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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
二章 暗闇からの招き手
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岸サヤカに催眠術をかけられて。

紐を長めに切って・・・切った紐を五円玉に通して・・・結んで・・・。


「完成!」


「・・・いや何が?」


「催眠術に必要な道具。」


「・・・いい加減さ、突然私の部屋に入って変な事しようとするのやめてくれる?」


夜9時を過ぎた頃、私は暇を持て余していた。寝るにしても早いし、かといって何かやる事も無い私は買ってきていた雑誌をペラペラと読み漁っていた。次々とページをめくっていくと、あるページで私は手を止めた。

そのページには催眠術のやり方講座があり、本当にこの雑誌に載っているやり方で催眠術が出来るのかどうか試したくなった。

しかし、自分に対して催眠術なんかかけられない。そう思った私は、窓からサヤカの部屋に飛び入り、冷ややかな目で睨んでくるサヤカを無視して道具を作り上げ、今に至る。


「サヤカはさ、催眠術って本当にかかると思う?」


「聞いちゃいないわね・・・そうね~、単純な人ならかかると思うわ。」


「単純な人か。んー、例えば誰だろー。」


サヤカは単純とは真逆なタイプだし、ルーさんは・・・絶対かからないな。なんかあの人は催眠術のスペシャリストっぽいし。となれば、私の周りに単純な人っているかなー?


「というかさ。」


椅子から立ち上がったサヤカが私の傍に置いてあった紐で結ばさった五円玉を手に取り、それを私の目の前でぶら下げた。


「あんたじゃん。単純な人。」


「ん?私?いや、まっさかー!」


「はいこの五円玉に注目してー。」


こんな物で私が催眠術にかかるはずがない。そう思いながらも、本当にかかったら一体どういう感覚なのかという興味が湧き、私は紐で吊るされた五円玉が揺れるのを目で追っていった。

左右に揺れる五円玉を追い続けていくにつれ、段々と五円玉を目で追う事以外考えられなくなり、目がカメラでズームしたような感覚に陥っていく。

こんなに目を動かした事など無かったが、不思議と疲れや痛みは感じない。むしろ、何も感じない・・・あれ?なんで私は五円玉を追いかけてるんだ?・・・なんで、ここにいるんだっけ・・・なんで、なんで・・・






パチンッ!


「うぁ!」


指を鳴らした音で目を覚ました。あれ?いつの間に私寝てたの?


「あれ、寝ちゃってたのか?・・・なんか、変な感じがするな。サヤカ、私って・・・どうしたの?」


眠る前に何があったのかをサヤカに聞こうとしたら、サヤカは顔を下に向けながら、腹を抱えて苦しそうに笑っていた。


「ど、どうしたの?」


「く、くくく・・・い、いやいや、な、なんでも・・・くはははは!!!」


え、怖い・・・いきなり笑い出すなんて、サヤカどうしちゃったの?


「あの、サヤカ?」


「あ、あんたさ!ほ、ほんとに、単純なんだなって!あはははは!!!」


「え・・・え!?もしかして私、催眠術にかかってたの!?」


「ほんとおかしかったわよ!あんな簡単にかかるなんてさ!くは、あははは!!!」


マジか・・・私って単純な人間なんだな。しかし、肝心の催眠術にかかっている時の感覚が全然分からなかった。かかる前に、どんどん意識が薄れていった気がするけど、あの時にはもう私は催眠術にかかっていたのか。


「なんかあんまり分かんなかったなー・・・ねぇ、サヤカ。もう一回かけてみて。」


「いいわよ!結構面白かったし!」


「じゃあ今度はさ、何か命令出来るかどうか試してみて。」


「・・・命令は、なんでもいいの?」


さっきまで笑っていたサヤカが突然冷静さを取り戻した。なんか怖いな、何を命令されるんだろ・・・。


「いいけど・・・お手柔らかにね・・・?」


「お手柔らかに、ね・・・分かったわ。」


絶対分かってない!サヤカのこの顔は分かってないぞ!?


「それじゃ、やるわよ。」


あれ、なんだか急に怖くなってきたな。催眠術にかかっている間は意識が途絶えて記憶から消える。もしサヤカが私を使って銀行強盗やら人殺しなんかしたら、私は身に覚えの無い罪で刑務所にぶち込まれてしまう。

まずい、今からでも止めないと・・・何を、止めるんだ?あれ、なんか、おかしい。あ、まずい・・・無意識に、五円玉を目で、追っちゃった・・・











パチンッ!


「うわぁ!?」


指を鳴らした音でまた目が覚めた。そしたら、目の前には顔が赤くなっているサヤカの顔があった。少しでも動けばそのままくっついてしまう程に。


「・・・もう解けたでしょ?どいて。」


「あ、ごめん。」


このままではブン殴られると直感し、急いでサヤカから離れた。


「あれ?」


サヤカから離れると、なんだか違和感を覚えた。サヤカの服が乱れている。それだけじゃなく、彼女の右手首には手で強く絞められた痕がある。

あれ、もしかして私・・・。


「あの、サヤカ?」


「・・・なに。」


「私ってさ・・・なんかやっちゃった?」


「・・・知らないわ。」


サヤカはそっぽ向きながら、シャツのボタンを締め直していく。あ、これ間違いなく私が何かしたんだな。記憶に無いけど、間違いない。

謝ろうとしたが、何を謝ればいいのか分からない。サヤカがああなったのも、私が催眠術にかかっている間に起きた事だ。その間の記憶は私には無い。だから、何に対して謝ればいいのか分からない。


「「・・・。」」


気まずい雰囲気が流れている。私は言わずもがな、サヤカも何を言えばいいのか分からないのだろう。

とにかく、今はこの変な空気を変えないと。何でもいい、何か話題を。


「私を催眠術にかけた後、何を命令したの?」


「っ!?」


しまった・・・これは完全に今聞くべき事じゃない。これじゃあますます気まずい雰囲気が増すばかりだ。


「あ、いや、別に言いたくなきゃいいけどさ。」


「・・・。」


今更取り繕うとしても、もう遅い。完全に地雷を踏んだ。


「あの・・・ごめん。私、部屋に戻るね?」


このままここにいても空気は変わらない。そう思い、私はサヤカに軽く謝りながら、自分の部屋に帰ろうとした。


「待って。」


サヤカの声に引き留められ、私はサヤカの方へ振り返った。振り返った矢先、迫ってきていたサヤカが私にしがみつき、私の首を思いきり噛んだ。


「いっ!?」


サヤカの歯が喰い込んで激痛が走ってくる。突き放そうとも考えたが、それを行う前にサヤカは私から離れ、口元に少しだけ付いた私の血を舌で舐めとった。


「サヤカ、何を・・・。」


「お返し。」


「お返しって・・・え、まさか・・・!」


お返しって事は、私もサヤカに同じような事をしたって事だよね?こんな大胆な事したのか、意識の無い私は。

なんかちょっと、悔しいな。自分がやった事なんだけど、その事に関して何も思い出せない。けど思い出せなくて良かったのかも。

だって憶えていたら、私はもう一度同じ事をサヤカにしたかもしれない。


「・・・私、催眠術の事忘れるよ。」


「うん・・・そうした方が、いいかも。」


そう言うサヤカの表情は、どこか恥ずかし気であった。

岸サヤカ

・マジックを見ても特に驚きはしない。どうやっているのかの方が興味が湧いてしまう。


黒澤アキ

・マジックを見せて喜ぶ人ランキング1位。マジシャンが一番喜ぶタイプ。

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