この間助けてからそこそこ懐かれたクラスメイトの自称クールビューティな巨尻JK 百百川瓜姫さんに電車内で太ももを押し潰される話
【注】
前作を未読の方はこちらよりどうぞ↓
『尻が壁の穴にハマってたクラスのクールビューティな巨尻JKを引っ張って助けたら「自分は決してふしだらな女ではない」と必死に言い張られたけどそこそこ懐かれた話』
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目立つ尻だなぁ――。
俺――高校ニ年生・藤村三蔵は、視認性に非常に優れる尻を見ながらそう思った。
俺の通っている尼高井高校と俺の自宅からは、電車で一時間ほど走らねばならない。
一応、そこそこの進学校でもあるから、遠くからも結構電車通学で通学している連中は多い。
だから同じ高校の制服を着ている生徒は電車内にも結構いるし、俺たちの存在は特段目立つわけではない。
だが――この尻だけは目立つ。
しかもスカートも黒ストッキングもあまりよく包みきれていないから、尚更である。
その人物は、結構混み合っている電車の中できょろきょろと辺りを窺いながら、とても所在なさげにしている。
彼女がきょろきょろする度に、包んでいると言うよりはただその尻の上に被せられているだけのスカートが、危うくひらひらと動いた。
百百川瓜姫さん――。
二週間ぐらい前、俺が全く意図せぬ理由で関わり合いになってしまったクラスメイトの美少女である。
繰り返しになるが、百百川さんはとにかく身体の出っ張るところと引っ込むところがバグったような、自称クールビューティな風紀委員長だ。
俺にそれなりの耐性がなければ、きっと一発で好きになっちゃったに違いないぐらいの、それはもう立派な身体つきの人なのである。
だから、目立つ。
目立つ上に、問題がある。
何故なら、このように電車内が混み合う最中には、彼女の巨大な尻は別の危険を孕んでいると言えるからだ。
事実、電車内の座席に座る人々は、百百川さんが入ってくると露骨に緊張した面持ちになり、心持ち足を広げ気味に座り直したりしている。
我々が共有する感覚はひとつ。
つまり、この尻が隣に座ってきたら――という、一種の危機感である。
事実、俺の隣りに座っているスーツ姿の姉さんなどは、俺と彼女の間にわずかに空いた隙間にハンドバッグなどを押し込んでいる。
流石に俺の隣に座っていたヨボヨボのおばあちゃんはその危機感を共有しなかったらしいが、このおばあちゃんの上にあの尻が乗ってきたら一発で大腿骨骨折である。
斜向かいの如何にもスケベそうな親爺などは今まで傲慢に開き切っていた足を殊勝に狭め、百百川さんを隣に誘導しようとしている。
俺が咳払いし、思いっきり睨みつけてやると、親爺は物悲しいバーコード頭に少し脂汗をかいて視線をそらしたりした。
百百川さんはというと、精一杯背を伸ばし、ようやく指の第一関節だけをつり革にひっかけて、相変わらずキョロキョロと辺りをうかがっている。
どこか座れる場所を探しているらしい。
だが――百百川さんの視線がバッティングしようとすると、露骨にみんな視線をそらしたり、寝たふりをしたりする。
いくらどんなここに居並ぶ健全な男子と言えど、彼らはこれから職場なり学校なりに行って少なからず嫌な目にも遭うのだ。朝ぐらいゆっくり座らせてくれと思うに違いない。
それに――一時の癒やしを得るにしても、明らかに百百川さんの尻は規格外だ。
ひょっと間違ってこれを隙間にねじ込まれた日には、太ももの骨がどうにかなるんじゃないか――。
そんな危惧を抱かせるほど、百百川さんの尻は剣呑なものに見えるのだ。
と――電車が次の駅に停まった。
俺の隣にいたおばあちゃんがヒョコヒョコと立ち上がり、人混みをかき分けてヒョコヒョコと歩いていく。
座席に座っていた客が電車を降りてゆき、座席には続々と隙間が生まれた。
俺と、俺の隣りに座った通勤客との右隣にも、さっきの婆さんが降りた分だけ隙間が生まれた。
けれど――百百川さんは動かなかった。
そこらじゅうに座席の空きが出来たというのに、まだ視線は虚空をウロウロしたままだ。
規格外に幅を取る自分の尻の巨大さを考えて、席に座らないつもりだろうか。
声をかけようかと思ったけれど、それより先にそこへ中年のおばさんが座ってしまい、俺は開きかけた口を閉じた。
なんだか、枯れたような匂いが隣から漂ってきた。
傲慢さと因業さが顔面から漂ってくるおばさんの存在を、俺は嫌なものだと思いながら腕組みした。
そのうちに、乗降客の移動が一段落し、電車はようやく動き出した。
しばらくして、次の駅についた。
乗降客の波が緩慢に治まり、座席にまばらに隙間が出来ても、百百川さんは動かなかった。
電車が、ゆっくりと走り出した。
と――百百川さんが動いた。
おや、と思っているうちに、百百川さんは人混みを縫い、俺に向かって真っ直ぐ近づいてくる。
目指した場所は、俺とおばさんの間、僅かな席の隙間だった。
一瞬――俺は百百川さんの正気を疑った。
だって隙間が空いたとは言え、その隙間は小学生だって座れるか否かの、ごくごく僅かな隙間だったのだ。
(無理だろ……!)
なりゆきを見守っていた客の、ほとんどすべてがそう思ったに違いない。
俺の目の前でつり革を握っている中学生の女の子も、ぎょっとしたような表情で百百川さんを見ている。
スケール感的に例えるなら、言わばそれは鼻の穴にグレープフルーツをねじ込もうとするようなもの。
百百川さんの巨大な尻が、この隙間にすっぽり収まる可能性など、万に一つもない。
けれど百百川さんは俺の方を見ることもなく――ぎゅむぎゅむとその隙間に尻をねじ込んできた。
(痛い痛い痛い痛い!)
太ももの肉がケツ圧によって潰される痛みに、俺は歯を食いしばって耐えねばならなかった。
いくらブロック塀も破壊した巨尻とはいえ、これが人間の尻が持ち得る圧力なのか――!?
真剣に疑いたくなるほどの重量と密度の物体が、俺とおばさんの太ももに均等に乗った。
今や百百川さんはおばさんの左ももと俺の右ももに完全に乗っているような状態であった。
百百川さんの匂いを圧して、おばさんの枯れたような匂いがムンと濃くなった。
途端に、ゴォ――と音がして、電車が高架下に入った。
人垣の向こう、反対側の電車の窓に映ったおばさんの顔は、露骨に嫌そうな顔を浮かべて百百川さんを凝視している。
なんだってこんなところに座ろうとするんだ、席はまだ他にもあるのに――。
俺はチラチラと隣の百百川さんの顔を窺った。
百百川さんは――俺のことなど見ていなかった。
それどころか真っ直ぐ前を見て、何かを決意したような表情で唇を固く引き結んでいる。
その表情に、俺はちょっと違和感を覚えた。
なんでこんなに狭い場所にわざわざ――?
俺は百百川さんの横顔をちらちらと伺ったが、結局百百川さんはその場所から目的の駅まで、まるでそういう形の石像のように、その場を動くことはなかった。
結局、それから二駅の間、俺とおばさんは百百川さんのケツ圧に耐えきった。
『次は尼高井、尼高井です。降り口は左側――』
そのアナウンスとともに、百百川さんが腰を上げた。
やっとのことでケツ圧から開放された俺の太ももにどうどうと血液が通い、右足がつま先まで痺れた。
俺はひょこひょこと右足を引きずりながら百百川さんを追いかけた。
「百百川さん!」
俺が後ろから大声を浴びせると、百百川さんの小柄がびくっと震えた。
と――そのとき、俺の目が、あるものを拾った。
百百川さんのスカートの右側に、縦に留められている大きな安全ピン。
おや、これは――? と思っていると、百百川さんが振り返った。
「ふっ、藤村君――!?」
百百川さんが驚いたように俺を見た。
「あ――ああ、おはよう百百川さん……いてて」
「どっ、どうしたの、右足――? 怪我しちゃったの?」
「うん。さっき物凄く重いものに押し潰されちゃってさ」
「ええっ!?」
セクハラな回答だと思ったけれど、百百川さんは派手に驚いている。
どうも――隣りに座っていたのが俺で、この足は自分の尻が押し潰したものだとは露とも知らないらしい。
そりゃそうだろう、あんだけ真っ直ぐに、宙の一点だけ見つめていたなら――俺どころか他の乗客のことなど目に入らなかったに違いない。
「だっ、大丈夫――? 病院、一緒に行こうか?」
「いやまぁ、ともかくこの足のことは大丈夫だから。それより百百川さん、なんでさっき座席に座らなかったの?」
俺の質問に、百百川さんは少し驚いたような顔をした。
「見てたの?」
「うん。なんだかキョロキョロしてたから、座れる場所を探してたと思ってたんだけど……席が空いたのに座らなかったから、なんでかなぁって」
百百川さんは何事か口を開きかけてから、やがてゆっくりと首を振った。
「なっ、なんでもない――立ってる間に疲れたから座る場所を探しただけ」
その口調は、どう考えてもなんでもない感じではない。
クールビューティで無口な百百川さんだけど、実際は嘘や誤魔化しが下手な人だ。
きっと、さっきの行動には何か理由があるには違いないのだが――。
ただ、本人がなんでもないという以上、俺が詮索できたことではなく――俺は「はぁ」と気の抜けた返事をした。
「藤村君……」
「何?」
「あの……できればこの事は誰にも言わないでくれるかな? 今日のことは――」
「え? うん――大丈夫だって。百百川さんはクールビューティな風紀委員長。そうでしょ?」
俺がそう言うと、百百川さんはホッとしたようにため息をついた。
「うん――ありがとう藤村君。じゃ、また後で、学校でね?」
百百川さんはそう言うと、巨大な尻を左右に振りながら駅の階段を登っていった。
途端に、さっきのバーコードハゲが、靴紐を結ぶフリでしゃがみこみ、階段を見上げようとした。
俺はサッとそのおっさんの前に立ちはだかると、その場でスマホを弄り出した。
チッ、と舌打ちが聞こえたので、あん? と言うように睨みつけると、おっさんは青い顔で立ち上がり、側をすり抜けていった。
なんだか、いつにも増して歯切れが悪い会話だったなぁ――。
俺はより強くなった違和感を抱えながら、百百川さんの後を追って駅の階段を登り始めた。
◆
「ただいま、姉ちゃん」
「んー」
部屋に入るなり――俺はドサッとスクールバッグを取り落した。
姉であり、人気スプラッタミステリー小説家である四乃は――下はパンツ一丁、上半身は乳首の部分に大きめのポストイットの付箋を二枚貼り付けただけの、極めてふしだらな格好でPCに向かっていた。
この姉は頭と顔と身体は引き締まっているが、その反面、何かに締めつけられると途端に何もかもダメになる人なのだけど――それにしたって今の風体はフリーダムすぎる。
当然、俺は愕然と呟いた。
「姉ちゃん――」
「んー?」
「それはいけない。それはいけないよ。人間として――」
「いけないってことはないわ。続きが書けなくて読者に迷惑かけちゃうことの方が遥かにいけない。いいわよ別に誰に見られたって減るもんじゃなし」
「減るだろ! 俺の人間性と尊厳が! せめてブラジャーぐらいはしてくれよ!」
俺の大声に、この間拾ってきた猫のエンラクが姉の膝の上でにゃあと鳴いた。
昼寝していたのだろうエンラクの不満げな鳴き声に構わず、俺はふしだらな姉に向かって嘆いた。
「姉ちゃんがそんなんだから俺が不健康に育つんだよ! 姉ちゃんは男子が抱く女子に対する幻想をぶち壊しすぎだって!」
「よかったじゃないのそんなもんが壊れて。一皮引っ剥がせばみんな骨。女の幻想とかいう妄想にいちいちちんちん勃ててたら、アンタ三十迎える前に死ぬわよ」
「むしろ俺は死んでもいいから幻想を抱いてみたかったよ! 今日なんか右足を犠牲にしたのに全然不健康な結果に終わったんだ!」
その一言に、ん――? と姉は疑わしげに俺を見て、スンスン、と鼻を動かした。
この姉は昔から異常なほどに鼻が利くのだ。
「この匂いは……ふーん、サンゾー。アンタあの百百川さんとかいうのと随分親しくなったのね?」
「親しくなったわけじゃない。潰されたんだ、電車で、右足を、二十分近く」
「この間ブロック塀にハマってたあの尻に?」
「この間ブロック塀にハマってたあの尻にさ」
「で、アンタはその子に自分の右足を潰された理由が気になるわけだ?」
え――と、俺は姉の言葉に絶句してしまった。
「え――なんでわかるの?」
「バカね。私も尼高井高校に通ってたのよ? あそこは途中オフィス街があるから、そこで大抵の人は降りる。如何に尻がデカくとも、その百百川さんとかいう子が座れないはずがない。なのにその百百川さんはアンタの隣に無理やり座ってきた。アンタと話がしたいだけなら一緒に立つか別の開いてる席に誘えばいいだけなのに」
恐ろしいほど先回りしてふしだらな姉はズバズバと指摘した。
全く、この姉は格好こそふしだらだが、頭の中身は恐ろしく整理整頓されているらしい。
「やっぱり理由があるんだ――」
俺が言うと、姉は体ごとPCに向き直り、カタカタとキーボードを叩き始めた。
「一応詳しく聞いてやろう――百百川さんはアンタより先に電車に乗ってたの?」
「うん」
「途中までは座ることもなく立ってたわけだ」
「そうだよ」
「なるほど。たぶん、百百川さんの視線は座席じゃなく、乗客の顔を見てたんじゃない?」
「そ――その通り」
「百百川さんはどこでアンタの隣に座ってきた?」
「新町駅を出発した辺りだ」
答えると、姉は視線をモニターから外さないまま、右手の指を折って数を数え出した。
みっつ、よっつ……と何のためか数を数えてから、姉は「最後の質問」と言った。
「アンタの目の前……というより、百百川さんの目の前に誰が立ってたか覚えてる?」
俺はあのときの電車内の光景を思い出した。
あのとき、無理やり隙間に尻をねじ込もうとした百百川さんを、驚いたように見つめていた中学生の女の子。
そう言えば――あの中学生が着ていた制服は、ここらじゃ随一のお嬢様学校と有名な私立中学校のものだ。
そして――最後に思い出した光景。
百百川さんのスカートに縫い留められた、大きな安全ピン――。
かちり、と、頭の中で何かが一致する音が聞こえた。
あ、と俺が言うと、姉が「多分そういうことよ」と頷いた。
「すげぇ――なんでわかったの、姉ちゃん?」
俺の言葉に、ハァ、と姉は大仰にため息をつき、吐き捨てるように言った。
「これでも一応女よ。そういうことなら掃いて捨てるほど経験してるっつーの。全く、私が願った相手の珍棒が腐り落ちる能力が手に入るなら、私は腕の一本ぐらいくれてやってもいいわ」
「そ――そうなんだ。大変だね……」
「以上の結果を踏まえて、もう一度言ってみろ。私のこのふしだらな格好を見て、そういうことに慣らされたアンタの境遇が、幸福なのか不幸なのか」
「こ、幸福です――」
「よろしい」
姉は乳首に貼り付けたポストイットを丹念に貼り直しながら頷いた。
俺は姉を遠慮がちに見た。
「それで――姉ちゃん」
「あん?」
「俺、どうしたらいいかな?」
実際、俺たち姉弟の予想が正しければ、このまま放置はしておけないだろう。
姉はエンラクを撫でながら「んなこと、決まってるでしょ」と感情の籠もらない口調で言った。
「勇気ある乙女を助けんのよ。知恵を絞って、体を張って――ね。股の間に珍棒ぶらさげて生まれたなら、それがアンタの義務よ」
◆
百百川さんは身長が百五十センチ程度しかない。
だから電車の吊り革には、精一杯腕を伸ばさなければ指が引っかからない。
百百川さんはぐいっと背伸びをするように右手を伸ばし、つり革に指の第一関節だけをひっかけている。
当然、色々とたわわな肉体を包んでいる布地は上へ上へと引っ張られ――布地やボタンがミチミチと軋む。
ごくっ、と、隣のOLさんが、百百川さんを見て生唾を飲み込む音が聞こえた辺りで、『次は新町、新町です――』というアナウンスが流れてきた。
電車の端の方で様子を伺っていた俺は、乗り込んでくる乗客の中に目当ての人物を探した。
いた! あの日、百百川さんと俺の前に立っていた女子中学生だ。
中学生の女の子は電車に乗る前、おどおどと辺りの様子を窺い、何らかの覚悟を決めたような表情で乗り込んできた。
よく見れば、如何にも大人しげで引っ込み思案そうで、そういうものの標的になりそうな女の子だ。
これから爽やかな朝を迎えるとは思えない顔色の悪さに、俺はますます確信を抱いた。
その子がドアのすぐ横のつり革に掴まった途端、案の定――百百川さんが動いた。
百百川さんはぐいぐいと腰を使って乗客を押しのけ、その子の目の前に座った――否、陣取った。
幸運なことに――そのときの百百川さんの隣の座席は、二人分ほど空きがあった。
俺は百百川さんと同時ぐらいに動き出し、舌打ちの嵐をも無視して人混みを掻き分け、百百川さんの隣にどっかりと腰を下ろした。
不審そうに俺の顔を見た百百川さんの顔が――ちょっと驚いたように見えた。
「藤村君――!」
俺はその声を無視して、制服のポケットからスマートフォンを取り出した。
そのまま、スマートフォンを持った右手の肘を左手で支え、百百川さんにも画面が見えるように掲げた。
《百百川さん、知らんぷりして》
俺が画面にそう打ち込むと、百百川さんはもう一度だけ不審そうに俺の顔を見た。
俺は画面の文字を消し、もう一度別の文章を打ち込んだ。
《俺たちで痴漢を捕まえてやろう》
その文章に、百百川さんが驚きの表情を浮かべる。
知ってたの? という風に俺を見た百百川さんだったけど――さっきの《知らんぷりして》を思い出したのか、百百川さんはぎゅっと唇を引き結び、形の良い膝の上に両の握り拳を置いた。
「ひっ、ひひふぅ、ひふぅ、ひひひふぅ……」
しばらくして聞こえてきた音を――最初、何の音かと思った。
乗客の何人かも、不審そうに虚空を見上げて音の出どころを探っている。
見ると、百百川さんは横を向き、タコのように唇を尖らせ、口笛を吹いていた。
一瞬、百百川さんは冗談でやってるのかと俺は真剣に疑った。
今どき「素知らぬ顔」をするとして、口笛を吹いたりする昭和のギャグアニメみたいなことをする人がいるとは――。
否、この人ならやりかねない。自称クールビューティだけど、中身は至ってポンコツというか、アホの子である、この人なら。
と――そのとき。
目の前の女子中学生の身体が、ぴくっ、と震えた気がした。
俺はスマホの画面を見るフリをして、慎重に視線を上にずらした。
なんとというか、やっぱりというか――。
中学生の女の子の後ろに立っていたのは、あのとき百百川さんのスカートを覗こうとしていた、サラリーマンのおっさんだった。
物悲しいバーコード頭に、堅物そうな黒縁メガネ、如何にもくたびれた中間管理職といえる男の左手が――電車の揺れに合わせて女の子の太ももに触れている。
吐き気がしそうな光景だと思っているうちにも、その指の動きはエスカレートし、まるでくすぐりをかけるかのように、隣の女の子の太ももを指の腹でさすったり、つついたりしている。
百百川さんの目が鋭くなった。
やっぱり、と、俺はあの日の百百川さんの不可解な行動を思った。
百百川さんは――どういうわけなのか、この女子中学生が痴漢の被害に遭っていたことを知っていたのだ。
だからあの日、俺の隣に無理やり座ってきたのは、俺の隣に来たかったわけではなく、この女の子のことを監視するためだった。
だが――あの日はその気がなかったのかなんなのか、バーコード男は俺たちとは向かいの席に座っており、犯行には及ばなかった。
百百川さんは必死になって痴漢の現行犯を押さえよう、この子を護ろうと、この中学生の女の子を張っていたに違いない。
ちょんちょん、と俺は肘で百百川さんをつついた。
百百川さんは我に返ったように俺を見た。
俺は素早く画面に文字を打った。
《百百川さん、嫌かもしれない、気持ち悪いかもしれないけど、我慢してくれ》
俺はそう入力するなり、百百川さんの肩に左手を伸ばし、その肩をぐい、と引き寄せた。
うひゃっ!? と息を呑んだ百百川さんは身体を固くしたけど、俺は構わず百百川さんに頬を寄せ、そのままの体勢でスマホを操作した。
俺はスマートフォンのカメラを起動し、それをインカメラにする。
チャンスは何度かあるが、ここから尼高井駅まで一番長い高架はすぐそこだ。
スマホのインカメラに、俺の間抜け面と――茹で蛸のように真っ赤になった百百川さんの顔が映し出される。
こうすれば、あのバーコード男には高校生のカップルがイチャイチャしながらスマホを見ているようにしか見えないだろうし、百百川さんの前に立った女の子の撮影もしやすくなる。
俺はそのままスマホを持ち上げ、スマホの角度を調整すると、頃合いを見計らい、慎重にその上に親指を置いた。
途端に、ゴォ――と耳を劈くような音とともに、電車が高架下に突入した。
俺はその音に紛れるよう、動画の撮影ボタンを押した。
それからしばらくスマホの角度を調整すると――映った。
真っ暗になった、俺たちの背後の車窓。
そこには屈辱と恐怖に必死になって耐えている中学生の女の子と、その太ももを弄っているバーコード男の姿と手先が映っており――。
なおかつその動画は、俺のスマホのインカメラに、バッチリと撮影されていた。
スマートフォンの端に映った百百川さんの目が、みるみる丸くなっていく。
通常、これから痴漢をしようとしている男に向かってスマートフォンを構えれば――しかもそのスマホが、俺と百百川さん、二人で画面を見ているにしては角度がおかしいことを察されれば――男は手を引っ込めるに違いない。
だが、それが背後の窓ガラスに映った像なら――少し角度を調整することで、背後の窓に映し出される犯行の決定的瞬間をインカメラで十分に撮影することが可能だ。
そう、これは電車が高架の下を通り、真っ暗になった窓に乗客たちの姿が映る、その一瞬しかできない撮影方法だった。
これで動かぬ証拠は撮影できた。
俺が「よし」と呟いた途端、電車はトンネルを抜け――やがてゆっくりと慣性が働き始めた。
『次は、白百合学園前、白百合学園前――』
そのアナウンスとともに、俺たちは同時に立ち上がった。
逃げるように降りていこうとする女の子の手を百百川さんが、素知らぬ顔のままのバーコード男の右手首を、俺が掴んだ。
「逃げんなよ、このバーコード痴漢野郎」
俺の大声に、乗客の視線が一斉にバーコード男に集中した。
えっ!? と露骨に狼狽えたバーコード男が、血相変えて喚いた。
「な、何を――!? しっ、証拠はあるんだろうな!?」
「証拠なら私と、藤村君と、この子がいます!」
百百川さんの大声に、バーコード頭はますます狼狽したようだった。
百百川さんは震える中学生の女の子の肩を抱き、バーコード男を思い切り睨みつけた。
「ずっと見てたわよ! アンタ、一ヶ月ぐらい前からこの子をしつこく狙ってたでしょ! 可哀想に、こんなに震えて――こんな若い子を狙うなんて恥ずかしくないの!?」
「なっ、何を言うんだ、君たちは! こっ、こ、子供のくせに大人を痴漢扱いするのか! 無礼もいい加減に――!」
「おっと、おっさん。証拠はここにもあるぞ」
俺がスマートフォンを掲げて示すと、何が起こったのか理解したらしいバーコード男がサーッと血の気を失った。
「な――!」
「さ、降りた降りた。はーいみなさん、痴漢が通りますよー。どいてくださいねー」
俺が有無を言わさずにおっさんの腕を掴んでホームに降りると、ぷしゅん、と絶妙のタイミングで電車のドアが閉まった。
青い顔をしている中学生の女の子と、脂汗ダラダラで手首を拘束されているバーコード頭の男、これは誰がどう見たって痴漢の現行犯にしか見えないだろう。
案の定、乗客たちの白い目の集中砲火を浴びたバーコード男は、その視線の冷たさにますます狼狽えたようだった。
「こっ、これは名誉毀損だッ! 誰か弁護士を呼んでくれ! でっ、でっち上げなんだッ! だっ、第一、その子は何も言ってないじゃないか! 証拠不十分だぞ! こ、これは冤罪だ、痴漢冤罪だッ!」
滝のように脂汗を流しながら、バーコード男は罵るように中学生の女の子に向かって喚いた。
大人の男に怒鳴られたのか怖かったのか、それとも百百川さんの言葉に安心したのか、中学生の女の子がシクシクと泣き出した。
百百川さんはその子を胸に抱き寄せて、その心を溶かすように、ゆっくりと撫でてやる。
「可哀想に、怖かったね――。でも、もう大丈夫。お姉さんたちがついてるもん。――何が起こったのか、言える?」
その言葉に、ぐすっ、と洟を啜った女の子は――真っ赤な目でバーコード男を睨みつけ、その鼻先を指さした。
「私はッ! このおじさんにずっと痴漢されてましたッ!」
周りの乗客たちがびっくりして振り返るぐらい、その声は大きかった。
処刑宣告を受けて青くなるかと思いきや。
バーコード男の顔が突如――一瞬で赤黒く変色した。
「ふざけるんじゃねぇ、ガキの癖にマセやがって! 別に俺はパンツの中に手ェ入れたわけじゃねぇぞ! ただ触っただけじゃねぇか! それがいくらの罪になるってんだ、ええ!?」
バーコード男は目をひん剥き、白目を血走らせながら女の子に向かって喚いた。
なるほど、この男の珍棒を腐り落とせるなら、確かに腕の一本ぐらいならくれてやれる気持ちになるだろう。
ちら、と俺が辺りを伺うと、騒ぎを察知した駅員が数人、既にこちらに向かって駆け寄ってきていた。
「触られたくねぇならそんな格好で電車なんかに乗ってんじゃねぇ! 何が痴漢だ、くだらねぇ、お前ら俺を誰だと思ってやがる! 俺はジュウコウセイサクショの営業本部長だぞ! お前らみたいなガキは俺の力でどうとでもなるんだからな! いいのかガキども、俺を怒らせたらどうなるか――!」
「いい加減にしろよオッサン」
俺が右手首に捻じり上げるような動きを与えると、うひぃ、とバーコード頭が情けない悲鳴を上げた。
「そんな大層な言い訳ができんなら警察署の中でしてみろよ。許してくれるってんなら許してくれるさ。俺らに向かって怒鳴るのはそれからでいいだろ、おい――」
俺がそう言った、その時だった。
ここぞとばかりに急激に増したバーコード男の腕の力に、一瞬、挙動が遅れた。
しまった、と思ったときには遅くて――俺はバーコードの左裏拳に思い切り頬を殴られていた。
ちょうど俺の頬に当たったのがバーコード男の腕時計で――情けないことに、世界が眩んだ。
うぐっ、と俺が顔をそむけた途端、バーコード男はヤカンが沸騰するような奇声を発しながら、駆け寄ってきた駅員をどうにか跳ね飛ばし――改札めがけて猛然と走り出した。
「くそ、あのハゲ逃げやがった――!」
俺が大失態に呻いた、その瞬間だった。
ぐん、と姿勢を低くした百百川さんが――右膝を曲げて、床に両手をついた。
なんだ、急にどうしたんだ?
というより、何だこの姿勢は?
まさかこれは――クラウチングスタート?
そう言えばこの百百川さんは、強豪として知られるウチの高校の陸上部では誰も右に出るもののいない短距離スプリンターで――。
俺がそう思った時だった。
キッ、と顔を上げて前を向いた百百川さんが。
――鬼のような咆哮を発した。
「待てぇぇぇ――――――――ッッツ!!」
途端に、ドン! という音が発し――百百川さんが弾丸のような速度で疾走を開始した。
うわっ! と俺が目を剥く間にも、百百川さんの小柄はばるんばるんと弾みをつけて速度をぐんぐん増し――やがて、地面を蹴った身体が重力から解き放たれた。
「死ぃぃねぇぇ―――――――――ッッツ!!」
刹那――百百川さんの非常識的にたわわな身体が、空中で一本の線になった。
状況が飲み込めていない、多くの乗客たちの視線を集める中。
綺麗に揃えられた百百川さんの両足が、しっかりとバーコード頭を捉えた。
凄まじい慣性の力を抱いたままの百百川さんの肉体は肉弾ミサイルとなって後頭部に突き立ち――強烈なドロップキックがバーコード男を容赦なく吹き飛ばした。
バーコード男の口から、ゲェッ! と蛙のような鳴き声が発した。
ビターン! と、凄まじい音とともにバーコード男は床に叩きつけられ、ラグビーボールのように錐揉み回転しながら転げて――改札の手前でようやく止まった。
「もっ、百百川さん――!」
俺が駆け寄ると、「いてて……!」と顔をしかめながらも、百百川さんは無事なようだった。
きっとそのばるんばるんとした肉体が、落下の衝撃を上手く吸収したに違いない。
「傷害事件だ! 警察! 鉄道警察に連絡して!」
ボロ雑巾になったバーコード男の周りに二、三人の駅員が集まってきて、ぐったりしたままのバーコード男の上に次々と折り重なった。
ようやくこれで――この痴漢事件も一段落しそうだった。
ほっ、とため息を吐いて、俺は百百川さんに手を差し伸べた。
「さ、百百川さん。あのハゲに引導渡してやろうぜ」
俺が言うと、うん! と百百川さんはやけに嬉しそうに頷いた。
◆
「ふう、やれやれ、やっと解放されたな……」
俺は頬に貼り付いた傷パッドの具合を確かめながらぼやいた。
あの後、駅の事務所で簡単な手当を受けて、それから事情聴取、撮影した証拠動画の提出、再び泣き出した女の子を励まして、それからやっと病院送り――全てが終わったときには午後三時近くなっていた。
俺と百百川さんは二人で相談し合い、結局今日は学校をサボってしまうことにした。
駅員や警察から学校には連絡が行っただろうし、おまけに今や俺は痴漢事件から傷害事件にアップデートされた事件の被害者だ。
今日ぐらいは天下御免で学校をサボれるだろう――とは思ったものの、隣を歩く百百川さんは浮かない表情をしていた。
「藤村君、ごめんね」
ぽつり――と、百百川さんが小さく謝罪してきて、俺は百百川さんを見た。
百百川さんは自分を責めているような表情で、きゅっと唇を噛んでいた。
「何も――百百川さんに謝られることなんかないよ」
「それでも、藤村君が殴られちゃった」
「俺を殴ったのは百百川さんじゃなくてあのバーコードハゲだよ。百百川さんが謝ることなんかない」
俺は断固とした口調で言いつつ、俺を殴ったあのバーコード男の、異常に赤黒く変色した顔を思い出していた。
あの後、百百川さんによってしたたかに蹴りつけられたバーコード男は、痴漢と傷害の現行犯で逮捕された。
男はジュウコウセイサクショの営業本部長であったと言っていたから――それが本当なら、きっと社会的にも相当の罰を受けることになるだろう。
『お前ら、俺を誰だと思ってやがる――』
本当に、誰だと思われたかったのだろう?
俺はバーコードハゲの通勤鞄に結ばれていた、古ぼけたお守り袋を思い出していた。
拙い縫込み文字で『お父さんへ』と書かれた、子供のものと思われる手縫いのもの。
おそらくあのバーコード男にも、相応の年齢の娘がいたのだろう。
それを性犯罪という最悪の形でバラバラにしてしまった男の今後の人生は――恵まれているとは言えないものになる。
あなた、お父さん、本部長――誰かにそう呼ばれるだけでは足りなかった人生――。
一度でもそれ以外、それ以外のものを、卑劣な手段で望んでしまったことのツケ。
それを今後あのバーコード男は、今まで築いたものを切り崩して払い続けていくことになるのだ。
「私ね、中学の頃、ずっとあのバーコード男に痴漢されてたんだ」
ふと――百百川さんがそう言い、俺は百百川さんを見た。
随分覚悟が必要な告白だったに違いなく、百百川さんは暗い目をしていた。
「私もあの女の子と同じ中学だった。あの男、凄くしつこくて――でも、私は怖くて声を上げられなかった。悔しくて、恥ずかしくて、すっごく辛いのに――最低だよね」
百百川さんは何かへの嫌悪感を露わにした。
おそらくそれは、あのバーコード男以上に――何も言えなかった自分への嫌悪感も、きっとあったのだろう。
「でもね、いつだったか――一度だけ思い切り睨みつけてやったことがある。そしたらあの男、急に血相変えて離れていって――それから痴漢されなくなった。最低だよね、ホント」
ああ、最低だね、と俺も同意した。
徹頭徹尾、あの男は――そういう男だったのだろう。
弱いもの相手なら、きっと誰でもよかったのだろう。
「それでわかったんだ。ああ、伝える気になれば伝わるんだって。いつもあんな目をしてれば、嫌なものは私に近づいて来ないんだって――」
その言葉に――俺は無言で百百川さんのスカートに視線を落とした。
制服のスカートに留まっている安全ピン。
百百川さんの巨大な肉体を考えれば、それはどう考えてもスカートの丈を詰めるためのものではない。
ましてや丈を詰めるなら縦に留めるのはおかしいし、それはあまりおしゃれとも言えないデザインの安全ピンだ。
スカートに安全ピン――それは、痴漢対策として一昔前に流行ったやり方だった。
いざというときは、それで痴漢する手を突き刺すぞという無言の意思表示――。
実際にやるかどうかは別として、そんな時代遅れな自衛方法をまだやっている、否、やらざるを得ない百百川さん。
クールビューティな百百川さん。
風紀委員長の百百川さん。
一皮剥けば全くクールでも風紀的でもない百百川さんが、そうならざるを得なくなった理由。
それには、あのバーコード男のような、卑劣としか言いようがない男が存在があったのかもしれない。
「でも――間違ってた。私が被害に遭わないだけじゃダメなの。あの女の子が痴漢されてるのに気づいた時に思ったんだ。あいつ、私の顔も覚えてなかったみたいだった。私が特別なんじゃなかった。あいつにとっては誰でもよかったんだ、矛先が変わるだけなんだって――」
だから、独りぼっちであの男を捕まえようとした。
百百川さんは何も悪くないのに。
悪いのはあのバーコード男だったのに。
はぁ、と、百百川さんは萎むようなため息を吐いた。
「誰も巻き込まないようにって思ってたのに――結局藤村君にケガさせちゃった。ごめんね藤村君。こんなことになるなら……」
「珍棒ぶら下げて生まれてきたなら、それで当たり前さ」
ふと――そんな言葉が口を突いて出て、百百川さんが俺を見た。
俺はまだ少し痛む頬を持ち上げて笑った。
「忘れてるかもしれないけどさ――俺、男なんだよ。百百川さんにはついてない、ごく汚いものが股の間にぶら下がってるよ」
百百川さんが目を点にして俺を見た。
「俺の姉ちゃんが言ってたよ。私は任意の男の珍棒を腐らせる能力がもらえるなら、腕一本ぐらいはくれてやってもいいってさ。女の人は誰だってそれぐらい思いつめてるんだって。だったら男だって、その汚いもの分ぐらい、我慢したり、正義を励ましたりする覚悟があるべきだ」
たぶん百百川さんだって――その言葉の通りのことを考えていたのだろう。
「腕と珍棒、どっちか選べっていうなら、俺は腕の方が大事だしね」
俺が滅茶苦茶な理屈と共に笑うと、五秒ぐらいの沈黙の後……百百川さんも笑い出した。
ぷっ、ふふ、うふふ、あはは、あははははは……と、笑い声は少しずつ大きくなった。
「面白いこと言うお姉さんだね」
「至ってふしだらな姉だけどね」
俺たちはしばらく笑い合った。
「ところで百百川さん――あの時はカッコよかったよ」
「うぇ?」
「あのドロップキック」
うッ……!? と百百川さんが目を見開いた。
「凄かったなぁ。砲弾かと思ったもん、俺。こう、クラウチングスタートから助走して――凄い光景だったよ。駅の人みんな見てたもんな。そりゃ見るって。あんな打点が高いドロップキック。一生に一度拝めるかどうかだよ」
俺があの光景を思い出しながら言うと、まるでその周囲だけ酸素が薄くなっていっているというように――百百川さんの顔がちょっとずつ赤くなり始めた。
「そのまま追いついて捕まえるかと思いきや、まさかのドロップキック……しかも凄い綺麗なヤツ。バーコードハゲ、完全に失神してたもんな。警察より先に担架が来たりして――でもあの女の子は凄い尊敬する目で百百川さんのこと見てたし――」
「あー、うー!」
百百川さんが「あー、うー!」と言いながら腕を滅茶苦茶に振り回し、俺の回顧を遮った。
違うの違うのあれは違うの、と喚きながら、百百川さんはばるんばるんと必死に主張した。
「違うの! あれは咄嗟にやっちゃっただけ! 私はクールビューティな風紀委員長だもの、ドロップキックなんて狙ってやったりしないの!」
「いやだって、実際にやってるとこ見ちゃったし……」
「キーッ! またそうやって揚げ足を取る! どこの世界にドロップキックしてくる風紀委員長がいるのよ! それ絶対に学校で言い触らしたりしないでね! 絶対だよ!?」
やっぱり、可愛いなぁこの人。
はいはい、と応じながら、俺たちは分かれ道までの道を歩き続けた。
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まさかの「尻ミステリー」第二弾です。
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