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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
二章 暗闇からの招き手
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藍丹山 三

あれから時間が経ち、夕陽が沈みかけて暗くなってきていた。火を起こそうと考えたが、この場所から出れる範囲に薪になりそうな枝が落ちていなかった。幸い明かりは持ってきていたライトや携帯で何とかなるし、水も食料も十分にある。

しかし、このまま閉じ込められたままでは餓死するのも時間の問題だ。なんとかして外部と連絡を取らないと。


「アキ・・・。」


「ん?どうしたのサヤカ。」


「こっち・・・来て?」


サヤカがテントの入り口から顔だけ出して、震えた声で私を見上げてくる。この状況でこんな感情になるのは間違っているのは分かっている・・・分かっているが、それとこれは別だ。

しかしここで可愛いだなんて言ってしまえば、サヤカに怒られてしまう。それにサヤカはこういう状況に陥ったのが初めてだ。私も狭間の世界に居た時は精神的にまいってしまっていたし。

しょうがない、落ち着くまで一緒にいてあげよう。それにここから抜け出す為のアイデアを出す為にもサヤカの力が必要だ。


「うん、分かった。そっちに行くよ。」


そう言うと、サヤカはテントの中に戻っていった。私もそれに続いてテントの中に入ると、中は甘い香りに包まれていた。


「この匂い・・・。」


「落ち着こうとして、アロマキャンドルをやったの・・・。」


「アロマキャンドル?」


「これよ。」


するとサヤカは瓶の中で火が灯るロウソクを見せてきた。なるほど、そういう奴もあるのか。確かにこの甘い匂いは心が落ち着く。このまま寝てしまいそうになるくらいに。


「なんか、眠くなっちゃいそうだね。」


「普段ならこれを使えば、眠れない時でも眠れたんだけど・・・この状況じゃ、無理みたい。」


「・・・怖いよね。私も場所は違うけど、こういう状況に遭った時は、怖くて怯えてたよ。」


「この前の話の事ね。」


「うん・・・でも、今は違うよ?だって、前とは違ってサヤカが一緒にいてくれるんだもん。」


私はサヤカの手からキャンドルを取り、それを端に置いて、サヤカの事を抱きしめてあげた。これで少しでも落ち着いてくれればいいけど、きっとサヤカは「子供扱いしないで!」とか言うんだろうな。

しかし、そんな私の予想とは違い、サヤカはしがみつくように抱きしめ返してきた。凍えている時のような不規則な呼吸音が耳元で聞こえてくる。


「・・・大丈夫だよ、サヤカ。私が傍にいるから。」


「グスッ・・・うん・・・。」


「サヤカが眠るまでこうしてあげるから、サヤカは安心して目を閉じて。怖い事は考えちゃ駄目。考えるなら、私の事を考えて?」


「余計に眠れなくなるからいい・・・。」


「え~・・・。」


「・・・ありがと、アキ。」


それから私達は一言も話す事は無く、ただひたすらお互いの事を抱きしめ合っていた。だんだんと私も眠くなってきていたが、ここで二人共眠ってしまうのはリスクが高い。もし前と同じ、ここが狭間の世界ならば、時間が経つにつれて何かしらの変化が起きる。その変化を見逃す訳にはいかない。


「サヤカ?」


「・・・。」


サヤカは眠ったようだ。ゆっくりと、起こさないようにサヤカから離れ、寝袋をサヤカの上に被せた。最後に1分程サヤカの寝顔を眺めてからテントから出た。


「まずは、ルーさんと連絡だ。」


携帯の電波が立つ場所を探し、一本だけ立つ場所を見つけると、そこでルーさんからメールが届いていないかを確認する。

すると、1時間置きにルーさんから電話が入っていた。私はルーさんに電話を掛け、通話をスピーカーに変えてルーさんが電話に出るのを待った。


『もしもし、アキちゃん?』


意外にも早くルーさんと連絡が取れた。この前の時はこっちから掛けても通じなかったが、今回は電話が通じるようだ。


「もしもし、ルーさん?」


『良かったー。とりあえず無事なんだね。』


「まぁ、とりあえずは二人共。」


『二人?もしかして、君だけじゃないのかい?』


「はい。今回は、サヤカも。」


『そっか・・・それじゃあ、そっちの状況を教えてくれる?出来る限りでいいから。』


「分かりました。それじゃあ―――」


私はルーさんに今分かっている事を全て話した。不思議とこの場所が目についた事、他のみんながいる場所と切り離された事、外に出ても結局この場所に戻る事。

それらを話し終えると、ルーさんはしばらく黙り込み、そしてまた話し始めた。


『アキちゃん。残念だけど、あなた達は狭間に身を置いているわね。しかも今回はかなり特殊よ。』


「特殊?」


『前にアキちゃんが狭間にいた時の原因は死んでしまった者と出会ってしまったから。でも、今回の場合は誘われてしまったの。』


「誘われたって、死んでしまった何かに?でも、私達はそれらしき者には出会っていませんよ?」


『例えば街を歩いていたら、どこからか風に乗って良い匂いが香ってきた時、思わず匂いがする方に視線や体を向ける時があるわよね?それと同じで、あなた達はあなた達にとって魅力的な何かに釣られてしまって、その場所に誘い出されてしまったの。』


「私達はまんまと餌に食い付いてしまった魚って事ですか・・・。」


あ、そうだ。そういえばメールで送ったあのマークについて聞いておかないと。


「そういえば、あのマークって何なんですか?」


『メールで送ってくれた写真のやつ?ん~・・・まぁ、君にならいいか。もう術も見せちゃったしね。あれはね、私達祓い士が身の安全を確保する為の結界術に使われる文字よ。例えば、私の店に置いてある置物が魔除けだって、前に話したのを憶えてる?』


「ええ。」


『あれとほぼ同じよ。違うとすれば、文字を描いたり刻んだりするだけで効果がある事。でも、置物のとは違って、文字は永久的に使えないの。結界術には時間があって、術者によって差はあるけど、普通なら3日程度かしら。効果が無くなる時は文字が消えるから、今はそこに留まっていても大丈夫。』


「そうですか・・・それで、どうやってここから出ればいいんですか?前の時みたいに、そっちに引き寄せられたり出来ないんですか?」


『流石に距離が遠すぎる。それに、今のブランクのある私じゃ、一日一人が限界ね。ごめんなさい。』


「いえ!こっちこそ、すみません。せっかく助けてもらったのに、またこんな目に遭っちゃって・・・。」


『あなた達の所為じゃないわ。とにかく、今はそこが一番安全だから、そこから絶対に動かないで。私も出来るだけ早く解決策を探してみるから。』


「ありがとうございます。それじゃあ、お願いします。」


電話を切り、ルーさんが言っていた結界術の文字が刻まれている木の下へ近付いた。文字はハッキリと木の皮に刻まれており、ルーさんの言葉が確かなら、まだ大丈夫だろう。


「・・・ルーさんに任せっきりじゃ駄目だ。せめて何かヒントみたいなものを探さないと。」


もうすぐ夜になる。その前に、この場所から外に出ない範囲で、何か変わった所がないかを探してみよう。

岸サヤカ

・初めて作った料理はハンバーグ。それをアキに食べさせたところ、そこから1週間アキに作る羽目になってしまった。


黒澤アキ

・料理を作るサヤカに影響されて自分も作ろうとしたところ、全力でサヤカに止められてしまう。

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