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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
一章 ほのぼのとした日常
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岸サヤカは面倒なつもりでいる

時刻は21時を過ぎ、私は暇を持て余していた。学校の課題も終え、買ってきていた本も全て読み終えているし、今から布団に入って眠る気分でもない。暇だ・・・やる事も無ければ、やらないといけない事も無い・・・しょうがない、今夜も訪ねるとしましょうか。

部屋の窓を開け、少し身を乗り出して隣の家の窓をコンコンと叩く。私の家の隣にはサヤカの家があり、私の部屋の窓とサヤカの部屋の窓は丁度向かい合わせになっている。

しばらく待ってみたが、窓が開く事はなかった為、私はもう一度窓を叩いてみた。すると、机の上に置いていた携帯に着信が入り、画面を見ると送り主はサヤカだった。


『今日は無理だから、話すなら電話にして。』


どういう事だ?話す事が出来ないから今日は無理なら分かるが、話す事は出来るのに無理ってのは・・・うん、直接確認しよう。

窓から身を乗り出し、サヤカの部屋の窓を開いた。


「うひゃ!?」


「よ。」


「い、いきなり窓開けないでよ!ビックリするじゃない!というか今日は無理だって言ったよね!?」


「いや~、メールの内容がさっぱりだったからさ。ていうかサヤカ、何それ?」


机の上に様々な容器や紙?が並べられており、サヤカは顔に薄く白い皮を被っていた。


「なにって・・・美容には色々手間が掛かるのよ。手間が。」


「あははは!なんかサヤカが今顔に付けているやつ、なんかの映画で見た事あるな!」


「・・・あんた、これが何か知らないの?」


「え?知らない。」


白い皮が邪魔でサヤカの表情は見えなかったが、穴が開いている部分から見えるサヤカの眼と口だけで、私に引いているのが分かった。

今のツンデレ?とかいう奴になったサヤカからよくこういう眼を向けられているが、今回のこれはいつもの馬鹿にするようなものじゃなく、私に嫉妬している風に感じた。


「昔から思ってたけど、あんたって美容に時間を使った事あるの?」


「必要ないよそんなの。美容ってのは時間が掛かるんでしょ?ならその時間で筋トレなり、映画鑑賞なり、自分の身になるような事をした方がいい。」


「美容も自分の身になる事よ!まったく・・・まぁ、分かってたけど。あんたがパックなんてした日には、真夏でもお構いなしに雪が降るでしょうね。」


「雪は嫌いだから一生やらない。」


「真に受けないでよ・・・ほら、こっちに来なさい。私が美容について教えてあげるわ。」


私はいつものように窓から窓へと飛び移り、サヤカの部屋にお邪魔する。サヤカの部屋は私とは違ってとても女の子らしい部屋で、棚や机の上には動物の人形が飾られている。そして極めつけは香りだ。いつ来ても甘くていい匂いがする。


「やっぱりサヤカの部屋っていい匂いがするよね。」


「馬鹿な事言ってないで、ほらここ座って。」


すると、いつの間にかあの白い皮を剥いでいたサヤカが私に椅子に座るように促してきた。大人しく椅子に座ると、サヤカは机の上に置いていた物をあれやこれやと慣れた手付きで進めていき、さっきまでサヤカが顔に付けていた白い皮を私の顔面に引っ叩くように貼り付けてくる。


「うわ!・・・うぇ~、なんかヒヤヒヤするんだけど・・・。」


「それがパックってやつよ。あー、他人の美容に時間を掛けるなんて、ほんと面倒なんだけど。」


悪態をつきながらも、サヤカはどこか楽しそうに私の肌に液体を塗っていく。サヤカが楽しいのならいいけど、こんなので肌が良くなるものなのか?にわかには信じ難いな。




それから30分程経った。結果、滅茶苦茶肌が若返った・・・気がする。確かに普段より肌がスベスベとした感じになったが、ただそれだけだ。けど、スベスベになった自分の肌を撫でるのは、意外と楽しい。


「こんなものかしらね?」


「おー。見てよサヤカ!私の肌滅茶苦茶スベスベ!ボーリング場みたい!」


「もっと他に例える物無かったの・・・ともあれ、これで分かったかしら?美容は自分の身の為、女性には欠かせない日課なのよ。」


「日課かー、私は無理だな。うん。」


「少しは真面目に考えなさいよ!はぁー、せっかく私がやってあげたのに、これじゃあ時間の無駄だったじゃない。」


「いやけどさ、サヤカが私の為にやってくれたのは凄く嬉しかったよ!またやってよ!」


「っ!・・・しょ、しょうがないわね!簡単になら、やってあげなくもないけど!すっごく面倒だけどね!」


「ふふ、ありがとう。」


私にはやっぱり美容というのが理解出来ない。けど、サヤカが私の肌を触ってくれるのであれば、面倒だと思える美容も悪くはないと思える。

それにサヤカも何だかんだで嬉しそうにしているし、これからは美容を理由に毎日サヤカの部屋に行ける。いつか、サヤカにもしてあげたいな。


「いつかサヤカにも私がやってあげるね。全身ボーリング場みたいにスベスベにしてあげるから!」


「いい加減ボーリング場から離れなさいよ!」

岸サヤカ

・毎日欠かさず美容に時間を使っている。何もしなくても自分と同じくらい綺麗な肌を持っているアキに少し嫉妬している。


黒澤アキ

・美容に時間を掛けた事が無い。にも関わらず、肌はサヤカと同じくらいに綺麗である。

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