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7話

 すずお君一行は明け方近くに起きて身支度をすませた。


 すずお君はテッド氏に起こされた。意外と寝起きが悪いので最終的に布団をまくられて叩き起こされた。


「……すずお君。早く起きろ!」


「……う〜ん。後10分寝かせて」


「起・き・ろ!!」


 耳元で叫ばれた。さすがに目が覚める。すずお君は飛び起きた。


「……あ。おはようございます」


「おはよう。もう5の刻を過ぎてんぞ」


「わかりました。急いで準備します!」


 すずお君は言葉通りに急いでベッドから降りる。歯磨きを手早くしたのだった。


 洗顔や着替えもすませた。すずお君は普段以上に急いだ。


「すずお君。今日からしばらくは。野宿になると思う。だから心構えはしておいてくれよ」


「わかりました」


「んじゃ。身支度も済ませたし。朝飯を食いに行こうぜ」


 テッド氏は笑いながらそう言った。すずお君は頷く。部屋を出たのだった。


 廊下に出ると右手で頭を抱えるグリーン氏と出くわす。テッド氏は肩を竦める。


「……はよ。グリーン」


「……ああ。おはよう。テッド」


「何だよ。頭が痛いのか?」


「……そうだ。どうやら軽い二日酔いらしい」


「ふうん。後でブランカさんにまた酔い止めをもらうか」


 テッド氏が言うとグリーン氏は頷いた。すずお君は内心で小首を傾げる。それもそのはず、彼はアルコール類は未だに飲んだ事がない。まあ、クレアさんやサンショー嬢が飲ませないだろうが。


「……すずお君。昨日はすまなかったとクレアさんに伝えてくれないか」


「はあ。わかりました」


「じゃあ。朝食を食べに行こう」


 グリーン氏に促されてすずお君はテッド氏と3人で食堂に向かった。


 食堂に着くと既にブランカさんやクレアさんがいた。すずお君はちょっと驚いてしまう。


「……おはよう。すずお」


「おはよう。すずお君」


「おはようございます。クレア、ブランカさん」


 2人が声をかけてきたので返事をする。グリーン氏やテッド氏も挨拶を交わす。


「おはよう。ブランカさん、クレアちゃん」


「……おはよう。2人共」


「おはよう。テッドさん、グリーンさん」


「おはよう」


 最初にテッド氏が言う。クレアさんやブランカさんが返答する。最後にグリーン氏が言った。ちょっとまだ頭が痛そうだが。


「……おはようさん。テッドさん、グリーンさん。おや。昨日の兄ちゃんとお姉さん達も。朝ご飯かい?」


「はい。何がありますか?」


「そうさね。黒パンにバターやジャムを塗ったのとサラダに。ミネストローネもあるよ」


 クレアさんが訊くと。女将さんが答える。


「……なら。黒パンにジャムを塗ったのとサラダ、ミネストローネを頼みたい」


「あいよ。隣のお嬢さん達はどうする?」


「あたしも同じのを」


「ぼくも」


「わかったよ。グリーンさん達も同じのでいいかい?」


 グリーン氏やテッド氏も頷いた。女将さんは奥の厨房に入っていく。クレアさんはすずお君に向かって訊いた。


「ちなみに。すずおはミネストローネを食べた事があるのか?」


「……ソルトさんが作ってくれた事があります。味はまずまずだったかな」


「そうか。ならいいんだ」


 2人が話している間に女将さんがマスターやウェイトレスのお姉さんと奥からやってきた。手には頼んだ料理がある。銀のトレーに乗せられていた。


「……黒パンにサラダに。ミネストローネだよ」


「ありがとうございます」


「兄ちゃんやお嬢さん方の黒パンにはマーマレードとラシュベリーのジャムが塗ってあるよ。昨日に料理を全部食べてくれたからね。礼だよ」


 またサービスをしてくれたらしい。なかなかに気に入られたようだ。女将さん達が黒パンなどを盛り付けたお皿を置いていく。全て置き終わると奥に戻っていった。


「……いただきます」


 すずお君がカトラリーを手に取って祈りを捧げると同時に食べる前の常套句を述べる。フォークでサラダを食べてみた。なかなかにドレッシングが効いていて美味しい。中にはレタスやキャベツ、トマト、ハッシュドポテトに刻まれたハムが入っている。レタスやキャベツがシャキシャキしているしトマトもほのかに甘味があった。ハッシュドポテトもほくほくしていてコショウが効いている。ハムとまたよく合うのだ。また黒パンも塗られたバターやジャムがよく合っていた。ミネストローネがピカイチだ。クタクタに煮込んである野菜に刻まれたベーコンのおダシがよく染み込んでいる。コショウやトマトの味が上手くマッチングして美味の一言だ。


「……うん。昨日のグラタンも美味しかったけど。このミネストローネもなかなかだな」


「そうだな。私もそれは思う」


「本当ですね。宿り木亭を教えてもらえて良かった」


 すずお君が言うとクレアさんは頷いた。2人して和やかに食べていたが。グリーン氏が何でかちょっと恨めしげに見ている。


「……グリーン。どうした?」


「いや。ちょっとすずお君が羨ましくてな」


「おいおい。すずお君はまだ子供だぜ。んな、敵視しなくてもいいんじゃね?」


「それはそうなんだが。何か、あの子にうちのレミリアが盗られそうな気がしてな」


「……マジかよ。それこそお前の考え過ぎだろ」


 テッド氏がツッコむと。グリーン氏はため息をついた。


「いや。昨夜に夢を見てな。レミリアがすずお君と仲良く並んで歩いているんだ。しかも本来の姿で」


「そ、そうか」


「私はそれを眺めていた。けど。いくら声をかけても。レミリアは気づいてくれないんだ。ただ、ひたすらにすずお君を見ているだけでな」


 グリーン氏はそう言いながらサラダにフォークを突き刺す。テッド氏はちょっと引き気味だ。


(……こいつ。レミリアちゃんを溺愛しているしな。困ったもんだ)


 テッド氏は内心でそう思っていた。ため息をそっとついたのだった。


 朝食が終わると一行は荷物の整理をして。部屋の片付けを簡単にする。また、マスターに馬を3頭程譲ってくれるように頼んだ。


「わかった。馬を3頭だね。次の町はコダーテから2日は掛かるよ。その間、馬を大事に扱ってくれ」


「わかった。代金はいくらになる?」


「そうだな。1頭につき、500ダラーだよ」


 テッド氏が全額を支払う。つい、昨日に仕留めたブラックラビットの毛皮などを売った代金からだが。宿泊代も同じようにした。


「ありがとよ。気をつけてな」


「ああ。マスターもな」


 マスターとテッド氏が握手をし合う。こうしてすずお君一行はヒダーカを目指して旅立ったのだった。

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