目的地 到着
こんばんは
なんやかんやあったけど、もうこうして弱そうな紐をパブゥの首輪に結んで出発をした。明け方というのもあって、チリンチリンと首輪の鈴がよく響く程、静かな町並みなオールストーンを背に僕達はゆく。
ちなみにパブゥというのは犬の名前である。
更に興味が無いかもしれないが、エンがブーちゃんと名付けようとして僕が却下すると、ヤーがパーと名付けようとした。
とてもじゃ無いが、くるくるパーみたいな名前も嫌だったのでエンとヤーを合わせる事にした。
まあ……スキルなんだけどね。
チャッチャッと音が鳴り、犬の爪が地面を引っ掻いて走り出そうとするパブゥに『こらこら。急ぐんじゃありませんよ』とエンがオホホと笑う。
まあ、分からんでもない!なにせ出発前に僕が『シャインへ出発だ』と言ってから、スキル捜索が発動したからな。
地図はもっているけど、確実に迷わないだろう。
後ろからパブゥ背を見れば
【時速3キロで約10分後に橋がありますが工事中です。迂回しますか?】
「(おう。)」
【はい。わかりました。では、私の足を加速させ目的地シャインへの到着時間を合わせます。よろしいでしょうか?】
「(おう。)」
とあって、エンが『こらこら。急ぐんじゃありませんよ』と言っている場面である。
又
【加速モード失敗。加速が出来ないと判断しました。脇道へ入ります。】
「(おう。)」
引っ張ればちぎれそうな紐であっても、パブゥの力でも切れないそうな。そして、パブゥより力を所持しているのはエンという事。ならば必然的にパブゥの首は締まる一方なのけど……もう別に、どうでもいい。
コレだけは言える!僕のスキルは、心が通じあっているのだ。
【薬草発見】
「ひゃん。ひゃん!」
「すごいわ!薬草ね。御利口さんだこと。」
そんな感じが5時間程続いてシャインに着いたんだ。
【到着しました。薬草340束、毒消し105束、毒キノコ777個、小銅貨3枚、死骸3体発見及び収集しました。なお、到着予定時間を1時間過ぎてしまいました。本当に申し訳ありませんでした。】
「(おう。……つ、疲れたっ。しっ。しんどぉ)」
5時間という長い時間を僕だけが見える文字と音声が、僕の平常なる精神を蝕むような感覚だった。
「アル様、疲れたのですか?でしたらマジックポーションを先に売って来ますのでエンとヤーで先に宿の方へ行っててください。」
どうやら顔に出ていたようだ。
「スーも早目に帰ってこいよ。」
スーは『はい』と返事をして宿とは違う方向へ。
「エン。もう疲れたからゴロゴロしたいよ。」
「そうですね。アル様の様子を見れば早く休みたいのですけど、食糧を購入し嗜好品の紅茶も揃えたいので、もうしばらくお待ち下さい。」
「そ。そうか?」
「でしたら、私が抱っこしましょうか?」
「嫌。いい」
ヤーはダントツで大雑把なので、抱っこされると体の節々(筋肉痛)が痛くなるという不思議現象が起きるのだ。
だから、僕は即決で拒否をした。
ウチのデカカッタナ領の首都と同様で、人が多く多種多様の種族が入り組んでいて盛んだといえる。
ある一点だけ違うとすれば、サンシャイン城が半分隠れる程に大きな建物がある。それは、聖騎士魔法学校。
「エン。バナナが欲しいんだが」
「ヤーは我慢なさい。」
「せめて!1本」
「アル様は何が良いですか?」
「僕、バナナで良いよ。」
「でかしたぞ!アル様よ」
「……では、1本にしましょう。」
「な!?な、なんだと」
ヤーは全ての力を失ったように膝から倒れ込んだ。
僕はそんなヤーにポンッと肩に手を置き
「ヤー。半分こ、しよう。」
そう言うとヤーは『うっうう』と涙を流した。
そんな時後ろから『お久しぶりです。エン様、ヤー様』と声を掛けられたのだ。
「あ。リアだ!」
「アッ、アル様!?なっ何故ココに?」
ハチャメチャとなるリアという女性に『リア。落ち着こうか』とポンとエンが肩に手を置くと、何故か急に落ち着き出すのだ。
そしてエンは『買い物が終わったから私達の宿に来ない?』と誘い誘導した。
久しぶりに自分が、本物の貴族らしい他者からの反応を見てウキウキしてしまった。
だからなのか宿に着くと
「ホレ。ソコで買った最後の1本のバナナだ。食べるといい。」
「……ありがたいですけど、ヤー様の視線が痛いのでコレはヤー様に……」
「アラ。アル様は貴族よ。それにリアは未だデカカッタナのメイドでしょ?だったら主人の言いつけは守るものではなくって?」
『そうでしたね。すいません』とリアは言い、皮を剥いてゆく。
ヤーの目線は既に窓の外へと向き、一切リアの顔を見ない対応をしていた。
「では、私からですが……バナナを1房どうぞ。」
「久しぶりに剣術の稽古でも見てやろう。」
それはそれは、明日へに吠えるか如くなニヤリ笑顔のヤーがソコにいた。
また、会いましょう




