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番外編、グリーン氏の恋愛は前途多難?!その2

 私がブランカにキスをされた後、しばらくはあ然としていた。


 けど、ブランカはそれを不満と受け取ったようだ。むくれた表情でじっと見てくる。


「……グリーン、返事は?」


「……あ、すまない。まさか、キスをされるとは思わなかったから」


「んもう、あたしだってキスくらいはするわよ。まあ、あたしからは是ね。結婚をあなたとするわ!」


 是、つまりは結婚を受け入れてくれたわけで。私は途端に嬉しくなって、ブランカを強く抱きしめた。彼女は文句を言いながらも振りほどく事はなかった。


 あれから、半年後には私とブランカは結婚式を挙げていた。こじんまりとした式ではあったが。それでも、魔術師団の部下達や私の両親や兄弟達、ブランカの弟子のサンショー嬢夫妻やすずお君、クレアさん、トレや主人の公爵閣下、相棒のテッドに私の使い魔のレミリアなど。皆が集まって祝ってくれる。


「おめでとうございます、ご主人様!」


「おめでとうございます、グリーンさん、ブランカさん!」


 人型になったレミリアやすずお君が拍手をしながら、祝いの言葉をくれた。私やブランカが手を振ると、2人はより拍手をしてくれる。隣にはクレアさんもいた。


「……主、結婚しても達者でな」


 クレアさんは寂しげに笑いながら、拍手をしている。ブランカも気づいたのか、彼女も少し悲しげな表情になった。


「クレアもね」


 小さな声でブランカは呟く。そうかと思った。私といや、人間と魔女が結婚するという事はこういう事なのだ。異種族同士だからというのもある。しかも、ブランカは大魔女。魔王級の力と位を持ったクレアさんを従えさせる事ができるくらいには、ブランカは優秀で抜きん出た魔力の持ち主だった。その彼女が魔力を喪うという事は、世界の均衡を失う事に繋がる。今後、弊害が色々と出てくるだろう。そこは、サンショー嬢が優秀な弟子を何人か見つけてくれる事に賭けるしかない。私は式の途中でそう考えるのだった。


 あれから、式は終わった。披露宴もつつがなく済ませた。私は晴れて、ブランカと夫婦になる。

 そうして、時間はゆっくりと流れた。2年後に私達には待望の子供が生まれる。女の子だった。名前をブレンダと名付け、私とブランカは可愛がった。銀色の髪に琥珀の瞳の綺麗な子だ。顔立ちはブランカにそっくりだが、性格は私によく似ていた。

 ブレンダはすくすくと育つ。彼女が3歳になった年には第2子が生まれた。次は男の子だ。名前をグレンと名付ける。白金色の髪に真っ赤な瞳のこれまた、綺麗な子だった。


「やった、おとうとがうまれたわ!」


「良かったね、ブレンダ」


「うん!」


 ブレンダはにっこりと笑う。私は娘と2人で新たな家族の誕生を喜び合った。


 あれから、10年が過ぎた。娘のブレンダは13歳になり、グレンも10歳になっていた。相変わらず、ブランカは美しいが。けど、母として子供達には優しく、時には厳しく接していた。ブレンダには魔法も教えてやっている。私もだが、やはりブランカには及ばない。


「母様、今日は何をするの?」


「そうねえ、じゃあ。風魔法のおさらいをしましょうか」


「わかった、簡単な風魔法を使うから。見ててね!」


 ブレンダが元気よく、杖を頭上にかざす。短く詠唱をすると、小さな竜巻が発生した。クルクルと勢いよく回りながら、竜巻は周りの草や土を巻き上げる。少ししたら、消えた。


「あら、なかなかじゃないの。ブレンダは覚えるのが早いわね」


「うん、1週間前から練習していたの」


「そう、頑張ったわね。ご褒美をあげるわ!」


 ブランカはそう言って、花の幻影を無詠唱で出現させた。ブレンダが驚きながら、見つめる。


「やっぱり、母様には敵わないわね」


「そんな事ないわ、あなたが私に追いつく日も近いと思うわよ」


「そうだったら、いいな」


 ブレンダは呟くと、また魔法を使う。今度は小さな光の蝶を無数に生み出した。無詠唱でだ。私もこれには、驚いてしまう。


「……綺麗じゃないの、やるわね!」


「えへへ、頑張ってみたよ!」


「その意気よ、ブレンダ」


 ブランカに褒められて、ブレンダも満更でもなさそうだ。私は離れた所からそれを見守るのだった。


 今日も我が家は賑やかだ。ブレンダは魔法や勉学に力を入れている。グレンは剣術や魔法、勉学などいろんな分野に手を出していた。この子は家庭教師陣が舌を巻く程の話術と頭脳を併せ持っている。私の血を引いているのは間違いない。


「父様、本を貸してください」


「ああ、グレンか。何の本を貸りたいんだ?」


「魔術の本です」


 私は椅子から立ち上がり、本棚に取りに行く。グレンが指をさして来たのでその位置にあった本を取ってやった。彼は顔をほころばせると、私を見上げる。


「ありがとうございます、父様」


「構わないよ、学ぶのはいい事だからね。グレン」


「はい、楽しいです」


 グレンは素直に頷く。我が子ながら、可愛いと思う。親ばかと言われても仕方ないな。

 そういえば、かのトレも最近に結婚したらしい。相手は公爵家のメイドで名前をナンシーさんといったか。年齢はアイツより、二回りは下だと聞いた。身分は男爵令嬢らしいが。確か、30歳くらいだったかな。子供にも恵まれ、双子が生まれたとか何とか。ブランカが言っていた。


「……では、父様。失礼します」


「ああ、わかった。頑張りなさい」


「はい」


 グレンは頷いて執務室を出ていく。私はふと、窓の向こうの空を眺めた。青く澄んだ空だ。私は深呼吸をしたのだった。


 ――The end――

この回で最終回です。

お読みいただき、ありがとうございました!

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