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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
四章 再出発
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失った記憶 得た日常

長いホラー回はここで本当に終了です。

廃病院から公園に戻ってきた頃には、もうすっかり夜になっていた。夜中の公園というのも怖いものだが、あの病院内よりはマシに思える。

今はルーさんが砂場で術の準備をしており、私とサヤカはブランコに乗ってルーさんの準備が整うのを待っていた。


「それにしても、不思議な体験だったわね。」


「そう、だったの?」


「ほんとに記憶が無いの?」


「う~ん・・・何かがあったというのは薄っすら分かるんだけど、それが何かまでは思い出せないな。」


「思い出せない方がいいかもね。私も記憶を消して欲しいくらいよ。」


私の記憶の中からルーさんやサヤカの言う暗闇の世界?とかいう記憶が無くなっていた。右胸に付けられたはずの切り傷だって、私が目を覚ました時には傷なんてものは無く、ただ少しだけの違和感があるだけだった。


「戻ったら何をする?サヤカ。」


「寝るに決まってるでしょ。」


「え~!お祝いしようよー、私の快気祝いー!」


「私もルーさんもヘトヘトなのよ・・・お祝いなら、今度にしましょ。」


「やった!それじゃあ、ルーさんも呼んで家でお祝いしよ!美味い料理に面白い映画も用意しなくちゃ。」


「はいはい。」


今からお祝いパーティーが楽しみだ。料理はサヤカが作るとして、映画はホラー・・・いや、コメディーにしておこう。記憶は無くなっているけど、もう怖いのは懲り懲りだ。


「・・・よし、出来た!」


手に付いた砂を払いながら、ルーさんが私達に手を振ってくる。どうやら準備が整ったらしい。サヤカと一緒に砂場の方へ行くと、砂場には大きな円形の魔法陣のようなものが描かれていた。


「そこの〇に一人ずつ入って。」


言われた通りに〇の部分に立つと、ルーさんは指輪を着け、右手を突き出した。指輪に嵌められていた宝玉が浮き上がり、緑色に発光すると、ダラリと下に下がった。宝玉が地面に向けられた瞬間、砂場に描かれていた魔法陣も緑色に発光し、自分の体が重力から解き放たれたような気分になった。

すると、魔法陣の中にいた私達を除いて、外の世界の時間が目で追えない程のスピードで流れていく。まるで早送りをしているみたいに。もしここで体の一部を魔法陣の外に出せばどうなるだろう?その部分だけ時間が流れてしまうんだろうか?リンゴでも持ってくればよかったな。

時間が流れてから数十秒経った辺りになると、外の時間が流れるスピードが緩やかになり、魔法陣の光も徐々に弱まってきている。ゆっくりとなる時間の流れが本来のスピードになった頃には、魔法陣の光は消え、ルーさんの指輪の宝玉からも光が消えていた。


「・・・着いた。」


ルーさんがそう呟いた瞬間、突然ルーさんは前に倒れていき、咄嗟に動いた事で何とか受け止める事が出来た。


「危な!?」


「ルーさん!?大丈夫ですか!」


「・・・少し疲れちゃっただけだよ・・・やっぱり大技は、今の私には負担が大きすぎるみたい。」


「そこまで・・・ありがとうございます。ほんとに、何から何まで。」


「いいんだよ・・・さ、帰ろ。アキちゃん、私の店までおんぶしていって。」


「おやすいごよう!サヤカも一緒に来る?」


「私は先に帰ってるわ。お風呂にも入りたいしね。それじゃあ、ルーさん。今回は本当にありがとうございました!この恩は絶対お返しします。」


「はは・・・じゃあ、アキちゃんを貰って―――」


「殺しますよ?」


「冗談冗談。こんな問題児、私じゃ手に余るよ。」


「誰が問題児じゃ、誰が。そんじゃ、私はルーさんを送ってから帰るから。またね、サヤカ。」


「うん、またね。アキ。」


サヤカに別れの挨拶を告げてから、ルーさんを背負って店に向かった。店に向かう道中で目にする家や電柱は、当然ながらさっきまでいた7年前と違っていた。

7年という時間の中で変わらない物もあれば、無くなっている物もある。気付かなかった・・・私が知らないだけで、こんなにも変化していたなんて。多分、気付けなかったのは、7年前のあの日から私が前に進めなかった所為だったんだろう。

でも、今は分かる。だって、私はようやく前に進めたんだから。ほんの少しかもしれないけれど、確かに前に。


ルーさんの店に辿り着き、店のドアを開けた。店内は電気が点いていなかったが、置かれている置物から発している明かりのお陰で不自由なく店内を進んでいける。あの置物、何で光ってるんだ?


「ルーさん、着きましたよ。」


「ありがとー・・・ここまで来たなら、裏の部屋まで運んでくれない?」


「いいですよ・・・あれ?」


ふと、カウンターの中央に目がいった。そこには何も置かれていないはずなのだが、何故かそこに何かがあった気がしてならなかったんだ。


「ルーさん、あそこに何か置いてました?」


「・・・どうして?」


「いや・・・すみません、上手く言えないんですけど、何かが置いてあった気がするんですよ。ただ、何かまでは思い出せなくて。」


「・・・何も置いてなかったよ。」


「そう、ですか。」


気のせいか?・・・なんだろう、変な気分だ。私の中で何かが抜け落ちている感じ。思い出そうとしても思い出せない・・・ただ、とても悲しい気分になる。


何か大切な物を失ったような。


思い出せない。


私は、何を失ったんだろうか?

岸サヤカ

・好きなケーキは普通のショートケーキ。イチゴ以外の果物が入っていたり飾ってあると許せない。


黒澤アキ

・好きなケーキはサヤカが作ったケーキ。


ルー・ルシアン

・好きなケーキはモンブラン。ビジュアルが気に入っているだけで、味は他のケーキの方が美味しい。

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