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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
四章 再出発
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送り歌

念願だったサヤカと手を繋いで道を歩く事に、私はウッキウキになっていた。サヤカの方も表情では私に悟られないようにしているが、私の手をしっかりと握りしめている。とっても幸せだ。こんなに幸せだと感じた事が今まであっただろうか。

だからこそ、この幸せを手放さない為にも私達にはやらなければいけない事がある。まずはルーさんと合流する事が重要だ。これからやる事に、あの人の力が必要になる・・・っていう訳で、ルーさんが待っている公園に来たんだけど・・・。


「僧侶の血に隠された 合図は 丘の上に聳え立つ あの群衆の 幻にー。」


ゆらりゆらりとブランコに乗りながら、周囲に集まっている子供達に意味の分からない歌を歌っていた。え、やだ・・・今から私達、あんな変人に声を掛けないといけないの?


「・・・どうする、サヤカ。」


「どうするって・・・会わないと、でしょ?」


「そうだけどさ・・・出来れば関わりたくないな。」


「ワガママ言わないで。私だって視界に入れたくないんだから・・・。」


私達はあの変人と話す事を決心し、重い足取りでルーさんへ近付いていった。


「こんにちわー・・・。」


「来来生霊伸びよ 瞼を 喰らい 冥冥賢者の歌よ 旋律 奏でて。」


「あの・・・ルーさん?」


「もしかして、怒ってますか?私が掴みかかったりしたから―――」


そう言いかけた所で、丁度ルーさんが歌っていた歌が終わった。すると、ルーさんの周囲に集まっていた子供達の体が光に包まれ、やがてその光は夕空へ浮かび上がっていった。浮かび上がっていく光を見送っていたルーさんは、どこか寂し気な表情だった。

今までの経験上、あの子供達が生きている人ではないと理解するのは容易であった。そして、ルーさんが子供達を成仏させてあげたというのも。


「・・・ふぅ。おかえり、二人共。」


「ルーさん、今のって。」


「うん。ここで取り残されていた子供達の霊だよ。気配を感じ取ったから、送ってあげたの。居るべき場所に。」


「でも、指輪は私が持っていったままで・・・。」


「さっきまで私が歌っていた歌。あれも祓い士の術だよ。といっても、無抵抗で弱い相手にしか使えないけどね・・・さぁ、二人が戻ってきた事だし、本題に入ろうか!」


ブランコから立ち上がり、私に手を差し出してきた。中指に着けていた指輪をルーさんに返すと、ルーさんは指輪を中指に着け、右手を突き出しながら周囲を回り始める。


「何やってるんですか?」


「場所を探してる。誰の目にもつかない場所を。二人はもう分かっていると思うけど、ここは私達がいた時間軸じゃない。」


それは私の両親の姿を見た時に、なんとなく察しはついていた。ここは私とサヤカが10歳の頃、つまり約7年程前の過去だ。


「アキちゃんの術は場所だけでなく、時間すら移動してしまった。全く、大した才能だよ。」


「行けたって事は、戻れるんですよね?」


「もちろん現代に戻る事は出来るけど、その前に君の中に棲む闇を祓っとかないと。これからの二人の邪魔にならないようにね。」


「「っ!?」」


「あはは!分かり易く反応してくれるね!私からすれば、初めて店に来た時から付き合ってると思ってたんだけどね・・・見つけた。二人共、ついて来て。」


相変わらず勘が鋭い人だ。それは置いておいて、元の時代に戻れる方法があるのはホッとした。戻る方法が無ければ、この先どうやって生活しようか不安に思っていた。


ルーさんの後に続いて辿り着いた場所は、廃墟と化した病院であった・・・え?ここに今から入るの?


「あの・・・ここに入るんですか?」


私がルーさんに尋ねようとした所、先にサヤカがルーさんに尋ねた。それに対しルーさんはニコッと笑うと、何も言わずに廃病院の中に入っていった。


「どうする、アキ?」


「・・・行こう。ルーさんが付いているから安全だろうし、大丈夫だと思う。」


とは言っても、流石に廃病院は怖いな。暗闇の世界とはまた別の怖さがある。時間的にそろそろ夜になって真っ暗になると思うし。

しかしここで立ち止まっては何も始まらないし、更に怖くなってしまう。別に私は怖くはないが、サヤカが怖がってしまう。サヤカが怖がってしまうから、手をギュッと握っておこう。サヤカが怖がらない為に。そう、サヤカが怖がらない為だ。


「・・・ビビりね。」


「ビビりじゃない!ほら、行こ!」


廃病院の中に入ると、案の定病院内は不気味な雰囲気に包まれていた。壁や床には汚れがあり、物が散乱している場所があると思えば、綺麗に整っている場所があったりと、その差がより不気味さを際立たせていた。

そして一番不気味なのは空気だ。外の暑さと反比例して涼しい空気が病院内に漂っている。


「わぁ・・・凄いや・・・。」


「怖いの?」


「怖くない。全然。これっぽっちも。怖くないから。」


「はいはい。それじゃあ進もうねー。」


「あーやだやだ!まだ心の準備がー!」


サヤカは嫌がる私を無理矢理引っ張って先に進んでいく。どうしてサヤカは平気でいられるんだろうか?それとも、私が極端に怖がりなんだろうか?暗闇に慣れたつもりでいたけど、やっぱり私はまだ、暗闇に対して恐怖を拭いきれていないのかもしれない。

サヤカに引っ張られて辿り着いた場所は手術室。扉の先から物音が聴こえてくる。多分ルーさんが準備をしているんだろう。

手術室で何の準備をしてるんだろう?と思いながら、私達は扉を開けた。


「あ、来たね。準備は出来てるよ。さ、アキちゃん。ここに横になって。」


ルーさんは私を手術台に横になるように促してきた。それだけならまだいいが、ルーさんの横には、銀色に光る何かが大量に並べられていた。


え? 私、今から何されるの?

岸サヤカ

・初デートの理想は水族館に行く事。


黒澤アキ

・初デートの理想は家で一緒に過ごす事。


ルー・ルシアン

・初デートの理想はカフェでお互いの事について知る事。

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