育ての親
こんばんわ
「ちょっと待って。行く先々で属性を決めるなんて、まるでエルフの考え方じゃない。アル様は人間よ。生活魔法の応用を攻撃に使うというのは別として、本格的な魔法を取り入れたら人間は先方重視……つまり、最初に覚えた属性寄りとなってしまうのよ?分かってるアナタ達。」
二人の間に入ってきたのはエンだ。
エンは少し考えてから『そうだわ』と言い、スーやヤーに問いかけた。
「なら、属性に偏らない属性を教えればイイのよ。月影ダンジョンなら"ダークアロー"はどうかしら。」
「……偏っても、光と闇だけのら闇よりか。それに、月影なら闇夜にうってつけだし狙わなくてすむからな。」
エンの発言でヤーが納得したが、直ぐに反論する者がいた。
「だが、ファイアアローの四大元素魔法に比べると闇と光は特殊で覚えるのが難しいぞ。それならば、四大元素のウィンドアローでどうだろうか?アレならば、音も少なく"夜"なら見えにくいから攻撃しやすいぞ。」
そう。今さっきから"光・闇・夜"というキーワードに僕は黙っているどろうか?いや、黙って無いだろう。
「なあ?我がしもべ達よ。……なんの話をしている?」
「決まれば、まとめて話を致します。」
だって知らんもん。ダークアローって何よ?
四大元素は貴族では有名な魔法の勉強材料だ。何かしら四大元素が出て来るから知っている。
僕だって、アニメの小説を読破した者の1人だからな。ファイアとウィンドとか知ってるし、なんだったら小説内で出てきた複合技の1つや2つは覚えているさ。
だが、そのダークアローとは……
「(小3の心をくすぐる悪のような響き……格好いい)」
そうさ。幼少時は正義の味方も良かったが、小学3年生くらいから悪党の方が格好良いと思った時期があったのだ。
って、まあ。既に精神年齢は、前世の8歳と現12歳で計20歳なんだけど。今でも、少し悪っぽいのが好きなのさ。
目の前の3人は言い争ってるが僕は言うだろう!
「ダークアロー!……(フフフ。決まったゼ)」
特に何も発動はしていない。
が!?3人は停止しエンが『ホラ。アル様本人が言っているもの。』とニヤリと微笑むと他の2人は『クッ』と悔やんでいた。
が、そうでもない。
〈呼び掛け注文ですね?ダークアロー……頂きました。
尚、ダークアローや他のスキル等の返品はできませんので了承お願いいたします。ありがとうございました。〉
ありゃ?ゲッチュウしたのかな。
「では、このエンがゆっくりと教えますので闇元素の中枢を教えて行きましょうか。」
どのような声を上げれば良いのだろう。どうやってこの場を、イヤ!エンに教えを乞うたら良いのだろうか。
エンとの会話は、いつもは仲のイイ感じで話すんだけど、この時ばかりは無言で頷いたのだった。
この日は、闇を司る神の話や魔族の存在を勉強し終わった。終始、エンの言うことを頷いて返事をし明日は、全闇魔法にも関係してくる闇の神の根本的な論理であると教えられ寝入った。
そして
「おーい。アルいるか?……お!?エンじゃないか。」
来客された人に対してエンは簡易的に御辞儀をする。
簡易的なので、自分と同等なのであろうか?いや御辞儀をしているから目の前の相手は、少しは身分が上だろう。
「アル様はヤーと魔石を探しに行ってます。」
やっぱりそうだろう。敬語を使い、話している。
それに、不審人物では無いのが理解できるが
「スーは何処に行った?」
「スーも護衛としてついて行ってますが?何用でしょうか?」
「じゃ、エンでイイや。」
そう言うと、その方はエンの手を掴み取ると外へと連れ出そうとしたのだ。しかし、エンも黙ってやられるわけも無い。なぜなら、エンは元から奴隷では無いからだ。
パンッという音と『止めなさい。兄の自覚は無いのですか!?』とあった後、そいつは勢いよく飛び出して行ったんだ。
そして
「へへへン。これだけあれば、次の旅に役立つだろう。」
「少し遅くなってしまったナ。昼を作ってまっているエンに申し訳……エルフの血の匂いだ!」
スーが言った瞬間、ヤーとスーは見たことの無い身体能力を見せ消えるように、その場を発って行った。
「もう!ヤーの大剣重いんだから置いていかないでよ。」
そう言って家の玄関をくぐると寝る部屋から魔法の光が漏れ『エン!傷口を閉じるからっ!』とスーの声が聞こえてきた。
異様な静けさと空気の重さを感じとった僕は、何故かそれから声を発せずに、足音を鳴らさず光が漏れるその部屋へと行った。
「ヤー!早くエリクサーを探せ!」
「分かってる!」
僕のベッドはヤー達より少し大きいベッド。
僕のベッドに、エンはいた。
「クソッ。喉と腹に傷……エンが回復魔法が使えると知ってるヤツの仕業か!?」
『エン!動くなよ。動けば血が出るからな!?』そう言うのはヤーだ。ヤーはもう、スーのアイテムボックスの中身を探して無かったんだ。
そして……僕は?
どうしたらイイの?
フいに、ゆっくりとエンの腕が僕の方へ行った時
「ごめん。お前を安心させようとして嘘をついた。エリクサーはもう使ってしまった。」
涙を流しながら傷口を塞ぐスー。
もう、傷口は見当たらないのだけどエンは青白くもう生気が薄れていた。
「アル!アル来い。お前の大好きなエンがお前を呼んでいる。」
この場面、見たことがある。
あの転生直前のあった、あの薄れて行くあの場面で遺体となった僕にお母さんが手を握って泣きくずれていた。
あんな悲しい場面が2度も繰り返されるモノなのだろうか?
スーに言われたけど、僕の両足には重い鎖が付いているかの如く重い。あの手を!エンの手を握れば……
「(僕も、お母さんように泣き崩れるに決まってる。……いや待て!明日からエンが居ない生活なの?」
そう思った瞬間、寂しさと切なさと欲が生まれたのだ。
そして考えつく程に、何故今日エンの元を離れたんだろうか?エンのそばで、誰かから盾と成り守れたので無いのだろうか?と未だエンの手を握ることさえ出来ない僕は……情けない。
「最後だって言った。ホラよ。」
ヤーは僕の情けない手を取って引っ張り、エンの手に繋いだ。
〈絶対無敵防御を発動しました。……敵意を感じません。発動をoffとします。またの御来店をお待ちしております〉
瞬間、この声が聞こえた。
「!?」
「えっ!?」「なっ!?」×2の濁音
そして、ガバッと起きるエンは『アハハハ。手だけじゃ無い。アル様を抱けるぅ』と脱力した僕にギューと力いっぱい抱き締めるのだった。
また会いましょう




