第一話⑤
長い廊下を走るロゼと騎士団長タレス。部下のフリージアには避難の指揮を任せたため、二人とは別行動をしている。
やがて、二人は広い空間に出た。一人の騎士が壁にもたれかかって倒れているのを発見した。
「これは」
とロゼが辺りを見回すと、更に数人の騎士が倒れていた。壁の一部は半壊しており、選手がいるフィールドが見える。
立っているのは、二人だけだった。騎士と、紫色の髪をした少年。
少年――ヴォルトが最後の騎士に手のひらを向ける。すると手から球体の雷撃が放たれた。騎士は雷撃をまともに食らい、吹き飛んだ。
騎士が吹き飛んだ先は、魔物を閉じ込めていた檻だった。騎士が檻に衝突すると、檻が歪んだ。魔物は外へ出ると、暴れ回った。その際に、大型な魔物を捕らえていた檻も破壊されてしまう。
「しまった! 闘技用に捕獲していた魔物が会場に」
騎士団長が苦々しくつぶやく。
「面倒なことになったな」
と、ヴォルトも淡々とした口調で、会場を見つめた。
このままでは犠牲者が出る。魔物を倒すべきか、目の前のヴォルトを鎮圧すべきか。騎士団長は一瞬、迷った。
その一瞬の間に、行動する人物がいた。ロゼだ。ロゼは戦闘フィールドへと走り出す。
「わたしが行きます!」