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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
二章 暗闇からの招き手
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思わぬ才能

散々な目に遭いながらも無事生還出来た私達は、藍丹山を下り、私達が住む街へと歩き続けていた。向こう側の世界から逃げ延び、この世の者とは思えぬ化け物を退け、サヤカも私も五体満足でこの世界に立っている。

しかし、安心するのはまだ早い。何故かというと。


「「「暑いーーー!!!」」」



今まで背筋が凍る程の寒さを味わっていた所為か、こっちの世界の異常な暑さに私達はもちろん、ルーさんまでもが苦しんでいた。今日の気温はこの夏で最高気温とネットで書かれており、外出注意と言われる程の暑さだった。


「ねぇ、サヤカ・・・あとどれくらいで街に着くの・・・?」


「そういう事は、この景色が変わってから言ってよ。さっきから休まずに1時間は歩いているのよ?なんでまだ木しか見えないのよ!?」


「怒らないでよ!余計に暑くなる!」


「怒らせるあんたが悪いのよ!」


「はいはい二人共落ち着いて~。熱中症で倒れても助けられないからね~。水も無いしね~。」


「「ルーさんが水全部飲んだからでしょうが!!!」」


「久しぶりに滅式を使ったから疲れてたんだよ!仕方ないでしょう!?」


「「だからって全部飲むな!!!」」


あの時、水を上げたのが運の尽きだった。術を使って疲れていたルーさんが少しだけ水を飲めば大丈夫と言っていたが、まさか2リットルの水を二本全部飲んでしまうなんて。

という訳で、今の状況は非常にマズい状況だ。街までの距離は不明、水は全て無くなり、食料も水を使わないと食えた物じゃないインスタント食品だけ。

藍丹山で襲われたあの背筋が凍る寒気が恋しい・・・今だけ狭間の世界に逃げ込みたい。


「・・・ねぇ、二人共。このままじゃ、私達は道の途中で干からびて死んでしまうと思うんだ。」


「縁起でもない事言わないでくださいよ・・・。」


「私はルーさんの意見に同意するわ。それで、何か考えがあるんですか?ヒッチハイクをしようにも、こんな場所に車が来る事なんて無いだろうし・・・。」


「・・・これを使うの。」


ルーさんは暑さでダウン寸前になりながらも、私達に指輪を見せてきた。


「私、別の場所へ移動する術が使えるんだけど、一つだけ問題があるんだよね・・・。」


「問題っていうのは?」


「使う術を思い描く想像力、私達は想力って呼んでるんだけど。そもそも想力には体力が必要で、使う術によって消費する量は大きく変わるんだ。そして私があの異形の化け物を倒した時に使った滅式・・・あれは術の中でも一気に体力を失う術で、今の私は術を使う為の想力を練り出せないの。」


「・・・つまり、ガス欠って事ですか?」


「ざっつらいと。」


ルーさんの声に生気が宿ってない。本当にガス欠なんだ。私はこの目でハッキリと見てはいないけど、確かにあの化け物を一瞬にして消し飛ばす術を使うには、相当な体力、もとい想力が必要だろう。となれば、なんでルーさんは術を使う事を提案してきたんだろうか?

私が疑問に思っていると、ルーさんは指輪を外し、その指輪を私の手に握らせてきた。


「私はもう術を使えない・・・だから、君がやるんだ。アキちゃん。」


「・・・え?」


「アキが?でも、こいつはそんな器用な事出来ないと思いますけど?」


「・・・酷い言い方だけど、サヤカの言う通りです。私には、ルーさんのような術は―――」


「使えるよ。ほら、あの結界だって君が作ったんだ。あれだけの膨大な世界を作れたんだ。転移術くらい、どうって事ないよ・・・。」


結界・・・確かに、あの夕陽に照らされた世界は私が作り出したらしいし、もしかしたら私にもルーさんのように色々な術を使えるのかもしれない。

でも、あの結界だって無意識で作り出したものだし、そもそも想力を練り上げる方法すら分からない。


「さぁ、早速やってみようか・・・アキちゃん、こっちに来て?」


指輪を見ていたら、ルーさんに腕を引っ張られ、私はルーさんに後ろから抱き着かれてしまった。暑い・・・このクソ暑い状況で密着されるのは地獄だ・・・なんでサヤカはそんな羨ましそうな目で睨むんだよ。どうせ私が抱き着いたら「暑いわよ、この馬鹿!」とか言って張っ倒すくせにさ。


「アキちゃん、集中して。」


「あ、すみません・・・。」


「まずは指輪を右手の中指に。」


するとルーさんは私の中指に指輪を着けてきた。なんか結婚式みたいだな。チラッとサヤカを見てみると、歯が欠けてしまう程の強さで歯を食いしばっていた。頼むから少しだけ目を瞑っててほしい、あとでサヤカにもやってあげるから。


「集中!!!」


「はい!」


全然集中していなかった事がルーさんにバレてしまい、至近距離から大声で叱られてしまった。そうだ、今は集中しないと。それに今のルーさんの怒声で、私が術を使える可能性がある事を信じているのが分かった。

初めてだ・・・誰かにここまで期待されている事なんて。


「いい?まずはゆっくりと深呼吸をして落ち着いて。そして、この指輪の宝玉だけを見るように集中するの。」


ルーさんに言われた通りに、宝玉を見る事に集中する。ずっと見ていたら、視界から宝玉以外の全てが薄くなっていき、宝玉だけがハッキリとしていた。

すると、宝玉の中が見えるようになった。不思議な事に、宝玉の中は真っ白な空間になっており、そこに自分が立っているような感覚になった。


『宝玉の中に入れた?それじゃあ次は、君が街の中で一番憶えている景色を思い出して。好きな場所でも落ち着く場所でもなく、君にとって忘れられない景色を思い浮かぶの。』


「忘れられない、景色・・・。」


夕陽に照らされた街・・・幸せそうに笑う私と二人の誰か・・・幸せで、悲しくて、温かい・・・私が忘れたくない記憶・・・私が求めているもの・・・。





「・・・あれ?」


気が付くと、私達三人は夕陽に照らされた街に立っていた。宝玉の中で思い描いた、あの場所に。


「ここ・・・私が作った結界に似てる・・・。」


「似てるけど、違うよ。ここは現実の世界。術が成功したんだよ。」


成功した・・・術を発動出来た?私が?


「私、出来ちゃったんですか・・・?」


「うん、出来ちゃった。」


「・・・やば。」


「いや、本当に凄いと思うよ。まさか一発で成功させるなんて。やっぱり祓い士の才能あるよ!ねぇ、やっぱり祓い士にならない?」


「それは嫌です。」


けど、本当に出来るなんて・・・私って本当に祓い士の才能があったんだ。なんだか悪い気がしないって思えてしまうな。とりあえずサヤカに自慢してみるか。


「ねぇ、サヤカ!私、なんか出来ちゃったよ!・・・サヤカ?」


「・・・嘘でしょ。」


私の声がサヤカには届いていないようで、何かを見てサヤカは目を大きく見開きながら驚いていた。

一体何を見てそんなに驚いているんだ?そう思い、私もサヤカが見ている方向に視線を向けた。


「・・・は?」


視線の先。そこには、夕陽に照らされた三人の家族がいた。真ん中の小さな女の子が父親と母親と手を繋いでいる。凄く微笑ましく、温かくて・・・そして、怖かった。


「なんで・・・生きてるの・・・?」


私とサヤカが見たその家族。それは紛れもなく小さい時の私。そして、亡くなったはずの父と母の姿であった。

岸サヤカ

・恋愛映画を観た夜、必ず夢でアキが現れ、恋愛映画のような迫られ方をされる。その為、週に二回は恋愛映画を観るようにしている。


黒澤アキ

・時折、昔撮った自分の誕生日を両親と祝うビデオを観たくなるが、悲しくなるので結局観れずにいる。


ルー・ルシアン

・祓い士を引退して以降、カフェの副業で呪われたビデオや写真のお祓いをしている。ちなみに、副業の方が本業のカフェよりも稼げる。


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