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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
一章 ほのぼのとした日常
19/81

岸サヤカは心配性である。

我々の世界ではまだ冬ですが、この小説では春が終わりかけの頃です。

季節は夏も間近の今日この頃。終わりかけと言えども未だ春だというのに、既に夏のような気温に苦しまれています。夏までまだ日にちがあると思っていたから、倉庫に置かれていた扇風機の調子を確認する事を怠っていた。その所為で、扇風機が壊れていた事に今朝気付き、そこから12時までの3時間、この暑さで私はアイスのように溶け切っていた。


「あづ~~~。」


こんな暑い時はカキ氷を口一杯に含んで、キンキンに冷え切ったラムネと共に流し込みたい。あとはクーラーかな?一度クーラーの最低温度を身に叩きつけてみたいなー・・・駄目だ、想像しても全然暑いままだ。


「なんか・・・涼しい何かを・・・。」


チリーン。


その時、風鈴の音が聴こえてきた。風鈴の音が聴こえてくる窓の方へ這っていき、窓から顔を覗かせてサヤカの部屋を覗いた。

サヤカの部屋の窓にはさっき聴こえた風鈴が吊り下げられており、氷アイスを咥えながら本を読んでいた。


「サ、サヤカ~~~・・・。」


「・・・あら?アキ、どうしたの?」


サヤカは私の事を心配しながらも、一歩も動こうとはしない。それに顔を向けられて気付いたが、汗だくな私とは対極的にサヤカは汗一つ流していなかった。

まるで別世界のようで、あっちは天国、こっちは地獄のようだ。


「サヤカ・・・今日、暑いね・・・。」


「あら、そうかしら?私はそうは思わないわ。」


それはそうだろう、何せそっちには私の願望が全て揃っているからな。


「ね、ねぇ・・・私にもアイス、頂戴よ・・・。」


「いいわよ。」


「ほんとに・・・!?」


「はむ・・・ぅん・・・はい、どうぞ。」


そうしてサヤカから投げ渡されたのはアイス・・・の棒。なんかこれじゃないっていうか・・・ゴミを投げられただけというか・・・まぁ、とりあえず咥えておくか。そんな私の姿を哀れんで新しいアイスを持ってきてくれるかもだし。


「ありがとサヤカ。それじゃ頂きま―――」


「待った待った!馬鹿じゃないのあんた!?暑さで頭おかしくなったの!?」


「いや、アイスが付いていると考えればいけるかなーって・・・あ、アタリだー。」


「そのアイスにアタリは無いから!ちょ、ちょっと待ってなさい!今新しいの取ってくるから!」


そう言い残し、サヤカは大急ぎで部屋から出ていった。咄嗟に思いついた行動だったけど、意外と上手くいったな。

アイスの棒を口に咥えながら窓から半身乗り出して待っていると、サヤカが箱アイスを片手に戻ってきた。


「ほら!好きなの取りなさい!」


「わーい、ありがとー。」


まさか箱ごと持ってくるとは驚いた。差し出された箱から適当に一本取ると、オレンジ色のアイスであった。オレンジ味か、こんな暑い日には丁度いいな。

封を開け、一気に半分くらいかじりつくと、口の中で爆発が起きたかのような冷たさが広がり、そのすぐ後にオレンジのサッパリとした味が口一杯に広がった。


「あー、生き返るー!」


「あんたの家、アイス一本も無いわけ?」


「買っておくの忘れてたんだー。扇風機が壊れてたのも今朝知ったし・・・。」


「事前に準備しておきなさいよ。」


「どうやってさ。昨日まで春の涼しさがあったってのに、今日はこの暑さだよ?」


「天気予報があるでしょうが。まぁ、あんたが天気予報なんて見た日には、夏でも雪が降りそうだものね。」


「ありえないって事?」


「そうよ。残念な事にね。」


呆れながらも、サヤカは窓際で箱からアイスを一本取り出し、私と向かい合う形で食べ始めた。サヤカが食べていたアイスは紫色だから、多分グレープ味だろう。グレープも結構好きだ。果物ジュースを口一杯含んだ気分になれて幸せになれる。

自分のオレンジアイスを食べながら、私はサヤカがアイスを食べる瞬間をじっと見つめた。暑いとはいえ、季節はまだ春の為セミの鳴き声は聞こえず、サヤカがアイスを咀嚼する音がしっかりと聞こえる。

小さく口を動かしながらアイスを噛む彼女の口元に付いた紫の雫を目にした途端、私は無性にサヤカが食べているアイスが食べたくなってきた。


「ねぇ、サヤカ。それ一口頂戴。」


「やよ。私があげた自分の分があるでしょ?」


「いや味は違うじゃん。私のも一口あげるからさ。それにオレンジとグレープを合わせたらグレープフルーツ味になるかもだし。」


「ならないわよ・・・はぁ、仕方ないわね。ほら、一口だけよ?」


駄々をこねる私に呆れながらも、サヤカは自分のアイスを私に向けてきた。それに続き、私も自分のアイスをサヤカに差し出す。

私達はほぼ同時にお互いのアイスにかじりつき、お互いが相手の目を見つめながら顔を離していく。

味の方だが、当然ながらグレープ味だった。別にグレープフルーツ味を期待していた訳じゃないが、何の変哲もないグレープの味だったから、なんか拍子抜けだ。


「ぅん、オレンジもいいわね。」


「グレープフルーツにならなかった。ただの美味しいグレープ味だったよ。」


「当然でしょ?」


「ははは!」


「ふ、ふふふ!」


あれ?全然意識してなかった所為で気付かなかったけど、さっきお互いのアイスにかじりついた時、かなり顔が近くなかった?

体を密着した事は何度かあるけど、顔をあんな鼻と鼻がくっつきそうになるまで近付いた事なんか無かった。なんか、今更ドキドキしてきた・・・もしあの時、ちょっとでも顔を前に出していたら・・・!


「・・・危なかったな。」


「え?何がよ?」


「いや、こっちの話。危うく今日が命日になりそうな所だったんだ。」


「この短時間で何があったのよ!?」


「いや、今も現在進行形で心臓が痛いな・・・。」


「ちょ、ちょっと!?大丈夫なの!?」


「大丈夫、死んでも無いと思うから。」


「全然大丈夫じゃないわよー!?」


その後、私の身を案じて救急車を呼ぼうとするサヤカを必死で止めている内に、さっきまで感じていた暑さが嘘だったかのように消え、サヤカと共に新しい扇風機を買いに電気屋に行った。

岸サヤカ

・アイスはグレープ味が好み。アイスの中でも氷系のやつが大好物。


黒澤アキ

・カキ氷アイスが好きで、それと一緒に炭酸ジュースを飲むのが彼女の主流。

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