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第一話⑥
会場はパニックになっていた。突然の魔物の暴走に、逃げ惑う人々。司会が落ち着いて行動するように促すが、司会の口調が慌てているからだろう。効果は感じられない。
「おいおい。何があったんだ……?」
刀を肩に乗せ、ブリードは暴れ回る魔物を見る。
「おい! お前も逃げた方がいいぜ。さすがにこの数をいっぺんに相手にするのは厳しい」
近くに来た、猪に似た魔物の横っ腹を、決勝相手の魚人が槍で貫く。それから魚人は会場の外へと走り去っていった。
「確かに、これは逃げた方が良さそうだ」
刀を鞘に納めるブリード。すぐに走り出すが、女の子の泣き声が聞こえた。声のした方を見ると、足をさすっている女の子がフィールドにいた。観覧席には、母親と思われる人物が、人ごみをかきわけようとするが、人の波に押されているようだった。母親が何か叫んでいる。女の子の名前だろうか。
ブリードは舌打ちをした。