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2話

 翌日になりすずお君は伝達魔法で自分の荷造りが終わった事を知らせた。


 クレアさんから「私も荷造りは終わったぞ。が、ブランカも一緒に付いて行きたいと言っている」と返事がくる。すずお君はブランカさんが付いてくると聞いて驚いてしまう。ちなみに昨夜は大変だった。無詠唱で転移魔法を使ってみせたクレアさんにグリーン氏が興奮したからだ。


『あんな難しい術を無詠唱で使えるだなんてな。彼女は何者だ?!』


『……妻のお師匠様の使い魔で。クレアさんと言うが』


『クレアさんか。そのお師匠様は凄い方っぽいな』


 実は数少ない大魔女ではあるのだが。それを言ったらとんでもない事になるのでソルト氏はこれ以上返答はしなかった。賢明ではある。その後、グリーン氏やテッド氏はソルト氏にトレ氏を巻き込んで酒盛りを始めた。サンショー嬢やすずお君は2階にさっさと避難したのだった。


 すずお君はお客様用に準備してある寝室にて休んだ。いつもはサンショー嬢の寝室の片隅にある小さなベッドの中で休んでいたが。今は青年の姿なのでこちらにやってきた。というか、サンショー嬢に「あんたはこっちで寝なさい」と引っ張ってこられたのだが。

 そうして今に至るのだった。


 朝の九の刻になってクレアさんやブランカさんが転移魔法でやってきた。ちなみに2人共にしっかりと旅用の衣服を身に纏っている。荷物も持っていた。


「……ブランカさん。本当に来たんですね」


「あーら。クレアだけだと何かと困るでしょ。だからあたしも付いて行くわ」


「いや。クレアだけでも間に合っています」


「もう。水くさい事は言わないの。あたしがいれば。転移術や遁甲もお茶の子さいさいよ」


「ブランカさんが一緒だと。グリーンさんがうるさいんですよ」


 すずお君が言うとブランカさんはムッとした表情になる。クレアさんはため息をつきながらもすずお君やブランカさんの間に入った。


「……ブランカ。すずお。ケンカはよせ。今はレミリアさんを探すのが先だ」


「……そうですね。ブランカさん。すみません」


「いいわよ。確かに。レミリアちゃんの事を解決する方が先決ではあるわ」


 ブランカさんが頷く。するとリビングで寝ていたらしいグリーン氏やテッド氏にトレ氏、ソルト氏が起きてきた。


「……あー。頭が痛い。飲みすぎたな」


「……お前はまだいいよ。私は気分が悪い。テッドは大丈夫か?」


「ああ。俺は大丈夫だが。トレさんはどうだ?」


「拙者も頭が痛いでござる。あ、すずお君。ちょっと酔い止めをもらえぬか?」


「……構いませんよ。ちょっと主に訊いてきます」


 すずお君は頷くと急いでサンショー嬢の寝室に行った。2階に上がると寝室の扉の前に行く。何回かノックすると返事があった。少しだけ開けて用件を言う。


「主。ついさっきにソルトさんやグリーンさん達が目を覚ましました。頭が痛いとか気分が悪いとか言っている人達がいて。酔い止めや頭痛薬が必要みたいですよ」


「……え。やっと目が覚めたの。仕方ないわねえ。ソルトさん達4人分の酔い止めと頭痛薬ね。今から用意をするから。待っていて」


「わかりました。ソルトさん達に伝えてきます」


 すずお君は言うと扉を閉めて1階へ降りた。ソルト氏に「今からお薬を用意するそうです」と伝えた。


「……そっか。わかったよ。待つとするかな」


「はい」


 すずお君がお薬だと白湯が必要だなと思い、キッチンに行こうとしたら。ブランカさんが一緒にやってきた。


「……すずお君。ソルトさん達、もしかして。二日酔いじゃないかしら」


「みたいですね。ブランカさん。何で付いてくるんですか?」


「あら。何でって。あたしね。酔い止めなら持てるだけ持ってきたのよ。4人分くらいなら分けてあげるわ」


 すずお君はピタッと動きを止めた。そして勢いよくブランカさんに振り向く。


「……それ。本当ですか?!」


「え、ええ。だから。白湯は用意してもらえるかしら」


「わかりました!」


 すずお君は頷くと速歩きでキッチンに向かう。ヤカンに水を入れて火の魔石に魔力を微量込める。するとカチカチッと音がして魔導ガスが着火した。こうしてお湯が沸くまで待った。


 少し経ってお湯が沸くと。すずお君は意外と慣れた手付きでソルト氏や他のメンバー用に食器棚からマグカップを出す。4つ並べると火を切ってお湯を注いでいく。コポコポと音が鳴り湯気が立つ。また、冷たい水も入れてぬるま湯の状態にする。


「……ブランカさん。白湯が用意できました」


「あ。できたのね。ソルトさん達。酔い止めがあるから。今から飲んでちょうだい」


「……ブランカさん。いらしてたんですね」


「……うん。来てたわよ。さ。酔い止めを先に飲んで」


「ありがとうございます」


 ソルト氏は酔い止めが入った薬包を受け取る。開けて口を開けるとサラサラと粉状の酔い止めを入れた。すずお君がマグカップを手渡すとゴクゴクと白湯で流し込んだ。


「あー。ちょっと生き返った心地だよ」


「まあ。症状がマシになったようで良かったわ」


 すずお君は残る3名にもマグカップを渡した。ブランカさんも酔い止めを手渡して飲むように勧める。3名は一気に薬を口に入れ、白湯で流し込む。流石に大魔女印の薬なだけはある。

 その後、サンショー嬢が頭痛薬も持ってきて事なきを得たのだった。


 白の大魔女と一番弟子の薬を飲み、グリーン氏とテッド氏、トレ氏の体調は瞬く間に良くなった。とりあえずは遅めの朝食を済ませてすずお君はグリーン氏達やブランカさん、クレアさんの6名で出発した。グリーン氏はブランカさんが本物の白の大魔女だと聞くと握手を要望する。


「……握手ねえ。まあ、いいけど」


「いや〜。私は幼い頃から大魔女さんに会いたかったんですよ。何せ、魔術士の間では憧れの存在ですから!」


「そうなの」


 ブランカさんは頷くと苦笑いした。グリーン氏は握手をしてもらうと大喜びだ。クレアさんやすずお君はそれを冷ややかな目で見ている。


「……クレア。魔術士って皆、あんな感じなんですか?」


「……そんな事はないよ。グリーンさんが特殊なだけだ」


「はあ。そうなんですか」


 すずお君はまだ不可解だと言いたげだが。クレアさんは軽く彼の頭を撫でる。ちなみに今のすずお君はクレアさんと同じくらいの背丈だ。

 そんなこんなですずお君一行はサホロの隣町――コダーテを目指したのだった。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 冒険が今!…はじまらない。 このメンバーだとこうなるのね…。 そんな緩い感じが良いです。 魔女が作る二日酔いの薬、効きそうです。
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