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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
一章 ほのぼのとした日常
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忘れていた温もり

スピードが命だ。連続投稿でいこう。

自宅に入るや否や、私は靴を脱ぎ捨てて二階へ上り、自分の部屋に入った。窓を開け、サヤカの部屋の窓に手を掛けると、スッと窓が少しだけ開く。


(鍵は開いている・・・よし!)


サヤカの部屋の窓を勢いよく開け、彼女の部屋に飛び入った。すると、机で勉強をしていたサヤカが私に気が付き、突然現れた私に驚いて体をビクンと跳ね上がらせた。


「なに!?」


「強盗だ!」


「アキでしょ!?」


一瞬、いつも通りの反応を見せてくれたが、やはりサヤカは私から距離を取ろうとし始めた。そうはさせまいと、私は背を向けた彼女を抱え上げ、抱え上げたまま彼女のベッドに横になった。


「何するのよ!離して!」


「フハハハ!我が最強奥義【天獄呪縛】からは何人たりとも逃れは出来ぬわ!」


「どういうキャラなのよ!?もう、離してよ!うにににに!」


可愛らしい声で私の拘束から逃れようとしているが、サヤカの力では我が・・・私の拘束を解く事は出来ない。

しばらく抵抗していたサヤカだったが、やがて抵抗を止め、荒くなった息を整えながら大人しくなった。


「はぁ、はぁ・・・一体、なんだっていうのよ・・・。」


「ん~、なんだろう?」


「・・・ふふ・・・あははは!」


「サヤカ?」


まさか、サヤカに私の変なキャラがうつってしまったのか!?


「ほんと・・・あんたって、馬鹿ね。」


そう呟いたサヤカの声色は、とても落ち着いていた。すると、サヤカは拘束された状態のまま、小刻みに動いていき、私と向かい合わせになる。

あの時、相性占いをした時よりも近い・・・少し顔を動かせば、彼女の唇に触れられるくらい、近くに。


「ねぇ、アキ。私達って、なんなんだろうね・・・。」


「・・・どういう事?」


「普通はさ、どれだけ仲の良い友達でも、こんなに近い距離でお話なんかしないよ。」


「他の人より、仲が良いだけだろ。」


「・・・中学校の頃・・・ううん、もっと感じたのは高校生になった頃・・・私は、アキと会うのが辛くなったの・・・。」


サヤカの口から出た衝撃の事実に、私は驚いた。どうして?と聞きたい気持ちを抑え、サヤカが自分の想いを口に出すのを待った。


「アキと話して、遊んで、笑って・・・それが楽しくて・・・それだけが幸せで・・・ある日突然、私はアキの事を友達としてではなくて、一人の・・・好きな人として意識するようになったの・・・。」


サヤカの想いに私は驚く事も無く、ただひたすら安堵した。私は嫌われていた訳じゃなかったんだと・・・つくづく、自分が嫌になるな。自分の想いを口に出せない癖に、サヤカに嫌われる事を心の底から恐れているなんて。


「けど、アキは私の事を友達として見てる・・・だから、私はずっとこの想いを隠していようと思っていた・・・けど、あの占いで、勝手に私はアキに振られた気持ちになっちゃった。」


「くだらない占いの所為で?」


「ふふ、そうよ。くだらない占いの所為で・・・けど、そんなくだらないものでも、私とアキの関係が上手くいかないって言われたら、やっぱり辛かったわ。」


「・・・ごめん。」


「あら?どうしてアキが謝るの?悪いのは私・・・そう、弱い私なの。」


「それは違うよ!」


サヤカの肩を掴み、私はサヤカごと体を起こした。勢いで動いてしまった為、肩を掴む力が強く入り、サヤカの顔に力が入る。すぐに力を緩め、肩に置いた手をゆっくり撫でるように下におろしていき、サヤカの手を握った。


「私だってさ、こういう変な行動をしなきゃサヤカに触れる事すら恥ずかしがってるんだ。いつだってキッカケは、サヤカが起こしてくれるものだと甘えて・・・。」


「アキ・・・。」


「私さ、サヤカの事が好きだ。」


「・・・ふぇ!?」


「不思議だよね。こんな短い言葉なのに、口に出すのは恥ずかしくて、怖くて・・・凄く大切な事なのに・・・。」


心臓が激しく鼓動しているのが分かる・・・恥ずかしくて顔に火が点いたように熱い・・・でも、固まった心が溶けていくような気持ち良さも感じる。

サヤカが私の事を好きだという事を知っていたのに、私は今まで何を不安に思っていたんだろう。【好き】という言葉を口に出した今となっては、馬鹿馬鹿しく思えてしまうな。


「それで、さ・・・遅くなったけど、返事を―――」


そう言いかけた時、サヤカが私を押し倒してきた。


「サ、サヤカ?」


「・・・嬉しい。凄く、嬉しいよ。」


あれ?なんか思ってたのと違う。てっきり私が好きと改めて言葉に出して、サヤカが泣きながら私に頭を撫でられるものだと想像していた。

しかし現実に起きた事は、恍惚とした表情をしたサヤカが私を押し倒したという事。


「あの~、サヤカさん?」


「ずっと・・・ずっとこうしたかった・・・。」


サヤカの白く細い指が、私の平らな胸を押してくる。


「ねぇ、アキ?」


私の胸を触っていたサヤカの指は私の唇に移動し、下唇を少しだけ引っ張ってくる。


「いいよね?」


「サヤカ・・・。」


(マズいマズいマズいマズいマズい!!!)


どうやらサヤカは私に口づけをしようとしているようだ。それは嬉しい・・・が、非常にマズい事でもある。

サヤカがどれほど私の事を好きでいて、私とどこまでしたいのかは不明だ。しかし、絶対私の方がサヤカよりも過激な事をしたいと思っている!

今でも暴走しそうになる自分を抑えるのに必死なのに、口づけを許してしまえば、それはもう大変な事になってしまう!

これが自分の本音を出した時に、私が私の事を嫌う理由だ。自分の欲に正直になってしまえば、疲れ果てるまで止める術が無いのだから。


「アキ・・・好きよ・・・。」


サヤカの顔、特に唇が近づいてくる。


(やばい、どうにかしてどうにかしないと!)


人間が危機的状況に陥ると、スローモーションになると聞いた事がある。それが今、私の身に起きた。瞬間、私の頭の中で今までにない物凄い速さで試行錯誤がされていき、一つの解決策が導き出された。

それは、サヤカの胸に顔から突っ込む事だった。馬鹿げた考えだと思いながらも、私の体は既に動いていた。


「ひゃっ!?ア、アキ!?」


胸に飛びついてから分かったが、この行動は事態を悪化させてしまうのでは?自分の行動に今更焦りを感じていると、サヤカは私を優しく抱きしめた。

温かい・・・忘れていた母の温もりを思い出す・・・とても落ち着く。


「ふふ、アキってば本当に馬鹿ね。いいわよ、私で安心して。私に抱きしめられて、何も考えられなくなって。私に全部、身を委ねて。」


凄く・・・心地よい。こんな風に優しく抱きしめられたのなんて、いつぶりだろう?なんだか眠くなってきた・・・いやだ、まだこの温もりを感じて・・・。







目を覚ますと、私はサヤカの腕の中で横になっていた。サヤカはというと、彼女はとても心地のよい表情を浮かべながら眠っている。


「結局あの後、寝ちゃったのか・・・二度寝しよ。」


私は再び顔をサヤカの胸にうずめて、彼女の温もりを感じながら目を閉じた。

岸サヤカ

・甘えるよりも甘えさせたい派


黒澤アキ

・甘えたい派


今回の話で1章が終わり、次回から新しい章です。少し、いや大きく変わった彼女達の日常をお楽しみに。


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