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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
一章 ほのぼのとした日常
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岸サヤカは探偵のつもりでいる。 三

時刻は早くも20時を過ぎた。あれやこれやと議論を交わしている内に時間はあっという間に過ぎてしまった。現段階で、私達は事件の真相に一歩も近づいていない。飲んだコーヒーは5杯を優に超え、サヤカに刺された回数は26回くらいだ。

そんな訳で、最初は元気ハツラツとしていた私達はすっかり疲れ果てていた。


「サヤカ、大丈夫?」


「ね、眠い・・・。」


「ちょっと仮眠したら?」


「だ、駄目よ・・・ルール・・・違反・・・。」


「それじゃあお風呂にでも行ってきなよ。このままじゃ黒目が裏側に行っちゃうよ?」


「・・・うん、先行くね。」


立つ動作だけでサヤカがどれだけ疲れているのかが分かった。サヤカは左右にフラつきながら部屋を出ていく。


「転がり落ちるんじゃないだろうね・・・。」


心配になって私も部屋から出ていき、サヤカの後を追った。階段前に行くと、丁度今からサヤカが階段を下りようとしていたところで、一段目を下りようとしていた。

しかし、サヤカの足は一段目をすっ飛ばし、二段目に伸びていき、バランスを崩した彼女の体はグラリと前に崩れていこうとした。


「危ない!」


咄嗟にサヤカの服を引っ張り、私の方へ抱き寄せる。危ない危ない・・・本当に転がり落ちそうになるなんてね。


「ふぅ・・・お風呂まで一緒に付いてってあげるよ。」


「ありがとう・・・ごめんね。」


なんだろう・・・なんか昔のサヤカみたいだ。弱弱しくて、私が何かしてあげたら必ず謝る癖のある昔のサヤカ。最近のツンツンとした彼女に慣れて、こういう一面があった事を懐かしく思える。


なんとか脱衣所までサヤカを連れて行き、役目を終えた私が去ろうとすると、サヤカが私の腕を掴んできた。


「ん、サヤカ?」


「ごめん・・・一緒に、来て?」


「へ・・・へぇ!?」


眠気がバッチリ覚めた。「一緒に来て」とは、それはつまり一緒にお風呂に入るという事で?


「い、いいの?」


「はーやーくー・・・。」


なんだこの可愛い娘は・・・可愛さで失神しそうだ。刺激が強すぎる甘々な彼女から視線を外していると、死角から服が床に落ちる音が聴こえた。ちょっと待って、本当に一緒に入るの?いや、同性だから一緒に入るのは何らおかしくないけどさ、私の気持ちっていうか劣情って言うか、そういうのが暴発しないか不安なんだけど?


「先、行ってるから・・・すぐ来てね?」


そう言い残してサヤカは先にお風呂に入っていった。


「すぐ来てって・・・いや、すぐは―――」


いや、ここでヘタレて何が女だ!それに私がここで悩んでいる間に、サヤカがお風呂で溺れる可能性もある。

サヤカの為に一緒に入る、いやサヤカの為に一緒にお風呂に、私は入らなければいけない!


「よし!ファイッ!」


自分でもテンションがおかしいと思いつつ、私は着ていた衣服を颯爽と脱ぎ捨て、風呂場に向かった。


「サヤカ!」


「え?きゃあああああ!!!」


「へ?ぶへぇ!?」


風呂場の扉を開けた途端、サヤカは悲鳴を上げながらシャンプーのボトルを私の顔面に向けてストレートで投げ飛ばしてきた。


「痛っつー・・・なにすんの!?」


「こっちの台詞よ!あんたなに自然とお風呂に入ってきてるのよ!私が入ってるのくらい分からないの!?」


あるぇー?なんか、さっきのサヤカと別人みたいだ・・・もしかして、もう目が覚めた?早くない?


「まったく!」


「あー・・・ごめんね、いきなり。それじゃあ、私はこれで・・・。」


「・・・待ちなさいよ!また服を着直するのも面倒なんだから・・・入っときなさいよ。」


「え?あ、じゃ、じゃあ・・・ご厄介になります・・・。」


体にお湯をかけ終えたサヤカは先に湯船に浸かり、続いて私も体にお湯をかけていく。なんだか、変な雰囲気だ。反響する水の音・確かに聞こえるサヤカの呼吸・・・駄目だ、なんかやばい。落ち着け私、ここで雰囲気に惑わされたら次は殺される。ここは体に冷水を打ち付けて落ち着かないと。


「ふぅー・・・冷た!?ちょ、ちょっとあんた!なんでお湯じゃないのよ!」


「ちょ、ちょっと諸事情でね。」


「はぁー、変わってるわね。ほら、さっさとあんたも入りなさいよ。」


「いや、流石に狭くなるでしょ?」


「私もあんたも細いんだから大丈夫よ。」


それでも体が密着する事に変わりはない。ここで断れば機嫌を損ねてしまう、なら私も一緒に入らないとね。決して下劣な考えなど持ってはいない、決してね・・・いや、やっぱ少しあるかも。


「それじゃあ・・・失礼します。」


「はい、どうぞ。」


私はサヤカに背を向けた状態で湯船に入った。案の定、私の背にサヤカの体が密着するような形になってしまい、私はもうのぼせそうになってしまった。


「あー、それにしてもこんなに難航するなんてね。」


そう言いながら、サヤカは私に抱き着いてきた。サヤカの柔らかな体がさっきよりもダイレクトに伝わり、胸の奥で熱が込み上がっていく。


「犯人どころか、どうやって殺されたのかも分からないなんてね。」


「ソ、ソダネー。」


「お風呂から出たら、私も読んでみましょうかしら?」


「ソ、ソダネー。」


「あんた人の話聞いてる?そんなに疲れてるの?」


私の耳元でサヤカが囁いていた。いや、困った。このままじゃ死んじゃう。いやでも、サヤカに殺されるのなら、悪くないな・・・サヤカに殺されるなら悪くない?


「そうか!」


「きゃ!?なによ急に立ち上がって!」


「愛している人だよ!」


「愛してる人?一体なんの話よ?」


「メグロは抵抗出来なかったんじゃなく、抵抗しなかったんだ!愛している人、つまりこの人になら殺されてもいいと思える人に殺されたんだ!」


「なるほど・・・それで、なんで急にその考えが頭に思い浮かんだの?」


「え?あ、いっやー・・・私の心の奥底に眠っていた乙女心が教えてくれた、とか?」


「ふーん、あんたにも乙女心とか残ってたんだ。」


ふぅ、なんとか誤魔化せた。とにかくキッカケがあれだけど、事件解明に一歩近づいた気がする。

岸サヤカ

・お風呂は1時間以上入る。


黒澤アキ

・風呂は長くても30分。早い時は10分で出てくる。

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