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3話

 お久しぶりです。なかなか時間が取れずこんなにも時間が経ってしまい申し訳ありませんでした。

 これからも、不定期更新とはなりますがお付き合いくださるとありがたいです!何卒!

 もう昼をとっくに過ぎているのもあって依頼の数は少ない。

 しかも、残っているのは『ペット探し』や『子守り』などの雑用か俺たちでは到底受けられないドラゴンの討伐のような高ランクのばかりだ。

 挙句の果てには『新薬の被験体になってほしい』や『魔法の的になってほしい』、『私をいじめてほしい』などの明らかに怪しい依頼までもある。

 正直、異世界に来てまで雑用はやりたくないし死にたくもないから受けられる依頼は害獣討伐や街道、町周辺の魔物の討伐などの常時貼られている依頼に限られてくる。


「ホーンラビット討伐なんて良いんじゃない?」


 シアンが指差したのは常時依頼であり、Dランクのものだった。確かに今の俺たちに持ってこいの依頼だな。


「ホーンラビット?なぁ、ホーンラビットってどういう魔物なんだ?ラビットっていうから兎型の魔物か?」


「角のあるウサギ型の魔物よ。

 農作物を食い荒らす害獣なんだけど取れる毛皮は良質でギルドでは大変喜ばれるの。だから、常時依頼として常に張り出されているの。

 性質は大人しいのだけど、動きは俊敏で素早くて、すぐに逃げるの。でも、稀に逃げずに体当たりや頭突きをして、反撃してくるのもいるから注意が必要よ」

「つまり、そこまで恐れる必要は無い上にある程度儲けが見込める手頃な魔物って事か。」


俺達は依頼の書かれた紙を手に取り受付へ向かった。カウンターを見ると先程の受付嬢の受付だけが空いていた。


「すいません!あの〜お姉さん、この依頼を受けたいんですけど」


「あ、先程の…そう言えば、まだ名乗っていませんでしたね。私はエマ・テイラーと言います。気軽にエマとお呼びください。

 で、早速依頼を受けるんですね。…ホーンラビットの討伐ですか。危険度は低いですが油断せずに頑張って下さい」

「はい、ありがとうございます」


エマさんは手早く依頼受領の手続きをすると、依頼の場所を荒い紙に書いた簡易的な地図を渡してくれた。これは助かるな。


「ギルド発行の簡易資料です。場所はここに書いてあります。」

「分かりました。ありがとうございます」


 俺はエマさんにお礼を言うとシアンとともにギルドを出て、街の外に通じる門に向かった。

 門に着くと街を出ようとする人々のちょっとした列ができていた。とは言ってもそこまで大きな街では無いため並んでいる人数は20人ほどしか居ない。


「こんなのがあるのか」


列に並びながら俺はそう呟いた。


「おう、あんたら見ない顔だな。冒険者か?」


声のした方へ振り返ると、そこには大きな荷物を背負い、商人風の格好をした髭面の男がこちらに気のいい笑顔を向けて立っていた。


「は、はいりさっきなったばかりですけど」

「そうかそうか!俺は品物の仕入れにこの街にくるんだ。その時に冒険者には世話になるからな。あんたらが1人前になったら仕事の依頼をするかもしんねえな!そんときはよろしく頼むよ!」

「はい、どうぞよろしくお願いします」


 随分と気さくな男だ。まぁ、それくらいじゃないと商売なんてできないんだろう。

 そんなことを考えながら列に並んでいると、俺たちの順番が来た。


「次!‥身分証となるものはあるか?」


 俺たちは自分の冒険者カードを差し出した。それを受け取った門番は訝しげな表情をしながらこちらをジッと睨みつけてきた。


「…冒険者か。しかし、それにしては武器を持っていないように見えるんだが?」


「「あっ…」」

「…なあシアン、お前武器持ってるか?」

「持ってるわけないじゃない何も用意しないで連れこられてるんだから」

「最初に言えよ!武器を持ってないのにどうやって敵を倒すんだよ!」

「それを言ったらアンタだって浮かれて忘れてたじゃないの!それをなんで私のせいにするのよ!」

「お前が討伐クエストを選ぶからだろ!採取系のクエストなら武器も必要無かったのにこの使えないウザ女神が!」

「あー、またウザ女神って言ったー!」


 シアンが涙目になりながらプリプリと怒るが、俺に非は全くない…と思う。

 そして、そんなことをしている間にどんどん門番の表情は険しくなっていく。

 まぁ、それも当たり前だろう。そもそも命の危険だってある冒険者が武器も持たずに依頼をしに行くなんてどう考えても怪しすぎる。


「で、どうするんだ?通りたいのか、通りたくないのか?通るんだったら一旦兵の詰め所に…」


 まずい、このままではこのウザ女神だけでなく俺まで犯罪者として捕まってしまう。それだけはどうしても避けなければ!

 …しょうがない、一旦装備を揃えてから出直そう。


「すみません、一旦出直します」


 俺は門番にそういうと、スッと小脇にシアンを抱えてその場を立ち去った。


「ちょっと、降ろしなさいよ」


 シアンが少し不貞腐れながらバタバタと暴れる。


「しょうがねぇな…ここまでくれば大丈夫だろ」


 俺はため息を吐きながら両手を離した。すると、シアンの体は当然ながら重力に引かれて、勢いよく地面とキスをする羽目になった。


「いった〜い!ちょっと何するのよ!」

「…よし、一旦武器屋に行くか」


 俺は騒ぐウザ女神を無視して、スマした顔をしながらスタスタと鍛冶屋を探して歩き出した。


「ちょっと置いてかないでよー!」


 5分ほど歩いて俺はふと立ち止まった。辺りを見渡せば全く持って見覚えのない景色。


「ふむ…」


そう、この状況から考えられることは1つ!


「迷った!」

「何やってんのよ!ほんと使えないんだから!」

「仕方ねぇーだろ!この世界来てまだ一日も経ってねぇんだぞ!そういうお前こそ一応元なんとかなんだから武器屋の場所くらい知ってるだろ!」

「元なんとかって何よ!現役女神ですけどー!しかもわたしは日本の女神だったし他の世界のことなんか知ったこっちゃないわよ」


(コイツ、想像以上に使えねぇ…)

 ここで言い合いをしていても仕方がないからどうにかして鍛冶屋を見つけないとな…。

 取り敢えず、人を探して道を聞いてみるか。


「あの、すみません」

「……チッ」


 近くにいた通行人に声をかけると俺たちの方をチラ見して、そのまま舌打ちをしながら足早に去っていった。


「あれ?」


 露骨に無視された。いや、無視どころか舌打ちまでされてしまった。

 …俺は何か気に触ることでもしたか?


「何で舌打ちしてきたんだあの人?」

「なんでかしらね〜?」


 背後から聞こえた少し皮肉をを含んだような声に振り返ると、そこには今にも笑い出しそうなのを口に手を当てて堪えるシアンの姿があった。


「な〜に笑ってんだ?」

「だって話しかけただけで舌打ちされてるんだから笑っちゃうわよ」


(はぁ、なんだかもうこのウザ女神の相手をするのも疲れてきたな…。よし、無視しよ…ん?)

 ぷぷぷと笑うシアンの背後に、金床のようなマークの看板を吊るした店があるのが目に入ってきた。


「あっ!鍛冶屋!鍛冶屋」

「火事!?どこどこ?」

「バカ、後ろだよ!ほら、鍛冶屋あるじゃないか」


 俺はシアンの後ろを指差しながらそう言った。


「えっ、ほんとだ!」

「何で気づかなかったんだろ…あー無駄に疲れた、とりあえず中に入ろうか」

「そうね」


 なんやかんや疲れを感じ始めていた俺たちは、ほっと息をついて鍛冶屋の戸を叩いた。


「いらっしゃーい」


 中に入るとそこには革手袋とゴーグルを付け、桃色の髪をした店員と思われる少女が店番をしていた。


「防具や武器がたくさんあるな!」


 店内には所狭しと剣や槍、鎧や盾が並んでいる。まさに異世界の鍛冶屋のイメージそのままだ。


「鍛冶屋ですからね」


 1人テンションが上がっている俺の元に、品物の手入れをしていたと思われる桃色髪の少女が来てそう言った。


「本日はどうされました?」

「クエストに行くための武器が欲しくて」

「なるほど、予算はどれくらいですか?」

「あっ…」


 完全に失念していた…よくよく考えれば俺もシアンも手持ちが無いんだった。

 …これではどうしようもないな。しょうがない、出直すか…


「すみません…また来ます!シアン、行くぞ」


 俺は、店の品をいじっていたシアンを呼ぶと店の出口に向かった。


「お待ちください!後払いで武器を貸し出すこともできますよ」


 店を出ようとした俺たちを少女がそう言って呼び止めた。


「そうなんですか!?じゃあそれでお願いしたいです」

「承知しました。少々お待ちください」


 そういうと、店員らしき少女は店頭に置いてあった武器をいくつか持ってきた。

 剣や斧、短剣、杖などの多種多様な武器が小さな腕いっぱいにに抱え少しよろけながらこちらへ歩いてくる。


「おお〜ロングーソード!かっけ〜」

「試してみますか?」

「是非!」


 俺は早速渡されたロングソードを構えようと手に取る。

 しかし、いざ持ってみると想像以上の質量が両手にのしかかってきた。


「重っ!?」


 危うく落としそうになり、慌てて剣を再度握り直した。


「あぶねぇ〜…うーん、これよりもうちょっと軽い武器はありますか?」

「それならショートソードなんていかがでしょうか?比較的軽くて片手でも扱いやすいですよ」


 そう言って、少女は1mほどの片手剣を勧めてきた。意匠は少ないがそれゆえに丈夫そうだ。

 何より、先ほどのロングソードに比べ長さの分扱いやすそうに見える。


「じゃあちょっと持ってみても良いですか?」

「どうぞ」


 ショートソードを手に取る。ずっしりとした重みが手に伝わってくるが、少女の言った通り片手で持てる程度の重みだ。

 これくらいなら、どうにか扱えるだろう。


「確かにちょうど良い、これなら俺でも上手く扱えそうです。」


 さて、次はシアンの番だ。


「私は魔法職だし杖でいいかしら」

「となるとショートワンドなどいかがでしょう、試してみますか?」

「ええ」


 シアンは杖を手に取ると感触を確かめるように握ったり、構えたりした。


「良さそうね」


 これで俺たちの武器は大丈夫そうだ。だが、問題は…


「えっと、試した後でなんですが…貸し出し料金はいくらぐらいですか?」

「一人10ティアになります」


 確か…依頼の報酬が1匹10ティアで、買取報酬もあったはずだ。

 値段で言えば破格だな。


「ずいぶん安いですね。どうしてそんなに安いんですか?」

「それは…私はまだ見習いなので武器の宣伝の意味も込めて、師匠ではなく私が打った物をお貸ししてるからです」

「なるほど」

「それは美しい心がけねそういう人にこそ幸運が訪れるものよ」

「あはは…ありがとうございます」


 尊大なシアンの言葉に、店員が苦笑しながら答えた。

 何はともあれ、これでやっと冒険に出かけられそうだ。俺たちは借りた武器を装備すると鍛冶屋の少女に向き直る。


「ありがとうございました。えっと…」

「あ、私は鍛治師見習いのベニスモモです」

「俺はタツヤです」

「私はシアンよ」


 互いに自己紹介をした後、俺たちは店を出た。


「じゃあ門に戻ろうか」

「そうしましょう」


 街の出口となる門に着くと、先ほどとは異なり、待機列が無いほどまでに空いていた。これなら、待ち時間なしで出られそうだ。

 俺たちは早速門番の前に立った。


「ん?お前たちはさっきの…」

「はい。今度はちゃんと武器を持ってきました」

「ふん…そのようだな。で、要件は…」

「ホーンラビットの討伐依頼です」

「そうだったな。では、冒険者カードの提示を」

「「はい」」


 俺たちは冒険者カードを門番に手渡した。

 門番はカードを受け取り、神妙な面持ちになるとカードを凝視し始めた。すると、冒険者カードの文字が光り出した。どうやら、魔力を流すと光るような仕組みになっているようだ。なるほど、こうやって偽造防止をしているのか。


「うん、本物のようだな。通ってよし!」

「「ありがとうございます」」


良かった…今回は問題なく門を通過することができた。


「じゃあ行くか」

「そうね。行きましょう」


 周りを見渡すと、門から正面に道が伸びており、街の周りには草原が広がっていた。右手には川が流れており、快晴なのも相まってのどかな空気が流れていた。


「さて、とりあえず依頼の場所をもらった地図で確認するか」


 俺はジャージのポケットから貰った地図を取り出して現在地を確認した。


「えっとここが門だから北に行けばいいのかな?」

「じゃあこっちね」


そういうと、シアンは迷いなく歩き出した。

………が


「バッカ、そっちは西だ。北はこっちだよ」

「五月蝿いわね!ならあんたが前に進みなさいよ」

「いや、ここに地図あるんだからこれ見て動けよ」

「分かったわよ。こっちに行けばいいんでしょ!」

「お前はバカか、そっちは東だよ。北はこっちだって、ほら行くぞ」


 そう言って俺はシアンの前を歩き出した。少し歩くと、遠くに何やら動く小さな影が見えてきた。

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