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15話

この回で最終回になります。

大変長らくお待たせしました。

 すずお君一行がコダーテに戻ってから2日が過ぎた。


 トレ氏が営むギルドに白の大魔女のブランカさんや魔術師団長のグリーン氏がやって来た――追いついたのもこの日だった。すずお君と人型になったレミリアが出迎える。ブランカさんの肩には使い魔のクレアさんもいた。


「……すずお君!良かった。無事で」


「……ブランカさん。お久しぶりです」


「うん。こっちこそ久しぶりだわね」


 ブランカさんはそう言うとすずお君の肩に手を置く。じんわりと温もりが染みるようだ。レミリアはそれを眩しそうに見つめる。


「……レミリア!封印が解けたんだな。良かった!」


「はい。すずおさんやテッドさん、トレさんが皆で助けてくれました」


「そうか。すずお君達にはどれだけ感謝をしたらいいか。とにかく無事で何よりだ」


 グリーン氏はそう言いながらレミリアの前でしゃがみ込む。目線を合わせると頭を優しく撫でた。グリーン氏の表情が温かなものに変わる。それを見たブランカさんやすずお君は密かに驚いた。


「……グリーンさんでもあんな顔するのね」


「はい。初めて見ました」


「レミリアちゃん。凄く可愛らしいものねえ」


 ブランカさんが小声で言うと。グリーン氏はいつもの無表情に戻る。


「聞こえているぞ。2人とも」


「ええ。ご主人様。ちょっとすずおさんと2人にしてくださいませんか?」


「「いいけど」」


 ブランカさんとグリーン氏が見事にハモった。レミリアはすずお君に向き直るとにっこりと笑う。ブランカさんとグリーン氏は互いに目線を合わせる。苦笑いしながら頷き合うとそっとこの場を離れた。


「……すずおさん。やっと2人きりになれたわね。今回はあなたのおかげで命拾いしたわ。本当にありがとう」


「……うん。これで君もご主人の元に戻れるね」


「そうね。改めてお礼を言いたかったら。ご主人様達には無理を言ってしまったわね」


 レミリアが言うと。すずお君はポリポリと頬を指で掻いた。ちょっと気恥ずかしさがあるからだが。もしこの場にサンショー嬢やソルト氏がいたら。「す、すずおにはまだ早いよ!春が来るのは〜!!」と慌てたかもしれない。すずお君はそれを想像してみたら一気に頭が冷静になった。


「……レミリアさん。そろそろ戻ろうか」


「そうね。行きましょうか」


 すずお君がそう言って踵を返すと。レミリアは頷いて付いて来た。けれどその雰囲気は嫌なものではなかった。


 その後、翌日にグリーン氏は王都にレミリアやテッド氏、トレ氏と4人で出立する。すずお君はブランカさんやクレアさんと3人でサホロに戻った。すずお君は秘かにレミリアからある物を贈られていたが。お守りにと彼女お手製のペンダントをもらったのだ。助けてくれたお礼も兼ねている。それをクレアさんやブランカさんに話すと。


「やるわね。すずお君」


「ああ。君も女の子から物をもらうとはな。成長はいいものだ」


「……はあ。それはどうも」


 そんなやり取りをしながらも。サホロに約1ヶ月半ぶりに戻ったのだった。


 ソルト氏宅に帰ってきた。すずお君は何とも言えない感慨深さに浸る。ドアをノックしてみた。すると勢いよく開けられた。


「……あ。すずおじゃないか。お帰り!」


「はい。只今戻りました。ソルトさん」


「うん。元気に戻ってきてくれて何よりだよ。サンショーも待ちくたびれていてな。すぐにでも顔を見せてやっておくれ」


 すずお君は頷くとすぐに家の中に入った。相変わらずの薄暗い室内には薬草の独特の匂いが漂う。懐かしいわが家だ。そう思いながらサンショー嬢の姿を探す。


「……あ。もしかして。すずおなの?!」


「……主。只今、戻りました」


「もう。凄く心配したのよ!」


 サンショー嬢は厳しい表情と口調で告げたが。すぐに苦笑に変わる。


「……おかえりなさい。やっと帰ってきたわね。旅の事をまた聞かせてちょうだいな」


「はい。その。主にはご心配をおかけしました」


「いいのよ。すずおが無事なら」


 そう言うとサンショー嬢はすずお君に近づく。気がついたら彼の背中に両腕を回して抱きしめられていた。温かさや薬草混じりの懐かしい香り、華奢ながらも柔らかい主の抱擁にすずお君は鼻の奥がツンとなる。


「主。ただいま」


「……うん。改めてお帰り」


 サンショー嬢の言葉と温もりにすずお君はしばらく感無量になっていた。抱擁は怒ったソルト氏に妨害されるまで続いた。


 あれから1年がまた過ぎた。すずお君はサンショー嬢に文字を習っていた。


「……あの。主。僕に掛けられた封印術について訊きたいんですけど」


「……あ。すずおってば。聞いちゃったのね」


「はい。確か、トレさんが言っていたんですが。主の魔力を無駄に消費しないためとか聞きました」


「あー。成程。実はね。あんたを使い魔にした時、私はまだ白魔女としてはひよっ子もいい所だったの。魔力も今よりは貧弱でね。それを心配したお師匠――ブランカ様が魔術士団長のグリーンさんに依頼をしたのよ」


「依頼ですか?」


「うん。グリーンさんにすずおの魔力を6割くらいは弱くなるように封印をしてもらったの。そしてお師匠に言われたわ。私が白魔女として1人前になるまでは封印は解くなって。だから今までずっとすずおは人型にはなれなかったの」


 そうだったのかとすずお君は頷いた。まさか、ブランカさんが弟子を心配して封印をしていたとは。なかなかに良い人だなと思ったのだった。


 すずお君はレミリアに拙いながらも手紙を書いていた。ソルト氏にレミリアの事を言ったら。


『……すずお。交際をするのはいいけど。まずは文通から始めなさい』


 そう説得された。仕方ないので頷いておいたが。けどさすがにサラサラとは書けない。


<レミリアへ


 元気にしていますか?


 僕はサホロに戻ってからも元気にしています。


 君からもらったペンダントも大事にしていますよ。


 御礼返しに僕からも何かを贈りたいけど。


 何がいいと思いますか?


 また、お返事を書く時に教えてもらえたら嬉しいです。


 それでは。


 敬愛するレミリアへ


 すずおより>


 一生懸命に考えながら書き終えた。不意に窓を見つめると。綺麗な夕焼け空が視界に入った。人型になってから早くも1年以上が経っている。いつかはレミリアとも再会できるだろうか。そうしたらいろんな話をしたい。そう王都に思いを馳せたのだった。


 ――The end――




 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 連絡手段が手紙という所が1年という月日の流れを感じました。 [一言] すずお君の成長を微笑ましく応援しておりました。 楽しいお話でした。 ありがとうございます。
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