表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/21

番外編 タチマチ岬にて

 僕はある日に主や旦那さんとお出かけをしまひた。


 ちなみに旦那さんはソルトさんといい、魔導車という便利な四角い箱みたいな乗り物の操縦が得意でふ。運転席にソルトさん、助手席に主のサンショー様、後部座席に僕が乗りまひた。朝方の早くに起きて身支度をして、サンショー様お手製のお弁当やらを準備しまひたね。

 けど、サンショー様は不意にこう言いまひたよ。


「……すずお、あんたは人型になりなさい」


『な、何ででふか?!』


「いいから、なりなさい!」


 強引に押し切られ、仕方なく人型になりまふ。ソルトさんが慌てて衣類を持ってきてくれまひた。ちなみに少年の姿だと色々と面倒なので、青年の姿でふ。


「うん、これでいいわ。モルモットの姿だと崖から落ちるかもしれないし」


「……何気に怖い事を言わないでくださいよ」


「あら、心配はしているのよ。さ、早く服を着てちょうだい」


 僕はため息をつきながら、肌着類から身につける。もそもそとズボンやシャツを着た。


「すずお、今日はかなり冷え込んでいるから。厚着をした方がいいよ」


「わかった」


 頷いたら、ソルトさんは毛糸で編んだセーターや厚手の靴下、外套などをクローゼットから出してきた。後、編み上げの滑り止め付きのブーツも出してくる。


「今日はタチマチ岬まで行くからね。すずおはまだ、寒さに慣れていないし。これくらいは着込んでいないと風邪をひくかもしれない」


「そうなんだね」


「俺が着方を教えるから」


 ソルトさんはそう言って、僕にセーターなどの着方を教えてくれる。

 一通り、着込んだら編み上げブーツの履き方も教えてもらった。


「よし、準備は完了だな。さ、魔導車に乗りな」


「うん」


 僕はヤー家から出て、外に停めてあった魔導車の扉を開けた。既にカイドー国は冬になっている。確かにソルトさんが言ったように、厚着をしていないとダメだな。ブルリと震え上がりながら、乗り込んだ。


 お弁当やら着替えやらの荷物を積み込む。早速、運転席にソルトさんが、助手席にサンショー様が座る。


「さ、出発よ!」


「ああ、行こうか」


 サンショー様が言うと、ソルトさんがにっこりと笑いながら答えた。相変わらず、仲は良いな。僕はそう思いながらも動き出した魔導車の窓から、空を見上げた。雲一つない快晴の空だった。僕はまた、ため息を小さくついた。


 道中、ソルトさんは迷いなく魔導車を進めていく。サンショー様は数日前に焼いておいたクッキーを食べながら、窓から見える景色を眺めている。僕はぼんやりと同じく景色を眺めていた。海が綺麗だな。


「……すずお、あんたはタチマチ岬は初めてだったわね」


「そうですね」


「凄く綺麗な景色が見られるから、楽しみにしていてちょうだい」


 サンショー様はそう言ってまた、景色を眺める。僕はタチマチ岬ってどんな所なのかと思った。魔導車はその後も進み続けた。


 やっと、タチマチ岬に着いた。眼前には切り立った険しい崖や蒼の海、どこまでも澄み切った空が広がっていた。僕はあまりの絶景に言葉が見つからない。強く吹き付ける風や潮の匂いはするが。そんな事が気にならないくらいには、美しい光景だ。


「凄いでしょ。一回、すずおにも見せたくてね。だから、旦那に無理を言ったの」


「そうだったんですか、主なりに考えていたんですね」


「あら、私はいつもちゃんと考えているわよ」


 主の言葉に苦笑いをする。主は豪快だが、意外と細やかな一面もあるのだ。そう思っていたら、ソルトさんが近づいてきた。


「すずお、早いけど。食事にしよう」


「わかった」


 僕もソルトさんが抱えているバスケットを持つのを手伝う。ピクニックシートを敷いた。ちなみに、あまり風が吹かない場所を選んでいる。景色は見えにくいが、安全面を考えたらここに決まった。


「よし、シートは敷けたから。すずお、バスケットを開けてみな」


「うん。主特製のサンドイッチとか入っているかな」


 僕はそう言ってから、バスケットを開けた。中には切り刻んだゆで卵をマヨネーズで和えたのを挟んだ物やレタスにハム、チーズを挟んだ物、鶏肉の照り焼きなど豪華なメニューが盛りだくさんだ。水筒もあり、中にはコンソメスープが入っていた。


「美味しそう」


「ふふっ、たくさんあるから。好きなだけ食べたらいいわよ」


「いただきます!」


 僕はそう言うと、手渡されたおしぼりで手を拭いた。そうしてから、サンドイッチを取り口に運んだ。


「うん、美味しいです!」


「そう、なら良かったわ」


 主もまんざらではなさそうだ。僕はモゴモゴしながら味わう。ソルトさんも鶏肉の照り焼きをお箸と言う2本の棒で器用に食べている。ポテトサラダもあり、僕はそれも食べた。しばらくは主特製の料理を味わった。


 夕方になり、食事の後片付けを済ませる。ソルトさん曰く、今晩は近くの宿屋にて泊まるらしい。部屋割りはソルトさんと僕が2人部屋、主は1人部屋だ。

 その後、魔導車で宿屋まで行った。僕は宿屋の料理も美味しくてつい、食べ過ぎてしまう。主に怒られながらも胃薬を飲んだのは、良い思い出になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] カイドーという世界にある、タチマチ岬。 異世界にも関わらず馴染みがあるような設定が良いです。 すずお君をとりまく世界がほんわか描かれていて楽しいですね。 [一言] たくさん食べ過ぎて食い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ