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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
一章 ほのぼのとした日常
15/81

岸サヤカはリベンジするつもりでいる。

スポーツ回。ルールが間違ってたらごめんなさい。

先生が緊急の用事の為に欠席して、今日の体育の授業は自由に運動する事となった。といっても、ほとんどの人は端っこに固まって適当に時間を潰している。真面目にやろうとしている自分が逆に馬鹿に見えてしまうな。

だが困ったな、自由に運動出来るとはいえ、何をやろうか。


「あー・・・。」


「アキ。」


軽い準備運動をしていると、サヤカが私の背中に膝を当て、そのまま後ろへ引っ張ってきた。サヤカ程度の力なら気持ちいいが、これが怪力の持ち主の仕業であったなら、私の上半身は90度に曲がっていただろう。


「どうしたの、サヤカ。」


「あんたってさ、苦手なスポーツとか無いの?」


「苦手なか~・・・あー、しいて言うなら卓球かな?あれ意外と難しいんだよ。」


「なるほどなるほど・・・。」


すると、サヤカはいそいそと卓球台を準備し、私の手にラケットを握らせた。


「よし。」


「・・・いや、なにが?」


「ふふふ、アキ?この前の屈辱、私は忘れてはいないわよ!」


「この前・・・あー、バトミントンの。なるほどリベンジって訳か。」


それで苦手な事を聞いてきたって訳ね。卓球なら本当に私も苦手だし、これなら良い勝負になりそう。


「サヤカ、卓球は出来るの?」


「もちろんよ!この前テレビで見たわ!」


そう言ってこの前も出来てなかったじゃないか・・・。


「球を打って弾く!ただそれだけ、単純な事よ!」


「あはは・・・それじゃあ、早速。」


私達は位置につき、早速試合を始めた。最初はサヤカからのサーブだ。まずはここでサヤカの力量を量ろうかね。


「それじゃあ、行くわよ!」


「はいよ、いつでも。」


「それ!」


「おっ!?」


サヤカがちゃんとサーブを打てた事に、思わず声を出してしまった。しかし、打ち返せない球ではない。余裕を持ってサヤカの方へ球を返すと、サヤカは素早い身のこなしで私の立っている逆側にスマッシュを叩き込んだ。


「やった!」


「おぉー・・・本当に出来るんだ・・・。」


「出来るって言ったでしょ?ふふふ、まずは1点目。ここから積み上げていくわ!」


「いいね、ようやくサヤカとスポーツが出来るよ。」


次もサヤカはちゃんとサーブを打てた。いいね、やっとサヤカと対等に戦えるよ。それなら、私も苦手ながら全力で行かせてもらおう。


そこから私達は白熱の勝負を繰り広げた。点を取られ、点を取り返す・・・その繰り返しが起き、点数は8対9と劣勢ながら互角の戦いだ。更に私達の熱い試合に興味を示した女子達も近くまで寄ってきて、私とサヤカの応援をしてくれる。


「良い試合だよ、サヤカ。」


「はぁはぁ・・・涼しい顔で言うわね・・・!」


汗一つかかない私と比べ、サヤカは滝のような汗をかいている。そう、ここからが本当の勝負だ。今まではセンスでサヤカは私に勝てていた。しかしここからは体力の差が顕著に表れる。

時間は20分程経ったかな?サヤカは20分間全力で体を動かした事は少ない。となれば、体力管理や体に圧し掛かる疲労感は未知の物だろう。例えこの1セット目をサヤカが取れたとして、続く2セット目、3セット目は満足に体を動かす事はほど不可能だ。

勝ちにこだわるなら、あえてこの1セット目を取らせてもいいけど・・・。


「サヤカ、突然で悪いけど、1セット先取にしようか。」


「ほんと突然ね・・・いいのかしら?一点差とはいえ、あんた負けてるのよ?」


「私が負けると?」


「・・・そうね、いいわ。あんたの要求受けてあげる。」


安心したよ、私の下手な優しさを理解してくれて。ギャラリーの女子達は私が不利な条件を出した事にザワついているけど、これで対等になったんだ。疲労しているサヤカはあと2点取れば勝ち。対して私はここから追い上げて3点取れば勝てる。

1点差という不利に思える状況だが、本来のルール通りなら、疲労しきっているサヤカから続く2つのセットを簡単に取れてしまう。

そんな勝ち方はつまらない。勝つなら、相手と対等な条件で勝たなくちゃ。


「それじゃあ気を取り直して・・・いくよ、サヤカ。」


「来なさい、あと2点・・・簡単に取ってあげる。」


サーブを打ち、私はサヤカの動きを観察しながら、次に球が返ってくる場所を予測する。彼女がラケットを振る瞬間に見えるラケットの向きが正面を向いており、球が左側に来る事を悟った私はサヤカが球を打つ前に左側に位置し、既に打つ準備を整えておく。

案の定、球は左側へ打たれ、既に打ち返す準備を終えている私はサヤカが立っている逆の方へスマッシュを叩き込んだ。


「あっ!?」


「1点・・・これで同点だ。」


「そうね・・・。」


サヤカは冷静だ。てっきり何か罵倒を私にぶつけてくると思ったけど、試合に完全に集中している。まだ油断は出来ないな。


サヤカが打ったサーブは素早く私の懐に飛びつき、私がバックで打ち返すと球が少し高く上がってしまう。


(まずい球が跳ねた!スマッシュを打たれる!)


スマッシュに対応するべく、私は台から少し離れ、スマッシュに備えた。しかし、私の予想は外れてしまう。

サヤカは絶好のチャンスボールをスマッシュで打ち返さず、ネットに掠らせながら私のコートへ打ち返してきた。


「うおっ!?・・・流石に今のは無理だな・・・。」


9対10。あと1点でサヤカが勝つ。まずいな、自分で決めたルールなのに後悔し始めている。サヤカになら負けてもいいと思ってたけど、私は自分で思っているより負けず嫌いらしい。


サヤカが2回目のサーブを打った。ここで私は思い切ったプレイを試してみた。球が私の陣地に跳ねた瞬間に、スマッシュを放った。入るかどうかは分からなかったが、運良く私が放ったスマッシュはサヤカの陣地に触れた後、体育館の壁に吹き飛んでいった。


「ふー、入って良かった・・・これで10対10。また同点だ。」


「・・・次で最後ね。」


「本当はデュースで、2点必要だけど・・・次で最後にしよう。」


さぁ、最後の勝負。隙もミスも作る訳にはいかない。おそらくサヤカは短期決戦で勝負に出る。そこを私がカウンターで返せば、今の疲労したサヤカでは返せないはずだ。


「いくよ、サヤカ。」


「来なさい・・・!」


サーブを放ち、私は台から少し離れてスマッシュに備えた。さっきのようにネットを掠めて返すなんて運が絡むような事はサヤカならしない。十中八九、ここでスマッシュを打つ。


「はぁ!」


読み通り、サヤカはスマッシュを打ってきた。私はラケットの面を壁のようにして、飛んできた球を弾き返した。弾き返った球は高く上がってサヤカの陣地に跳ね上がり、サヤカは再びスマッシュを打とうとしてくる。


(ここだ!)


タイミングを計っている為、どこへ返してくるかはサヤカの体勢から読み取れた。私は打ち返してくる方へ待ち構え、スマッシュしてきた球をスマッシュで返した。


「これは返せない!」


「っ!?」


勝った・・・そう思った時、私はすぐに気付いた。油断している自分とは裏腹に、サヤカはまだ勝つ気でいる眼をしている。


(打ち返してくる!?)


直感でサヤカが打ち返してくる事を悟ったが、一瞬の油断が仇となり、私の体は私の直感よりも遅く反応した。

サヤカが打ち返した球は私が動いた場所とは逆の方へ放たれ、私は打ち返す事が出来なかった。


「はぁはぁ・・・。」


「・・・やられた。」


10対11・・・私は、負けた。直後、地鳴りのように歓声を上げたギャラリーの女子達が押し寄せてきた。どういう訳か、勝ったサヤカにではなく、負けた私に。


「惜しかったですよ、アキさん!」

「けど、素晴らしい動きでした!」

「私のライバルである貴様が負けるとは・・・だが、敢えて言おう!健闘―――」


「ごめん、ちょっとどいて。」


周囲に集まった女子達を掻い潜り、床に横になりながら息を整えているサヤカの下へ近づく。


「負けたよ、サヤカ。」


「はぁはぁ・・・べ、別に、勝ったなんて、思っちゃいないわ・・・!」


「でも現に、私に勝ったじゃないか。」


「あんたが下手な気の利かせ方したから勝てたの・・・それに、あんた全然疲れてないじゃない・・・こっちはもうヘトヘトよ・・・。」


「それでも勝ちは勝ちさ。リベンジ達成おめでとう。」


「・・・はぁ。次は勝つわ、私の力だけで。」


「うん、頑張ってね?」


「その余裕なんかムカつく!」


「あははは!」


サヤカが私に勝った喜びと、私がサヤカに負けたくやしさ・・・その両方が混じって、私は笑うしかなかった。やっぱり私は、自分が思っている以上に負けず嫌いだ。


岸サヤカ

・かなりの負けず嫌い。特にサヤカ相手には人一倍負けず嫌いが発生する。


黒澤アキ

・良くも悪くも楽しければそれでいいと思える程、勝ち負けにはこだわっていない・・・と本人は思っているが、実際は誰よりも負ける事を嫌っている。

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