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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
一章 ほのぼのとした日常
12/81

岸サヤカは探偵のつもりでいる。 四

二日目の朝4時。私は先日お風呂で思いついた考えを基にして、壁に貼り付けた情報の中から犯人と思わしき人物にマークをした。


「よし・・・多分、この二人かな?」


「ん?どれどれ~?」


小説を読んでいたサヤカが私の隣に立ち、壁にマークした人物を目で追っていく。


「サツキ、カズコの二人・・・。」


私がマークしたのは殺されたメグロの妻サツキ、そしてメグロが過去に交際していたカズコである。私が目を留めた場面は中盤に差し掛かった辺りで見つかったメグロの日記だ。日記にはこう記されている。


『妻を愛している・・・だが、僕の心の隅には未だカズコがいる。カズコはイツキと結婚し、僕はサツキと結婚した。もうお互いにパートナーがいる。もうあの頃のような関係には戻れない、そんな事はカズコと別れた時に分かっていたはずだ。それでも僕は、カズコを愛してしまっている。妻と同じほど・・・。』


何故メグロがカズコと別れたのか、その理由は書かれていないが、メグロはサツキと結婚した後でもカズコを想い続けていた。


「なーんか、このメグロっていう人は女々しい人よね。別れた相手をいつまでも想い続けているなんて。結婚しているのによ?」


「それほど好きだったんだよ。それで、この二人の内どっちかだと思うんだけど。サヤカはどっちだと思う?」


「私はサツキね。理由はこうよ。」


するとサヤカは机の上に置いていたハサミを手に、扉の前に立った。嘘でしょ、また私刺されるの?


「まず、サツキがメグロの部屋に入った。理由は何でもいいわ。部屋に入ってきたサツキを全く警戒していなかったメグロは窓を開けながらサツキの相手をしていた。ここで多分、サツキはメグロに問い詰めたんじゃないかしら?」


「まだカズコに想いを抱いている事を?」


「そう。そしてメグロはそれを認め、愛している自分の夫が他の女の事を想っているのが許せないサツキは、持っていた刃物でメグロを刺した。」


ハサミを両手で構えているサヤカが私に突っ込み、私の腹にハサミが押し込まれた。本当にハサミが刺された訳ではないが、何度やられてもドキッとする。


「自分は殺されても文句が言えなかったメグロは抵抗せず、そのまま後ろへ倒れていって、サツキは刺したハサミを持って窓から外へ逃げ出した・・・これが私の推理よ。」


サヤカは腕を組んで、私を見上げた。今語った自分の推理が絶対だと言わんばかりに自信を持った表情だ。可愛い奴め、頭を撫で回してやろうか?

しかし、サヤカの推理は納得出来る。自分の好きな人が自分以外に好意を持った事を知れば、怒りと悲しみに身を任せてしまうかもしれない。自分にまだ好意を寄せている今の間に殺して、これ以上自分以外に好意を上げさせない為に。


「良い推理だね、サヤカ。」


「でしょ?」


「けど、私の推理は少し違うんだよね。」


「違うって?」


そう、私の推理はサヤカとは違う。殺害に及んだ動機はほぼ同じ見解だが、殺した人物が別だと思っている。


「私は、カズコが犯人だと思うんだよね。」


「確かに昔の恋人だけど・・・カズコもメグロと同じく、まだ相手を想ってるって事?」


「そうだね、それもあるよ。」


「他にも何かあるの?」


私はペンを一本持ち、壁に貼っていた中から、とある一枚に印を付けた。印を付けた紙に書かれていた内容は、カズコの夫であるイツキ、マツコの娘であるキクが同じ時間帯に外にいた事が書かれたものだ。


「この二人が同じ時間帯に外にいた。ここに私は目をつけたんだ。」


「え?でも、小説内では特に何も詳しく書かれていないけど?」


「書かれてないね。けどサヤカ、そもそもこの小説は少しおかしいんだ。推理小説だというのに、書かれてある情報があまりにも少ない。この二人だけが外にいて怪しく書かれているにも関わらず、その事に深く追求していないんだ。だから私は、この小説では読者の想像力を試されているんだと思うんだ。」


「状況だけ書かれて、その内容は読者に丸投げしてるって訳ね。確かに、そういうのが多かった気がする。」


「そこで私はイツキとキクが外で何をしていたのかを考えてみたんだ。これは本当に憶測だけど、二人は関係を持っていたんじゃないかと思うんだ。つまり、イツキは何かの理由をつけてキクを家の中から連れ出し、小屋の中に入って情事を始めた・・・とかかな?」


「その考えに至ったのはどうして?」


私は再び壁に貼っていた紙の中から一枚を取り、机の上に置いてサヤカに見せた。その紙には殺されたメグロを発見した人物の順番を書いたものだ。

最初に発見したのは母親であるミヨコ。そしてサツキ、カズコ、マツコ、イツキとキクの順だ。二人は最後に、しかも二人揃って現れている。

更に私は壁からもう一枚紙を取り、そこに書かれていた中からとある一文をペンで線を引く。


「この一文。『初めて見た人の死体に怯えているのだろう。キクという少女はさっきからずっとイツキにくっついて離れない。』という所。確かに男性に頼りたいっていうのもあると思うけどさ、普通既婚者の人にこんな風にくっついたりしないし、本当に怖い思いをしているのなら母親の方に行くと思うんだよ。」


「まぁ、確かに・・・だけど、それとカズコがメグロを殺した事に何の関係が?」


「カズコは、自分の夫がキクと関係を持っているという疑惑があって、この誕生日会で妙にくっついてくるキクと、それを受け止めている夫の姿に、夫が浮気をしている事に気付いた。すっかり夫への愛が薄れていき、カズコは昔付き合っていたメグロに関係を持とうとしたが、それを断られてしまう。誰からも愛情を向けられなくなってしまったカズコは、僅かに自分に好意を持っているメグロを殺した。メグロがまだ自分に好意を抱いている内に。」


「それがあんたの推理って訳ね。けど、ほとんどがあんたの憶測な訳でしょ?」


痛い所を突かれた。サヤカの言う通り、私の推理は憶測に過ぎない。確かに色々とそれらしき場面からこの推理に至った訳だけど、本当にこの推理が合っている自信はあまり無い。


「お互い、自分の推理に確証をまだ持てないわね。」


「けど、一歩前進・・・いや、あともう一歩の所まできてると思うよ。」


「そうね・・・あと一つ、何かヒントが隠されていると思うんだけどねー。」


そう言って、サヤカは途中で読み止めていた小説の続きを布団の上で横になりながら読み始めた。私はというと、壁に貼った情報が書かれた紙を見ながら、犯人により近づく為に新しいヒントを探し始めた。

あと一歩、あと一歩の所まで私達は近づいている。

岸サヤカ

・蕎麦よりうどん派。薬味は入れず、油揚げを入れるのが好き。


黒澤アキ

・うどんなんかより蕎麦派。七味を四振りし、素早く食べ終える。

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