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岸サヤカはツンデレのつもりでいる  作者: 夢乃間
一章 ほのぼのとした日常
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岸サヤカは探偵のつもりでいる。 二

三連休の一日目。時刻は九時過ぎ、天候は極めて晴れやか。絶好のお散歩日和だが、私達は今日から三日の間、推理小説内の犯人を特定するまで一歩も外を出歩く事はない。風呂やトイレを除いて部屋から出る事を禁じている。

何故ここまで自分を追い込むような事をするのか、それは私にも分からない。というのも、これを決めたのはサヤカだ。

先日、寝る前にメールが入った。メールの内容は、この三連休の間のルールが書かれていた。


『一 お風呂・トイレの場合を除いて部屋から一切出ない。

 二 食事は軽く、飲み物はコーヒーかお茶のみ。

 三 寝ない。                    』


中々にハードなルールだ。しかし、ここまで厳しいルールを作ったという事が、サヤカがこの犯人探しに本気になっている証である。となれば、私が文句を言う意味も必要も無い。


という訳で、今はサヤカの到着を待つ間、壁に貼り付けた犯人の手掛かりとなり得る情報を書き留めた紙を睨んでいた。


「アキ!やるわよ!」


「うわ!?」


いきなり扉が勢いよく開き、トレンチコートを着たサヤカが部屋にズカズカと入り込んできた。


「随分・・・気合い入ってるねー・・・。」


「まずは形からって言うでしょ!それに、あんたも気合い入ってるじゃない?この壁一面に張られた紙。」


「あー、一応もう一度読み直してみたんだけどさ。とりあえず主人公以外の人物についてのまとめ、犯行時刻にどこで何をしていたのか・・・あとは細かいところさ。」


「えっと確か、犯行時刻に外に出ていたのがイツキ、キクちゃんだったわね。その二人の内どちらかが―――」


「それがさ、昨日の推理が間違っていた可能性があったんだよね~。」


「え?」


私はデカイ紙に書いた犯行現場の絵を机の上に置き、一つだけ開いている窓を指差した。


「ここ。私達はてっきり犯人は外から中に入ってきたと思っていた。でももう一つ考えられるのは、犯人は中から外に逃げた・・・こと。」


「中から外に・・・なるほど確かに。となれば、容疑者は全員って事になるのね。」


「まぁそうなるね。」


机から離れ、壁に貼り付けた紙の前に立ち、私はサヤカに登場人物のそれぞれの関係の説明を始めた。


「メグロの母ミヨコ。夫はメグロが産まれてすぐに他界し、女手一つでメグロを育てた。ミヨコの方はメグロに愛情を持っていたけど、メグロの方は母の過剰な愛情にうんざりしていたみたいね。」


「親バカって奴ね。そしてそのミヨコの友達であるマツコ、そしてその娘のキク。あとはメグロの友達であるイツキ、そして妻のカズコ。最後に、メグロの妻であるサツキ。」


「そもそも、何故メグロの家でここまで人が集まったのかって言うと、この日はメグロの誕生日だったようね。イツキ夫妻はメグロの招待で、マツコ親子はミヨコが勝手に招待したみたい。」


「なるほど、なるほど・・・人物関係は分かったわ。それじゃあ次は再現してみましょ。ほら、あんたメグロの真似!」


「え?私が?・・・まぁ、いいけどさ。」


背中を叩かれながら私は部屋の中央に横になり、私がメグロと同じ姿になると、サヤカは窓を開き、事件現場とほぼ同じ状態にする。


「被害者はこんな風に死んでいた・・・部屋は荒らされてなくて、争った形跡も無い。」


「ちなみに外は雨だったみたい。」


「こらこら死体は喋らない!」


「分かった分かった、大人しく死んでるよ。」


「・・・雨が降ってたなら、足跡が部屋に残っているはずよ。なら、やっぱりあんたが言っていた通り、犯人は中から外に逃げたのね・・・よし。ほら、次は立って!ちょっとあんたの事刺してみるから。」


サヤカはもうすっかり探偵の気分でいる。まぁ、私もサヤカ程ではないけど、結構楽しんでるけど。

私が立ち上がると、サヤカは机からハサミを取り出し、その刃の先を私に向けてきた。


「・・・ほんとに刺さないよね?」


「多分ね。」


「多分って・・・それじゃあ、やってみようか。」


私が窓の方を向き、サヤカは一度部屋から出て、もう一度部屋に入ってきた。扉が開く音が聴こえ、私が振り返ると、サヤカは素早く私の懐に飛び込み、持っていたハサミを私の腹部に刺したフリをする。


「こんな感じかしら?あんたはどう思う?」


「う~ん・・・部屋の扉が開く音で振り返った時、避けようと思えば避けられたな。」


実際の犯行現場の場合、殺されたメグロと扉の距離は今よりも離れている。となれば、避ける事はもっと簡単なはず。唐突に襲われて体が硬直したなんて事もあるが、殺されたメグロという男は警察官なんだ。警察官であるメグロが簡単に刺されるとは思えない。刺されたとしても少しは抵抗をするはず。


「殺され方が違うのかしら?」


「そうかも。」


「まぁ、ゆっくりやっていきましょ!今日を合わせてまだ三日あるんだから!」


「そうだね・・・私、三日間で何回刺されるんだろうか・・・。」


こうして、後に地獄と化す三日間の推理合宿の幕が開いた。

岸サヤカ

・犯人役か被害者役のどっちを選ぶかと言うと、必ず犯人側を選ぶ。


黒澤アキ

・どんな事でもサヤカが選ばなかった方を選ぶ。

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