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
聖恋島
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聖恋島の伝承

第五章


夏休みに入ったアキとサヤカは、サヤカの両親が買い取った島に遊びに行く事になった。しかし、ただ遊びに行くだけでなく、その島には人魚が現れると噂されており、両親からの依頼で、本当に人魚がいるかどうかを確かめる為でもあった。

にわかに信じ難い話であったが、二人は誰もいないその島で一ヶ月過ごす事になり、そこで今までよりも充実とした生活を送っていた。

島での生活に慣れてきた頃、サヤカが島の中で奇妙な物を見たと言い、アキとサヤカは島の奥底に調査に向かうと、そこには白い果実が一つだけ実った木が生えてあった。

海沿いにあるバス停に降り、島に行く為の船がある場所へと歩いていった。最初こそバタバタとしていたが、ここでようやく落ち着いて話ができる。久しぶりに見る海は記憶にあるものよりも綺麗で、太陽の輝きを海面に帯びていた。


「海なんて久しぶりに見たな。天気も良いし、泳ぎたいくらいだ。」


「羨ましいわ、私は全く泳げないから。」


「最初こそ怖いけど、慣れたら目が沁みるくらいさ。あっちに着いたら教えてあげようか?」


「いい機会だし、教えてもらおうかしら?よろしくね、アキ先生。」


アキ先生・・・アキ先生か・・・いいね。これは久しぶりに私が優位に立てるんじゃないか?もし優位に立てたなら、サヤカからの積極的な攻めの姿勢を抑制出来るかもしれない。正直、毎日のように迫られたんじゃ、私の身も心も持たない。


「あら?あれかしら、ほらあの船。」


「え?」


サヤカが指差す方には一隻の小さな船が既に出発の準備を終えていた。船には【聖恋島行き】という紙が貼られてある。

サヤカから島の名前をバスの中で聞いていたが、ああいう漢字なのか。色々と不気味や噂があるというのに、島の名前は結構恋愛映画の舞台みたいだな。


「すみませーん!お願いしていた黒澤アキと岸サヤカですけどもー!」


船に乗っていた老人に声を掛けると、老人はニコッと笑い、手を差し伸べてきた。私はその手を掴んで船に乗り、その後すぐにサヤカを船の上に引き上げた。


「よっと・・・それじゃあ、今日はよろしくお願いします。」


「・・・!」


老人はまたニコッと笑いながら小さく頷くと、船の操縦席に移動していった。すると、船は動き出し、私達は目的地である聖恋島に向かっていく。

船の上というのは予想よりも揺れるものだ。私は酔いに強い方だが、これは流石の私も堪える。


「結構揺れるね、サヤ・・・カ・・・。」


「うっ・・・!」


サヤカが早くもノックアウト寸前になっていた。私は座れそうな場所にサヤカを座らせ、持ってきていた酔い止め薬と水を手渡す。しまったな、乗る前に飲ませておくべきだった。まさかここまでサヤカが酔いやすいのだとは。





「う、ふぅ・・・大分、平気になってきたわ・・・。」


「大丈夫?」


「・・・ごめん、嘘ついた。やっぱりまだツラい・・・。」


「あー・・・えーっと、どうしようか。」


「・・・それじゃあ。」


サヤカが横から私の体を抱きしめてきた。まるで小さな子が大きなぬいぐるみを抱きしめるように、目一杯に力を入れて。

これで酔いが収まるのだろうか・・・まぁ、サヤカがこうしたいなら受け入れよう。


「あとどれくらい掛かるんだろう?」


「分からないけど、多分まだまだ掛かるわよ・・・聖恋島は地図にも載っていない島なのよ?」


「それにしても・・・聖恋島って、一体どういう島なんだろうな?おかしな噂ばかりで、私達は島について何も分からない。」


すると、操縦室にいた老人が一冊の本を手にして私達の前に歩いてきた。老人は持っていた本を私に手渡すと、またニコッと笑い、そして一言も発さぬまま操縦室に戻っていった。なんだか不思議な人だな。

渡された本を見ると、本は酷くボロボロだ。本を開くと、中もボロボロで何か書かれてあるが、読める場所が少なく、断片的な部分しか分からないが、こう書いてある。


『ある少女  恋を   島の人達は彼女達を   海に還る。』


文字が書かれてあるのは最初の一ページ目だけで、それから先には絵が描かれてある。しかしやはり、ボロボロでどういう絵なのか分からない。

ペラペラとページを進めていくと、ある一ページに描いてある絵だけが綺麗に残されてあった。   

その絵は、何かの果物だろうか?形状だけ見ると果物に見えるが、こんな果物は見た事も無い。


「これ、果物?」


「イチゴ?トマト?なんだか分からないけど、仮想の絵なんじゃないの?」


「そうかもだけど・・・。」


「何よ?何か気になるの?」


「いや・・・なんでこの絵だけ綺麗に残ってるんだろうなーって思って。他のはまともに見れない程ボロボロになっているのに。」


「気にし過ぎよ・・・それより、少し体を反対に倒して。もっと楽な体勢になりたい。」


「私は椅子かよ。はい喜んで。」


椅子扱いされて喜んでいる私は控えめに言って頭おかしいな・・・にしても、やっぱり気になる。どうにも私にはこの本に書かれてあるものが作り話や仮想の絵には思えない。

それに、持った時から感じていたが、この本には何かの気配がする。何かは断定出来ないけど、この本がまるで生きているかのような気配がするんだ。

こういう時、ルーさんがいたらこの本の正体について教えてくれて、この悩みもすぐに晴れるんだろうけど。流石に今回は日本から離れた島、しかも地図にも載っていない場所だ。そんな場所でルーさんとバッタリ会うなんて事はないだろうな。

岸サヤカ

・海に来た事は何度もあるが、一度も海に入った事が無い。


黒澤アキ

・初めて海に入った時に溺れかけたが、すぐに何事もなかったかのように自由奔放に泳ぎ回っていた。

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