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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
二章 暗闇からの招き手
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藍丹山 一

ごめんなさい、またホラー回が続きます。

7月に入った今日。私が通う学校の行事である2泊3日の合宿が始まった。二年生だけの行事で、6人で構成された班に分かれ、自分達の力だけで三日間を過ごすというもの。

場所は学校からバスで2時間程移動した先の山。そこには民家や人工的に作られた明かりなんて物は無い。その為、生徒達が自分でテントを張り、明かりも火を起こしたり持ち寄った携帯電気で確保する。流石に食料を現地調達する訳はなく、学校側が用意した食材と自分達が持ってきた食料を使える。

合宿という名前を使ってはいるが、実態はサバイバルや山籠もりのようなものだ。卒業していった歴代の先輩達からも、この合宿は地獄であったと聞いている。

その話を全員聞いていた為か、行きのバスの中で私を除いた生徒全員、死んだ目をしていた。まるでこれから戦地に赴く兵隊かのように。


「・・・みんな、大丈夫かな?」


隣に座っているサヤカに小声で聞いてみた。すると、サヤカは窓を開けて、私達の合宿先である藍丹山を指差した。改めて実際の場所をこの目で見ると、とても女子だけで生きていける環境じゃない・・・。


「あんな山にこれから三日も生活するのよ?電波は無い、明かりも自分達で確保。」


「けどさ、ちょっと面白そうじゃん。私、山に登るのも初めてだし、山で生活するのも初めてなんだ。」


「みんなそうよ。だから、体力お化けのあんたがクラス中で取り合いになったんでしょ?」


「あー、あれは凄かったな。けど、結局私のワガママでサヤカと二人だけの班にしてもらったんだけど。」


「その分、一つの班に人数が増えたわ。ま、一人二人増えた所で、状況はあまり変わりそうにないけどね。」


クラスのみんなには本当にワガママを言って悪かったと思ってる。この合宿の間でも私はサヤカと二人で過ごしたいし、サヤカは私以外の人とまともに話す事が出来ないし。


「・・・そういえばあんた、アレ持ってきた?」


「アレ?・・・あー、持ってきたよ。金属バット。でも、あんなのじゃ役に立たないよ。」


「無いよりマシよ。あの藍丹山って場所、野生の動物が出るって噂じゃない。しかもただの動物じゃなく、熊よりも大きな化け物が。」


「あれ信じてるの?前の前の卒業生が残していった噂話。」


「本当か嘘かは置いておいて、野生の動物が寝ている間に出てきたら怖いでしょ?だから、あんたが追い払うのよ。」


「なるべくやってみるけどさー。もし二人仲良く喰われてしまっても、恨まないでね?」


「恨むわよ、当然。」


かなり重大な責任を押し付けられている気がする。一応、もしもの為の秘策も持ってきているけど、それを使う機会が無い事を祈ろう。

というか、さっきよりもバスの中の空気が重くなった気がするけど、なんでだろう?


「そういえば、あんた花はどうしたの?」


「あー、あいつはルーさんの所に預けてきた。流石に山に持っていく事も出来ないし、かといって三日も家に放置する訳にもいかないしね。」


「ルーさんか・・・こういう時、あの人がいたら心強いんだけどなー。」


そのサヤカの発言に、私は少し嫉妬した。確かにルーさんは何でも出来る雰囲気を持っているが、私よりもあんな人の方を頼りにされているのは嫌だ。

よし、もしも本当に野生の動物や、卒業生が言っていた化け物が出てきても、あの秘策は使わずに自分で何とかしよう。そして、ルーさんよりも私の方が頼りになるとサヤカに思ってもらわないと。


「矢でも鉄砲でもかかって来い・・・。」


「あら、気合い十分ね。そんなに嫉妬した?私がルーさんが心強いって言った事が。」


「いや・・・うん、まぁ。」


「馬鹿ね。私があんたの事を一番頼りに思っている事くらい、言わなくても分かりなさいよね。」


そう言って、サヤカは私のおでこにデコピンをしてきた。一番・・・一番か!なんか嬉しいなー!


「でへへへ。」


「あんたって本当、馬鹿で分かり易いわね。ふふ。」




それからしばらくして、私達を乗せたバスは目的地の藍丹山の入り口に停まった。バスから降りて入り口の前に集合させられると、先生から私達にこれからの合宿の説明をし始めた。


「みなさん。これから三日間、あなた達は自分の力、そして誰かと協力する大切さを学ぶ為の授業を受けてもらいます。その三日間の生活の上で、いくつかのルールがあります。

一つ、三日経つまで山から下りない事。二つ、指定した場所から外には出ない事。三つ、山に生えてある木の実やキノコを食さない事・・・以上。それでは楽しんでください。」


合宿の説明を終えると、先生達は先に山を登り始めた。その後に続いて、生徒達もゾロゾロと入り口から山を登り始めていく。


「なにが楽しんで、よ。」


「あはは、まぁ案外楽しいかもよ?ほら、私達も行こう。」


腕を組んでイライラしているサヤカの手を握り、私達は最後尾の位置から山を登り始めた。今日から三日間、サヤカと二人で過ごせる。こんな幸せな事は無い。

だけど、なんだろう・・・なんか、嫌な予感がする。多分、原因はルーさんが言っていたアレだろう。


『今度、私の学校で山に合宿しに行くんですよ。』


『山に合宿?へー、変わった学校だね。それで、どこの山に?』


『えっと・・・藍丹山?だったけか?」


『・・・そう、あそこに・・・アキちゃん、私から忠告があるんだけど。』


『はい、何ですか?』


『その山で人以外の何かを見たら、すぐにでも山から下りて。いい?』


『え、ええ・・・。』


『それから、これ渡しておくね。有事の際に、これを右手の中指に着けて。』





「有事の際に、ね・・・。」


ルーさんが私に渡してきたのは、あの日、ルーさんが黒猫を祓った際に使っていた物に似た指輪だ。これを渡してきたという事は、この藍丹山には何かがあると言っているようなもの。


「何もなければいいけど・・・。」


「どうしたの?さっきから独り言呟いて?」


「・・・ううん。何でもない。さ、行こ!」

岸サヤカ

・本人の性格上、友達はアキしかいない。しかしサヤカ自身はそれで満足している。


黒澤アキ

・知り合いは何人もいるが名前を憶えておらず、サヤカ以外には深く関わろうとしない。

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