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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
一章 ほのぼのとした日常
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駆ける

あの忌まわしい相性占いから1週間が経ち、私達の間で小さく、そして確実に距離が出来始めていた。顔を合わせると逃げられ、部屋の窓を叩いても顔を見せてくれない。更に追い打ちをかけるように、学校では席替えがあり、私とサヤカの席は右端と左端に分かれてしまった。

占いの結果など、そんなに気にする事なのだろうか?サヤカ自身も、悪い結果は見て見ぬフリをすると言っていた。けど実際は思いっきり影響されている。

私は机に突っ伏しながら廊下側の席に座っているサヤカを見つめた。一瞬目が合ったが、やはりすぐに目を逸らし、勉強をしているのかノートに何かを書き始めた。

正直、結構つらい・・・強引にでも迫ろうかとも考えたが、それで私達の関係が完全に壊れてしまう恐れもある。

八方塞がりだ!この世の終わりだ!なんであの時、占いなんて目に留まったんだろう!


「・・・もう死んでも、いいや。」


サヤカと仲良く出来ない日常など、私にとってそれはもう地獄だ。辛いこの気持ちに耐え切れず、私は死を覚悟した。ごめん、サヤカ・・・弱い私を許して?





「で?私の店に来たって訳?」


「はい・・・せめて、人の役に立って死のうかと・・・。」


「いやコーヒーで人は死なないから。あと作った本人の前でよく言えるね?」


放課後に足を運んだのはルーさんのカフェ。ここのコーヒーは未だ不味い。その不味さは人を殺してしまうかもしれない程に。

だから私は決意した。死ぬ前にせめて、ルーさんのコーヒーが人体に悪影響を及ぼす飲み物だという事を世間に知らしめようと。


「ふふふ・・・アキちゃんには悪いけど、私も日々成長してるからね。今日のコーヒーは良く出来たのよ!」


自信たっぷりに出されたコーヒーの湯気が私の顔を撫でる。途端にコーヒーの良い香りが鼻から頭の中まで通っていき、不思議とルーさんのコーヒーが美味しそうに思えてきた。


「いただきます・・・。」


カップを持ち、ゆっくりとコーヒーを飲んでいく。苦味・酸味、その二つが口の中で広がり、そこからコーヒーの美味しさが徐々に徐々に・・・。


「・・・不味いです。」


「ふふーん!美味しいで―――あれ?」


「ハッキリ言います。これは苦くて酸っぱい液体です。口に入れた途端に酸味という武器を手にした苦味が飛び跳ねてきます。ある意味芸術作品ですね、これ。」


「・・・褒めてる?」


「褒めてません、客にこんな不味いコーヒーを出した事に怒っているんです。」


「で、でもさ!香りは良いでしょ?」


「それが逆に駄目ですよ。良い香りで誘い出して、その本質は悪そのもの。このコーヒーの名前は【詐欺師・ルー】にしましょう。」


「そこまで言わなくったって・・・。」


ルーさんは口を尖がらせながら私に出したコーヒーを取り上げ、自分でも飲んだ。コーヒーを一口飲み、ルーさんは首をかしげると私の顔を見て、また首をかしげた。

まるで私の舌がおかしいみたいな態度だが、舌がおかしいのは明らかにあなたの方です。


「ま、その人の好みっていうのがあるしね。」


「・・・そうですね。」


「さーて、場も温まりました本題・・・サヤカちゃんの事、聞かせてくれる?」


「・・・よく分かりましたね。」


「君って分かり易いからね。それに、ただ店の悪口を言うだけなら、あなたは今頃ゴミ捨て場に寝てるわよ。」


クスクスと笑いながら言っているが、冗談じゃないな。今度から悪口を言う時はもっと考えて言おう。


「・・・それが、最近サヤカと距離が出来てしまって・・・。」


「へぇ~。ま、どんなに仲の良いカップルでも、喧嘩の一つや二つするからね。それで、喧嘩の理由は?」


「・・・占いです。」


「占い・・・占い?そんな事で?」


「はい・・・。」


「占い・・・ブフッ・・・!」


笑いを堪えるのに必死なルーさんは私に背を向けたが、酷く肩が震えているのがバレバレである。いや確かに笑える。あんなに仲の良い二人が、占い一つで距離が出来るなんておかしな話だ。

しかし、本人である私にとってはあまり面白くない。自分勝手な事だが、年上として真面目に相談に乗ってくれると思っていたから、笑われると何だか怒りが湧いてくる。


「おかしいですか?私達の仲が壊れかけてて。」


「ご、ごめんごめん!いや、もっと酷い喧嘩でもしたのかと思ってたからさ!あははは!そうかそうか!占いで仲が悪くなったか!」


「コーヒーを悪く言ったお返しですか?」


「そうじゃないよ!それで、君はどうしたいんだい?」


ルーさんはカウンターに肘をついて、イタズラな笑顔で私に尋ねてきた。どうしたい・・・かなんて、それを知る為にここに来たんだ。分かる訳がない。


「分からない・・・そう思ってるでしょ?」


「っ!?・・・はい。」


「ふふ、難しく考えすぎだよアキちゃん。君は今まで、サヤカちゃんとどうやって過ごしてきたの?」


「今まで・・・私がちょっかいをかけてサヤカの反応を見たり、サヤカの無茶ぶりに私が付き合ったり―――」


「はい、もう答えは出たわね。」


答えが出てるって・・・あ、そうか。私は今の今まで距離が出来たと思っていた。けど本当は、私がサヤカと距離を取っていたんだ。喧嘩なんて昔からしてるし、サヤカを本気で泣かした事もあった。

けど、その度に私はいつもと変わらぬ、ウザくて、うるさくて、元気な私でサヤカに会っていたんだ。そしてサヤカはちょっと怒って、またいつものようにくだらない話を始める。

気付かなかった・・・私達の仲を戻す方法が、こんな簡単な事に。


「子供の頃の喧嘩ってのはね。謝る事も必要だけど、一番の解決方法はいつも通りの自分でいる事よ。自分が変わってしまえば、相手もあなたに合わせて変わってしまう。子供って、環境によって変わるものだからね。」


「・・・随分、達観としてますね。」


「そりゃ大人だからね。」


「・・・今がその時なのかも。」


「え?」


「ありがとルーさん!コーヒーのお代はここに置いときますね!」


「ええ、頑張んなさ―――ちょっと!500円じゃ足りないわよ!?私のコーヒーは2000円―――」


ルーさんの言葉を聞き流しながら、私は店を飛び出した。ルーさんに相談するまで、ずっと私は考えていた。サヤカと会って何を言えばいいのか、どんな風に謝ればいいのか・・・そんな事、考えるのは無駄だ!私らしく行動で示すんだ!

サヤカとの仲がもっと悪くなる可能性なんて考えない・・・いや、そんなのありえない!


「だって・・・私は!私達は!」


この先の言葉は今は言えない。言うなら、サヤカの前でだ。


「待ってろサヤカ・・・そして覚悟しろ私!」


目指すはサヤカの部屋。これから起こす自分の行動の後押しする為に自分に喝を入れ、私は全速力で走った。

岸サヤカ

・ケーキに乗ったイチゴは最後に食べる派。


黒澤アキ

・毎度ケーキに乗ったイチゴをサヤカに渡す代わりに、上に乗っているホイップクリームの塊を要求する。

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