第7話 ロー・オリオン
更新遅れてすみません。。
ロー・オリオンは黒髪をポニーテールに纏め、落ち着いた雰囲気をもつ黒目がちな女性である。この世界では黒髪というのは珍しく、地域によっては不吉な存在と考えられている。俺の暮らしているところではそんなことはないが、旅をするに当たっては注意が必要である。ロー先生は俺が前回の人生を周回しているときに徒手空拳で剣士や魔法師を打ち倒し、王都のコロシアムにて決勝まで登り詰めた実績を持っており、決勝で俺に破れたとはいえ、王都に衝撃を与えた人物である。コロシアムで準優勝した後は俺の推薦で王都騎士団の体術顧問になってもらった逸材であり、指導力にも定評があった。この時代ではこの時期に何をしているのかわからなかったため探すのに苦労したが、運良く王都の近くまで修行に来ていることをスピカやロジーナ、そのネットワークにより掴んで、両親に駄々をこねて教師となっていただいた。ローも生活のために仕事を探しており、住み込みの働き口に二つ返事で承諾したのだ。体術道場の師範代となり、さらに強くなるべく修行の旅に出たが、路銀が足りず職を探していた。職も食住も手に入り渡りに船だったようだ。
今の年齢は15歳ほどでまだ幼さの残る顔立ちであるが、3人の師匠の中では1番立派な双丘をお持ちである。至って真面目な正確であり、男っ気は全く無く、年頃の男性を寄せ付けない雰囲気を醸し出している。
「プラタス様、今日は組手を行います。まずは寸止めでの型を行いましょう」
「はい。ローせんせい」
ローはまだ修行の身であり師匠と呼ばれるのは身に余るということで、先生と呼んでいる。
ローとの組手は寸止めとはいえ緊張感にあふれるものである。一撃で人を殺せるような彼女の拳を、目の前3cmのところに止められる。
彼女がその気なら風圧だけでも吹っ飛ばせる。その拳を間近で受けるのだから緊張せざるを得ない。
俺達は一旦組手を中断する。俺の拳がまだ組手をするに至っていなかったせいだ。
「プラタス様、拳を突き出すときには予備動作を入れてはいけません。どうしても突き出す前に一旦引いて勢いをつけたくなるものですが、そうすると相手に読まれてしまいます」
そうは言われてもなかなか難しい。
「こうですか?」
俺は静止した腕をそのまま伸ばした。
「それでは全く力が入っていません。予備動作はなくし、地につけた足から腰、胸、肩、腕、拳というように力が伝達していくような回転運動を意識してください」
むむむ。体術に関しては初めて学ぶものなので勝手がうまく行かない。
「まずは肩から腕、拳と力を伝達させる訓練をしましょう」
ローの見本を真似して胸を中心に回転運動を意識しながら拳を振り抜いてみる。
「ヒュッ!」
微かに拳が風を切る音が聞こえた。
「プラタス様、今のは少しだけ良かったです。もっと鋭く撃ち抜いてみましょう」
俺は何度も繰り返し拳を振るう。
「そうです。だんだん力が伝わる動きが身についてきます。繰り返し突きを行ってください」
体の中のエネルギーを渦巻きにしてより大きくなるように体を使って突き出す。
「それでは大振りになってしまっています。回転運動を集約して撃ち抜いてください」
これ、ものすごく難しいぞ。特に3歳の体では筋力が足りていない。
「プラタス様、今筋力が足りていないと考えていませんでしたか?」
ん、心を読まれているようだ。
「はい、こぶしにふりまわされているようにかんじるのです」
思っていたことをそのまま言葉にする。
「プラタス様がフラついているのは回転に余計な力が入っているからです。私が3歳の頃はプラタス様ほど筋力はありませんでしたが、大木を一撃で倒すくらいの拳は放っていましたよ」
どうやら俺はできないことを何かのせいにしようとしてたようだ。それをローに見透かされた。俺は恥ずかしいやら悔しいやらで歯を食いしばり黙々と拳を突き出した。
「余計な力は入れないように、スムーズに体を動かせるようにしていきましょう」
ローは優しく俺に語りかける。
「はい、ロー先生」
俺は素直に返事をする。
世の中は広いな。何回も人生を周回しても知らないことも沢山ある。前回の周回のときにローと出会えたのは俺にとって未来を変えることのできる運命的な出会いだった。そう思えるほど今世でのローとの出会いは本当に刺激的だ。
「ローせんせいからいっぽんとれるようにがんばります」
「ふふふっ!はい、頑張りましょうね」
その後も限界を迎えるまで拳を突き出し続けるのであった。
読んでいただきましてありがとうございます。
なかなかアクセス数が増えていきませんが、読んでいただいている方々のためにも書き続けて行きます。