ルー・ルシアン
新キャラ回です。
先日サヤカから貰ったメールの通り、私は朝ごはんを食べてすぐにサヤカの家の前で待っていた。メールで家の前で待っていると送ると、『すぐに行く。』とだけ返信がきた。
それにしても、無駄な二日間を過ごさせてしまったな。まぁ、サヤカが張り切りすぎた所為でもあるけど・・・それでも、事の発端はやっぱり私だ。幸いお金は最近使う事が無かったから結構あるし、サヤカが欲しい服でも買ってあげよう。ついでに私のも何か適当な奴を買っておこうかな?
「お待たせ・・・って、あんた。その服で行くつもり?」
扉から出てきたサヤカが開幕一番に私の服を見て言ってきた。
「いや、これ部屋着。というか行くつもり?どこに?」
メールでは家に来てとしか書かれていなかった・・・いや、そうだったな。サヤカは変に突発的な所がある子だったね。
どこに行くかは分からないけど、とりあえず服を変えてこよう。私はサヤカにちょっと待っててと言い、急いで自分の部屋に戻って、外に出る時にいつも着ている服に着替え、またすぐにサヤカの家の前に戻った。
「ごめん、お待たせ。」
「ううん、私も言ってなかったしいいわよ。」
「それで、どこに行くの?」
「ふふん!ここよ!」
サヤカはバッグの中から一枚の紙を取り出し、それを私の前に突き付けてきた。サヤカが見せてきた紙は新しくオープンしたお店のチラシだった。
「ルー・ルシアン?何、この怪しい感じのお店・・・。」
「カフェよ。それもただのカフェじゃないわ!なんと猫カフェよ!」
「猫カフェ・・・そういえば一度も行った事無かったなー。」
「私もよ!という事で、あと少しで開店するから一番乗りで行くわよ!」
「一番乗りはどうかな~。けど、行ってみようか。」
「はい決まり!それじゃあ行きましょ!」
そう言ってサヤカは意気揚々とカフェへと向かい始めた。なんか変にテンションが高いな。そんなに猫好きだったけ?
サヤカの後をついていき、20分程で私達は目的地のカフェへ辿り着いた。お店の外観は洋風の造りで、壁にはアイビー?だったっけか、植物が壁を覆うように生えていた。まるで隠れた名店のような雰囲気を漂わせている。とても今日から開店のお店とは思えない。
「なんか老舗って感じだね?」
「猫カフェって書いてあるけど、本当にそうなのかしら?なんか暗い・・・。」
「ま、とりあえず入ってみよう。ほら、開店時間にもなっているし。」
想像していたお店とは違った所為で少し怯えているサヤカの手を引き、私達はお店の中に入った。
カランカランという鐘の音が鳴ると、カウンターにいる30代くらいの女性がカップを拭きながら私達に笑顔を向けてきた。
「いらっしゃい。」
「あの、ルー・ルシアン?ってここですよね?」
「そうだよ。やっぱり、カフェに見えないかしら?」
「そうですね。でも、こういうのも良いと思いますよ。」
これは私の本音だ。店の内装は外観と同じ程暗い印象を受ける造りで、不思議な物がそこら中に置かれており、カウンターに置かれている小型のスピーカーから流れている落ち着いた印象のある女性の歌が店内を包み込んでいる。
最近のカフェのようなウザったい明るさがこのお店には無い。そこを私は気に入った。
「ま、とにかく席に座って・・・四席しかないけど。」
「そうですね。ほら、サヤカ。」
「あ・・・うん。」
さっきからサヤカは居心地が悪そうにずっと下を見ながら私の手を掴んでいる。まぁ無理もない。人によってはこういう暗めの場所は結構怖がってしまうものだからね。
席につき、私はメニュー表を開いた。メニューには、【コーヒー】とだけ書かれており、他には何も存在していなかった。
「コーヒーだけなんですか?」
「ごめんね、まだ器具が揃ってなくてさ。後々追加するから、今日はコーヒーで勘弁してね。その代わり、良いの飲ませてあげるから。」
「自信家ですね。それじゃあコーヒー二杯―――」
注文し終える直前、サヤカがテーブルの下から私の手をトントンと叩いてきた。
「あ、一杯はミルクと砂糖を多めで。もう一杯のはブラックで。」
「はい。」
店員は私達に背を向けると、早速コーヒーを作り始めた。
「・・・ありがとう。」
ガリガリと削れる豆の音に掻き消される程、小さな声でサヤカが私に呟いた。昔から人見知りをする子だったから、まだ緊張しているんだろう。
そうだ、肝心の猫はどこにいるんだ?当初はそれが目当てでこの店に来たんだ。猫を見ればサヤカの緊張も少しは解れるかも。
「すみません。」
「ん?どうしたの?」
「あの、ここって猫カフェって聞いたんですけ・・・猫は?」
「あー・・・ま、いっか。」
「え?」
店員はコーヒーを作る手を止め、再び私達の方に向くと指を鳴らした。その瞬間、グラッと揺れるような、まるで自分達がいる場所が変わったような感じがした。
そして、私達は目を疑った。さっきまで、ほんの一瞬前まで目の前にいた店員の頭に、猫の耳が生えていた。
「じゃーん!私が猫でしたー!」
店員はピースしながら笑顔で告白した・・・いや、軽すぎるだろ。
「え、あの・・・本物?」
「本物ってあんた・・・作り物に決まってるでしょ・・・?」
「それじゃあ触ってみる?金色の髪のお嬢さん。」
店員はサヤカに、ほれ撫でてみろと言わんばかりに頭を近づけた。サヤカは疑心暗鬼になりながらも恐る恐る手を店員の頭にある耳に触れると、サヤカは驚きと歓喜が混じったような表情となった。
「ほ、ほ、本物だー!?!」
「え、本当に本物なの?」
「あんたも撫でてみなさいよ!これ本物の猫の耳よ!」
「そんなまさか。すみません、それじゃあ失礼して・・・本物だー!?!」
撫でてみるまで疑ってはいた。しかし、本当にこの耳は猫のものだ。触った感触や適度に動くし、何より店員の顔が滅茶苦茶赤面している。
「く、くすぐったいからこのくらいで勘弁してくれないかな・・・?」
「あ、ごめんなさい。ありがとうございます。」
「あはは・・・やっぱり驚く?」
「「そりゃそうでしょう!?」」
その後、店員から詳しい事を聞かせてもらった。彼女の名前はルー。なんでも、生まれた時から猫の耳が生えているらしい。ルー曰く、自分のような奇病を持つ人は世界には稀に存在すると言う。
正直、普通の人とは違うルー容姿に驚いた。けど、不思議と怖さや不気味さは感じられなかった。私達を喰おうとか、そういう妖怪じみたものじゃなく、ただ単純に私達と普通に会話を楽しもうとしている。容姿は確かに私達と少し違うが、たったそれだけだ。あとは私達と何ら変わりは無い。
結局、閉店時間の午後4時になっても、ルーのお店に私達以外の客が来る事はなかった。けどそのお陰で、私達は彼女と仲良くなる事が出来た。
お店から出て変える時、ルーは店の前で私達を見送ってくれた。そんなルーに、私達も手を振って、また来ますと約束を交わした。
「結構楽しかったね。」
「最初は驚いたけど・・・でも、いい所だったわ。またすぐにでも行きたいわ!」
「それじゃあ次の休み、また来ようよ。」
「そうね。そうしましょ!」
思わぬ形で、私達に新しい友人が出来た。少し人とは変わってはいるが、とっても面白くて可愛らしい友達が。また来よう、サヤカと一緒に。
そして次は美味しいコーヒーが出る事を祈っておこう。
岸サヤカ
・コーヒーには砂糖とミルクは欠かせない。
黒澤アキ
・コーヒーはブラックで飲む。本人曰く、砂糖やミルクを入れると、それはコーヒーじゃなくなると言う。
ルー・ルシアン
・奇病により猫の耳が生えている。人間の見た目は30代に見えるが、猫の年齢では4歳である。長い黒髪とスーツ姿から大人びた印象があるが、実際は子供のような無邪気な人。
新キャラ出しました。これから度々出てくる淳レギュラーです。




