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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
四章 再出発
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岸サヤカは既に予定済みである。

今日は一学期の終業式。つまり、今日から一ヶ月の長い夏休みが始まった。4月からの三ヶ月の間、色々大変な出来事の続きで散々な目に遭っていたが、今はすっかり死んだ者の姿や気配を見なくなったし、何よりサヤカとの関係が進んで、晴れて恋人同士になれた。最高にハッピーという奴だ。

そんな最高にハッピーな私は、ウキウキとサヤカが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、今年の夏休みの計画を練っている。思い切って旅行にでも行こうかな?行くとしたらどこに行こうか?


「珍しく考え込んで、どうしたのよ?」


「明日から夏休みだろ?だから計画を頭の中で練っているんだよ。」


「そんなの必要ないわよ。」


「いやでもさ、計画してからの方がやり残しが少ないし―――」


「だって、明日から一ヶ月私と一緒に別荘に行くんだから。」


「あ、なーんだ!サヤカも計画立ててたんじゃん!・・・・・・え、初耳なんだけど?」


全く聞いた憶えの無い事を言われて困惑していると、サヤカは満面の笑みを浮かべて言った。


「サプラーイズ!」


サプラーイズ!じゃないんだが・・・やっぱり私とサヤカの上下関係が逆転しつつあるな。恋人関係になってからはそれが如実に表れて、今じゃサヤカの方が私の反応を楽しんでいる風に思える。

でもまぁ、旅行に行きたいとは思っていたし、丁度良かったのかな。


「ねぇ、別荘ってどこにあるの?田舎の山奥?それともサヤカの両親がいるアメリカ?」


「島よ。」


「はい?」


「無人島よ。でも安心して。食料も水も用意してるし、電気だって使えるようにしてあるんだから。」


「それは安心だっじゃなくてさ!無人島に別荘!?」


「忘れたの?私の両親は趣味や好きな物に対しては、お金を惜しまない人なのよ?」


それにしたって島を買うだなんて・・・お金持ちの考えは一生分からんな。


「相変わらず凄い人だね、サヤカの両親・・・それで?」


「ん?」


「何の意味も無く島を買ったんじゃないんだろ?その島の何に惹かれたんだ?」


「実は私達が明日行く島には伝説があってね。なんでも、大昔にその島には人魚が住んでいたらしいのよ。」


「人魚って、あの魚みたいな人間の事か?」


「そ。でも何かが原因で人魚達はいなくなって、今では誰も住んでいない無人島になったらしいのよ。まぁ、どうせ島の所有者がお金欲しさについた嘘なんだろうけど、私の親は『一ヶ月の間、好きに暮らしても良い代わりに、そこに住んで人魚が本当にいるのかどうか確かめてくれ!』って。」


「つまり調査を兼ねた旅行って訳か。」


「調査なんてしなくていいわ。適当に嘘つけばいいだけだし。それより、今日は早く寝ましょ?明日はバスや船に乗って疲れるんだから。」


「そうだね。じゃあ今日はここで寝るよ。寝坊しても起こしに行くのに楽でしょ?」


「いや、寝坊しない事を心掛けなさいよ・・・。」


その日はサヤカの部屋で一緒に眠りについた。朝5時に起きなきゃなのに、ベッドに入ってから何やかんやあって結局0時に寝てしまった。




波の音。

夕陽が海に沈む。

砂浜に私は裸足で立っている。

海の中から長い金髪の女が現れた。

そよ風が吹き、その女の顔が見えた。

その女は、サヤカだった。

私は声を出せない。

サヤカの肌に金色の鱗が浮かび上がっていく。

私の足は動かない。

沈んでいく夕陽と共に、サヤカの姿が海の中へ消えていく。

私の体は海から遠ざかっていく。

夕陽が沈んで真っ暗になった。

もうそこに、誰もいない。




「サヤカ!!!・・・あれ?」


そこはサヤカの部屋だった。隣には穏やかな表情で眠っているサヤカがいる。良かった、どうやらさっきまで見ていたのは夢だったようだ・・・にしても、妙に現実感がある夢だったな。感覚がまるで本当にその場にいるような、そんな夢だった。

私はどこかで、これと似たような夢を見た気がする。えっと・・・駄目だ、思い出せない。見た憶えはあるけど、どうしても思い出す事が出来ない。


「はぁ、夏休み初日から嫌な夢だ。これからサヤカと旅行だってのに・・・あれ、今何時?」


枕元に置いていた携帯を見ると、時刻は5時50分。予定していた出発時間は5時。バスが来る時間は6時で、ここから歩いて10分の場所にある。

つまり・・・。


「寝坊したぁぁぁぁぁ!!!起きろサヤカ!起きて!」


「う~ん・・・うぇ?アキ~?」


「起きたばかりで大変申し訳ございませんが遅刻だ!!!」


「何言ってんのよ・・・アキが寝坊するならまだしも、私が・・・うわぁぁぁ!!!遅刻だぁぁぁ!!!」


「早く行くぞぉぉぉ!!!」


それから大急ぎで準備をした。当初は島に着いてからの過ごし方なんかを話しながら、ゆっくりとバス停に向かう予定だったが、今の私達に話す余裕など無く、全速力でバス停まで走っていった。

悪い夢といい、何だか幸先不安な夏休みの始まり方になってしまった。

岸サヤカ

・生活に使うお金を計画しながらやりくりしている一人暮らしをしているが、実はお嬢様。


黒澤アキ

・両親の遺産のお陰で今の家に住めているが、もう残り少ない為、バイトをしようとした所、何故かサヤカの親から仕送りが送られてきた。

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